軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 婚約者とショッピング

「次はどうする?」

「うーん……あっ、あれはどうですか?」

愛理沙が指さしたのは、いわゆる「ゾンビを撃ち殺すゲーム」である。

愛理沙にしては、中々過激なチョイスだ。

「ああ、いいよ。……そう言えば、君はゾンビは大丈夫なんだな」

ゾンビを倒す系のゲームなら由弦の家にもあり、二人でプレイしたことがある。

ホラーは苦手のはずの愛理沙だが、ゾンビに関してはそれほど怖がることなく、バンバンと倒せる。

むしろ由弦よりも上手なくらいだ。

「……? どういう意味ですか?」

「いや、幽霊とか苦手だろ」

「苦手じゃないです」

「そうか。じゃあ、今度一緒にリ○グでも見るか」

「……」

「……分かった、そんなに睨むな」

愛理沙に呪い殺されそうだったので、由弦は思わず両手を上げた。

そんな由弦を見て愛理沙はふん、と小さく鼻を鳴らした。

「サメとゾンビは倒せるから怖いと思ったことはないですね」

「なるほど、そういう基準なのか」

つまり特殊攻撃をしてくるのが苦手で、物理攻撃系は怖くないということだ。

この様子だとフィジカル系の妖怪や怪異も、案外大丈夫なのかもしれない。

そんなこんなでゲームを始めた二人だが……

「ちょっと、由弦さん。しっかりしてください」

「えっ、そこで外しますか?」

「由弦さん、死に過ぎです」

由弦は何度も愛理沙に怒られることになった。

「取り敢えず、由弦さんはゾンビパニックが起きたら死にますね」

もちろん、ゲームと現実の銃は違う。

もしも街中にゾンビが溢れるようになったら、死ぬのは二人一緒だろう。

「俺が死んだら、愛理沙はどうする?」

「……え? それを言われると……どうしましょう? 困りましたね」

何とも言えなさそうな表情を愛理沙は浮かべた。

さすがに高校生で「もし恋人が死んだら」などとは考えない。

「そうですね。由弦さんとの思い出を宝物にして、生きていきます……というのが模範解答ですか?」

「健気な感じでいいな」

などという軽口を叩きつつ、ゲームセンターを散策する。

「あ、由弦さん。プリクラありますよ。やりません?」

「プリクラか……」

「……ダメでしたか?」

「いや、ダメというか。そもそもやったことないなと思って。愛理沙は……あるんだったな」

亜夜香たちと以前、写真を撮ったという話だった。

由弦も愛理沙と昔、写真を撮ったことはあるが……プリクラは一度もない。

「意外ですね。お友達と……佐竹さんや良善寺さんとはしたことないんですか?」

「逆に聞くが男三人、俺たちがキャッキャとプリクラやってる姿を想像できるか?」

「……気持ち悪いですね」

ド直球な愛理沙の返答に由弦も苦笑いする。

ケーキくらいなら三人で食べに行くことはあるが、さすがにプリクラはやらない。

美味しくないからだ。

「じゃあ、今回は私が先輩になりますね」

「そうなるな」

珍しい構図だなと思いながら、二人で機械の中に入る。

愛理沙が機械を操作し、由弦はそれをボーっと眺める。

「あっ、始まりますよ」

「えっ、もう!?」

由弦は混乱しながらも、愛理沙に言われるままにポーズを取ったり、表情を作ったりする。

それから愛理沙は写真の加工を始めた。

由弦は何が楽しいのか正直分からなかったが、愛理沙が楽しそうだったので良しとした。

「はい、これは由弦さんのです」

「これはどうも」

由弦はプリクラを確認する。

まず最初に思ったのは「俺の顔、気持ち悪くなってるな」であった。

それからプリクラと現実の愛理沙の顔を見比べる。

「やっぱり、本物の方が可愛いな」

「ちょ、ちょっと……急にそういうのはやめてください」

ほんのりと頬を赤らめて愛理沙はそう言った。

さて、ゲームセンターでのデートはお開きとし……

二人はショッピングモールに赴いた。

「そうだ、由弦さん。私……水着を買いたいと思っていたんです」

「水着? あれ、持ってなかったっけ?」

由弦が知る限り、愛理沙は二着持っている。

白いビキニと、黒いビキニだ。

前者は以前、一緒にお風呂に入った時に着てくれたもので、後者は去年のプールでのデートで着たはずだ。

「二着ありますけど、片方はサイズが合わなくなってきたので」

「そう……なのか」

由弦は思わず愛理沙の胸部へと、視線を向けた。

制服の上からでもはっきりと分かるほど大きい。

「……ちょっと、どこ見てるんですか」

「いや、君がそういうことを言うから……」

そう言われると確かめたくなってしまうのが男の性なのだ。

「ちなみにどのくらい大きくなったの?」

由弦はそっと愛理沙の耳元で囁いた。

愛理沙はジト目で由弦を睨みつける。

「内緒です」

教えてはくれないようだ。

さて、そんなやり取りをしながら二人は水着が売られているお店に入った。

「……」

「どうしましたか、由弦さん」

「いや……ちょっと、居辛いなと」

彼女と同伴する彼氏面で入店している以上、それほどおかしくはないが……それでもこういう店に男は少し浮くのだ。

「そうですか? ……一緒に選んで欲しかったんですけど」

「いや、大丈夫だ」

とはいえ、愛理沙の水着を選べるという立場の方が遥かに重要だった。

「ところで由弦さんは……ワンピースとビキニなら、後者の方が好きなんですよね?」

「え? いや、まあ、そうだな……」

ワンピース型の水着を着た愛理沙と、ビキニを着た愛理沙。

どちらも好きだか、どちらかと言われれば後者だ。

「確か白と黒なら、黒が好きなんですよね?」

「好き……というか、黒の方が似合いそうかな……と」

愛理沙は肌が白いので、濃い色の生地の方が栄える。

もちろん、白も清楚で可愛らしいが……

愛理沙の顔立ちは可愛いよりは美人系なので、色気が有った方が引き立ちやすい。

「青とか赤も良いんじゃないか?」

「なるほど。分かりました」

これはどうですか?

あっちはどうですか?

などと愛理沙に聞かれ、そのたびに由弦は返答する。

とはいえ、何となくだが由弦の返答はあまり参考にされていない感じがした。

聞くだけ聞いておいて「でもやっぱりこっちの方が私は……」という顔をしている。

これは女子あるあるだ。

主に愛理沙と妹である彩弓は、由弦の意見を聞いた後にこういう態度を取る。

「うーん……」

愛理沙が選んでいる最中、由弦はキョロキョロと当たりを見渡す。

日本人向けの水着ショップの割には、中々セクシーなものが揃っているような気がした。

数ある店の中で、この店を選んだのは愛理沙だ。

愛理沙は肌の露出を恥ずかしがる割には、案外セクシーなものを着たりする。

ある意味、恥ずかしさの裏返しという要素も込めて、そういう趣味なのかもしれない。

(うわぁ……あれ、凄いなぁー)

布面積の小さい水着、面積はそう少ないわけではないがデザインがセクシーな水着を見て、由弦はそんなことを思った。

あれを愛理沙が着たら……と考えると、いろいろと“来る”ものがある。

「由弦さん、これどっちが……? 何を見ているんですか」

水着を手に持ちながら愛理沙が駆け寄ってきた。

由弦が答える間もなく、彼女は由弦の視線の先を見る。

「ふーん」

「い、いや……別に他意は……」

「まあ、いいです」

特に気にした素振りは見せず――とはいえほんのりと肌を赤らめながらだ――、愛理沙は両手に持っていた水着を由弦に見せた。

「どっちが良いと思います?」

「うーん、そうだな……」

などというやり取りが続く。

それから他の店をいくつか回り……二時間ほど経過した。

「じゃあ、由弦さんはこの辺りで待っていてください」

休憩所でそんなことを言われてしまった。

「一緒に行かなくていいのか?」

「何を買うのかは……まだ、内緒ですから」

「焦らすな……」

とはいえ、楽しみが増えるのはそう悪いことじゃない。

「期待していてください」

少し恥ずかしそうに頬を赤らめながら、愛理沙はそんなことを言った。