軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第13話

それから新幹線に揺られること、約一時間。

一行は目的地――京都駅――に到着した。

ここからは各自、自由行動だ。

あらかじめ提出した計画通りに動く者もいれば、こっそりと遊園地に向かう者もいたりする。

さて、由弦たちは……

一応、前者であった。

バスと地下鉄を使い、観光地や名所、博物館を回っていく。

そして時は過ぎ、時刻は十五時。

「とりあえず……今日のうちに回らないといけないところは回れたということかしらね」

「そうだな。思ったよりもスムーズに進んだな」

天香と聖は満足そうに言った。

二人とも課題に必要な最小限の調査を、この日のうちに終わらせることができたのだ。

まだ三日もあることを考えれば、スケジュール的にはかなりの余裕がある。

「愛理沙ちゃんのおかげだね」

亜夜香は笑みを浮かべながら愛理沙を褒める。

由弦も同意するように大きく頷いた。

「あぁ……感謝しろよ」

「なぜ、お前が偉そうなんだ……」

宗一郎が呆れ顔を浮かべた。

効率的に回ることができたのは、愛理沙が各々が行きたい場所を聞き取り、観光ルートを練ってくれたからだ。

そのため迷うことなく、回ることができた。

「いやぁ、しかし愛理沙さん様々ですねぇ。……私よりも詳しくないですか?」

千春もまた愛理沙を持ち上げた。

今回、地元の人間であるはずの千春はあまり役には立たなかった。

……お嬢様である彼女は、地元の公共交通機関に詳しくなかったのだ。

「あ、あまり持ち上げないでください……とりあえず、ホテルに向かいましょう」

自由行動とはいえ、当然いつまでも外出していいわけではない。

事前に学校が予約したホテルへ、十七時までに戻るのが規則だ。

ホテルまではそれなりの距離があるが……

二時間もあれば間に合うだろう。

こうして由弦たちはホテルへ移動しようとする。

だが……

「あの……愛理沙さん。一つだけ……明日以降の予定を教えて貰えますか?」

「明日ですか? 明日は……」

愛理沙はメモ帳を取り出し、千春に見せた。

すると千春の表情が曇った。

「……清水寺が入ってないじゃないですか!」

「え? でも、千春さんの研究テーマって……別に清水寺は関係ないですよね? というか、事前に作っておいたんじゃないんですか?」

修学旅行は遊びではない。

これが終わった後、事前に設定した研究テーマに沿った内容のレポートを提出する必要がある。

そういう事情もあり、観光予定地には真面目にレポートを作るつもりである聖や天香、そして愛理沙本人の希望が反映されていた。

次点で宗一郎と亜夜香だ。

一方で由弦と千春の希望は入っていない。

もちろん、これは愛理沙が意地悪をしたからではなく……由弦と千春が「あそこに行きたい」というような主張をしなかったからだ。

由弦も千春も事前にレポートを作ってしまっている。

だから特に行かなければならない場所もない。

真面目に研究するつもりである、聖や天香、そして愛理沙の希望を優先させるべきである……と二人は考えたのだ。

……その結果、博物館や美術館がメインになってしまい、有名な観光地は後回しになったのである。

「そうですけど……でも、明日行かなかったらもう行けませんよ? 清水寺に行かない京都観光なんて、タコが入ってないタコ焼きみたいなものじゃないですか」

実は三日目以降は奈良県に移動することになっている。

つまり京都観光ができるのは、今日か明日だけだ。

「うーん……でも、明日は意外とスケジュールが厳しいんですよね……」

「……まあ、無理にとは言えませんが」

千春としては、みんなで修学旅行らしい思い出を作りたいが……

しかし後出しで言い出した手前、無理にとは言えないようだ。

「……じゃあ、今から行きますか?」

「え? ……今からですか?」

愛理沙の急な方針転換に千春は目を見開いた。

驚く千春に愛理沙は悪戯っぽく笑った。

「私も行きたくなってしまいました。皆さんはどうですか? ……ダメですか?」

愛理沙の問いに由弦たちは顔を見合わせ……頷いた。

愛理沙もまた満足そうな笑みを浮かべ、そして千春は目を輝かせた。

清水寺近くの……

とある店舗にて。

「遅いぞ、二人とも」

更衣室から出てきた宗一郎と聖に対し、由弦はそう言った。

二人は揃って肩を竦めた。

「お前が早いんだよ」

「普段から着ているやつは違うな」

三人は和服に身を包んでいた。

もちろん、持ってきた物ではない。

レンタルしたものだ。

世の中には和服を着て観光したいという観光客向けに、着物をレンタルするサービスがあるのだ。

それを利用した形になる。

「女共は……まだか」

「遅いな」

「女の子は時間が掛かるものだからな。仕方がない」

由弦がそう言うと、宗一郎と聖は揃って眉を顰めた。

俺たちには遅いと言ったのに……と、そんな顔だ。

さて、三人で待つこと五分ほどして……

「お待たせしました……」

申し訳なさそうな表情で、着物に身を包んだ愛理沙が更衣室から出てきた。

真っ赤な紅葉柄の秋らしい着物だ。

「どう……ですか?」

「良く似合ってる。素敵だよ」

由弦がそう言って褒めると、愛理沙の頬が仄かに赤く染まった。

愛理沙は嬉しそうにはにかんだ笑顔を浮かべる。

それから少しして他の三人も更衣室から出てきた。

各々、自分の趣味やイメージカラーに合わせた着物を着ていた。

「とりあえず、本堂の方に向かいましょうか」

愛理沙の提案に従い、一行は本堂を目指し、坂を上り始めた。