軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話

「「く、くだらなすぎる……」」

宗一郎と聖は揃って呆れ顔を浮かべた。

これに対し由弦は慌てて取り繕うように言った。

「い、いや……確かに俺もくだらないと思うよ。だから……こんなくだらないことで意地を張る愛理沙がおかしいと思わないか?」

「お前も十分に意地を張っていると思うが……」

「……打ちたくないなら、打ちたくないでいいじゃないか。打っても罹る時は罹るだろ」

宗一郎と聖の言葉に由弦は僅かに表情を歪ませた。

それから言い訳するように言葉を紡ぐ。

「別に……無理強いはしてない。おすすめしただけだし。愛理沙が打ちたくないなら、打たなきゃいいと……俺は言ったぞ。でも、そう言ったら、愛理沙はまた怒りだして……」

何ですか、その言い方!

と、余計に拗ねてしまった愛理沙の表情を由弦は思い出した。

「むっ……そうなのか? 無理強いしてないなら、お前に非はないな……」

由弦の主張に対し、同情の色を見せる聖。

一方で宗一郎は大きなため息をついた。

「はぁ……分かってないな。お前らは」

「……何をだ?」

「女心だ」

「「……」」

だって俺たち、男だし。

と、由弦と聖は揃ってそんな表情を浮かべた。

「女の子はな、共感して欲しいんだよ。この場合、愛理沙さんは注射が怖いという気持ちを共感して欲しかったんだよ。お前がそう思うならそれでいいんじゃないの、俺は知らねぇけどなんて言い方したら、そりゃ怒られるだろ。まだ無理強いしていた方がマシだぞ」

注射を打つことを勧める。

というのは裏返せば彼女の体調や健康を心配している、気に掛けているとも言える。

対して、「やりたくないならやらなければいい」という言い方は、「お前のことなんかどうでもいい」と言っているに等しい。

と宗一郎は語った。

「な、なるほど……深いな」

言われてみれば少し投げやりな言い方をしてしまったかもしれない。

それで愛理沙を傷つけてしまったかもしれない。

由弦は反省する。

「……それで、その、俺はどうすればいいんだ?」

「まずは謝れ。その上で愛理沙さんを気遣った上での発言だったと弁解してから、無理強いするつもりはないことをあらためて伝えろ」

「いや、そうじゃなくてさ……」

俺が聞きたいことはそういうことじゃない。

と、言いたそうな由弦の言葉に宗一郎は眉を顰めた。

「何を聞きたいんだ?」

「……どうやって愛理沙に切り出そうかなって」

由弦は少し恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言った。

謝りたくても謝れない。

由弦にとってそこが一番の難所なのだ。

謝罪の内容は二の次だ。

「……それくらい自分で考えろ」

一方で由弦の気弱な発言に、宗一郎は呆れ顔を浮かべてそう言った。

謝る方法など、相手に「ごめんなさい」と告げる以上に存在しない。

アドバイスの仕様がない。

「そ、そう言うなよ……なあ、聖、お前はどうすればいいと思う?」

「え? あっ、うーん、そうだなぁ……」

由弦に話を振られた聖は顎に手を当てて考え込む。

聖はどちらかと言えば由弦と同じ側……“女心が分からない人間”に分類される。

そしてまた恋愛経験も少ない。

だからこそ、「好きな子に謝りたくとも謝れない」という由弦の気持ちには共感する物があった。

「直接、面と向かい合って言うのが難しいなら……メールで、とか?」

「メールか……? でも、メールは不誠実だと思われないか?」

「うーん、なら話がしたいから時間をくれって送るのはどうだ? ……送ったからには、謝らないわけにはいかなくなるだろ?」

「それは……そうだな」

ある意味、背水の陣のような作戦ではあるが……

今、由弦にもっとも足りていないのが勇気と覚悟である点を鑑みれば、上策のように思われた。

「なら、決まりだな。送っちまえ」

「ああ、分かった。……え、今?」

「今やらなかったら、お前、いつまでもやらないだろ」

「い、いや、でも、心の準備が……」

「早くしろよ」

聖に急かされた由弦は、助けを求めるように宗一郎の方を見た。

これに対して宗一郎は……

「メールが嫌なら、今から直接、謝りにいけばいいんじゃないか?」

あっさりと突き放した。

「……分かったよ」

覚悟を決めた由弦は携帯を取り出した。

愛理沙充てのメール文を打ち込み、何度も修正を繰り返し……

五分後、完成したそれを宗一郎と聖に見せた。

「どうかな?」

――今日の放課後、話したいことがある――

熟考を重ねた割にはとても簡潔で、淡泊な文章だった。

宗一郎と聖は揃って頷いた。

「いいんじゃないか?」

「早く送信しろ」

「……ああ」

由弦はメールを送信した。

じっと、画面を見つめていると……

「わぁぁあ!」

「……どうした?」

「何があった!?」

「き、既読がついた……」

由弦は思わず息を飲んだ。

既読がついたということは、すでに愛理沙は由弦の送ったメールを見たということだ。

これで謝らないわけにはいかなくなった。

「……」

しかし既読がついても、中々返事が来ない。

由弦の背中を嫌な汗が伝う。

……もしかして、愛想を尽かされてしまったのではないか。

そんな不安が首をもたげてくる。

「な、なあ……俺、フラれたかな?」

「まだ一分も経ってないだろ」

「あっちもどう返信するか、悩んでるんだろ。もう少し待てよ」

さて、由弦が焦燥と不安で戦うこと、約五分後……

「わぁああ!!」

「……どうした?」

「何があった!?」

宗一郎と聖の問いに対し、由弦は震える声で答えた。

「……返信が来た」

――分かりました――

そんな短い文章が画面に写っていた。