軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第11話 愛理沙のバイト相談(頼りにならない女友達編)

ある日の事。

とある喫茶店にて……

「由弦さんの誕生日プレゼントを買うために、アルバイトをしてみようと思うんです」

愛理沙は亜夜香、千春、天香の三人にそう言った。

四人は丁度、学校帰りの女子会の最中であった。

唐突な愛理沙のそんな言葉に三人は目を見開いた。

「へぇー、いいじゃん。何をするつもりなの?」

「いえ、まだ……決めてはいないんですけれどね」

亜夜香の問いに愛理沙は少し恥ずかしそうに答えた。

アルバイトをしてみよう、と思ってからすぐにアルバイト先を決められるほどの決断力と行動力は愛理沙にはなかった。

「うーん、よく分からないんですけれど。お小遣いでは足りないほど、プレゼントのお値段が高いんですか? それとも、ご自分の稼いだお金でプレゼントをしたいという感じですか?」

「まあ……後者ですね」

お小遣い制度は各家庭によって様々であり、値段もまた家庭によって変わる。

愛理沙のお家は、用途ごとに別途支給する形だった。

つまり何かお金を使いたい時は用途と金額を伝えて、その都度貰わないといけない。

「お小遣いをやりくりして……という形なら、ご両親から貰ったお金で誕生日プレゼントを買うのは分かるんですけれど。何というか……由弦さんに誕生日プレゼントを買いたいから、お金を頂戴というのは……なんか、違う気がするというか……それって、私からのプレゼントじゃないような……みたいな?」

親から貰ったお金でプレゼントを買うというのは、高校生であればおかしな話ではない。

アルバイトをしている高校生ももちろんいるが、していない、校則でできない高校生も多いからだ。

なのでそれ自体は悪いことでは全くないのだが……

「プレゼントを買うために親からお金を貰う」というのが直接的過ぎるため、違和感を覚えてしまう。

というのが愛理沙の気持ちである。

「まあ、プレゼントは気持ちの問題だし……あなたが納得できるということが重要だから、いいと思うけど……うちの校則って、アルバイト、どうだっけ? 誰かの婚約者さんは随分と働いちゃっているみたいだけど……」

天香はアイスコーヒーを飲みながら言った。

愛理沙たちが通う高校は、一応私立の進学校だ。

それなりに裕福な家庭の子供たちが通うような学校である。

なので、基本的に「生活苦でアルバイトをしなければいけない」ような生徒はいないし、想定されていない。

「あー、それね。私も気になって調べたことあるけどね。確か許可を取れば、学業に支障が出ない範囲内でやってもいいらしいよ? 適当だよねー」

「へぇー、そうだったんですねぇ。まあ、うちの校則はゆるゆるのガバガバですし、そんなことだろうなとは思ってましたけど」

亜夜香と千春は肩を竦めた。

彼女たちの高校の校則はとても緩く……よく言えば自由、悪く言えば適当で有名である。

「スカート丈、短いしねぇ……みんな」

天香のぼやきに愛理沙は頷く。

「そうですねぇ……自由な校則が売りなら、逆にスカート丈が長い人がいても、おかしくはないと思うんですけど。みんな短いですよね。まあ、私が言えることではないですが……」

愛理沙はチラりと自分のスカート丈を確認する。

慣れてしまっていることもあり普段はあまり気にならないが、休み明けなどは「あれ? ちょっと短い?」と思わないこともない。

「そう思うなら、愛理沙さん。長くしたら? はしたないですわよ」

「あら、そう思うのでしたら……天香さんも長くした方がよいですわよ? ……まあ、私は浮きたくないので、長さを変えるつもりはないですけど」

別に愛理沙も好きで短くしているわけではない。

もちろん、嫌というわけではないが……みんなが短くしているから、短くしているだけである。

「目が慣れてくると、なんか、こう……長いと野暮ったく見えるような気がするんだよね」

「うわぁー、真面目過ぎ! って感じになりますよね」

亜夜香と千春も同意した。

校則が建前上自由であっても、否、自由だからこそ、校内の雰囲気に合わせなければいけないような気がしてくる。

その辺りの感性に関しては、四人とも立派に“日本人”であった。

「何か、話がズレてるような……愛理沙ちゃんのバイト先の話だったっけ? えーっと、それで何のバイトをすれば良いかみたいな感じ?」

「そうです。どういうのが私に向いているのかなぁーと。参考までに意見を聞きたいなと」

亜夜香の問いに愛理沙は頷いた。

もちろん、アルバイトなど合わないと思ったらやめれば良いのだが……あくまで話の種として、である。

「接客業とか、いいんじゃない? アルバイトの接客は顔採用って聞いたことあるわよ?」

天香の提案に愛理沙は曖昧な笑みを浮かべた。

「うん……私、知らない人と話すのは……あまり好きではないというか……」

「愛理沙ちゃん、陰属性だからね」

「髪の毛だけはパリピっぽいんですけれどねー」

「悪かったですね、根暗で。あと、これは地毛ですからね」

好き勝手に言う亜夜香と千春を愛理沙は睨みつける。

もっとも、根暗なのは自分でも自覚しているためか、否定はしなかった。

「そもそもだけど、ゆづるんのバイト先を紹介して貰うんじゃダメなの?」

「まあ、それが一番確実かもしれないですけど……でも、できればびっくりさせたいなって」

亜夜香の問いに愛理沙は答えた。

こっそりと働いて、由弦をびっくりさせてみたい……そんな気持ちが愛理沙にはあった。

「私、お料理は得意なので、キッチンとかどうかなぁ……って思ったんですけれど。どう思います?」

愛理沙の言葉に亜夜香と天香と千春は口々に答えた。

「全然、できると思うけど……でも飲食店のキッチンのアルバイトの業務内容って、ほとんど電子レンジでチンとかじゃない?」

「得意なことに越したことはないかもしれないけど、愛理沙さんの持ち味が活かされるかどうかというと……やっぱり、私が店長なら、ホールスタッフに回したいわね。客入り上がりそうだし」

「私、愛理沙さんが接待してくれるなら、常連になっちゃいますよぉ。ぐへへへへ」

「……千春さんみたいな人の接客とか、絶対に嫌ですけれどね」

気持ちの悪い笑い声を出す千春に対し、愛理沙はジト目でそう言った。

しかし愛理沙の意図とは裏腹に、三人は愛理沙をどんなお店で接客させるかという話で盛り上がり始める。

「居酒屋とかいいんじゃない? ほら、髪の毛はパリピだし」

「陰属性だから。ボロが出るんじゃないかしら……喫茶店とかは?」

「喫茶店なら、メイド喫茶がいいです! メイド喫茶にしましょう! 私、通いますよ。お持ち帰りしちゃいます!」

一方の愛理沙は「由弦さんの前でならメイド服になるのは悪くないかもしれない」などと妄想し……それから慌てて表情を引き締めた。

「接客から離れてください!」

愛理沙の言葉に三人は「えぇー」という表情を浮かべたが……

ここで亜夜香が別の案を思いつく。

「お料理系YouTuberデビューはどう? お料理得意だし!」

もはやアルバイトではない。

が、千春と天香はノリノリで話を盛り上げる。

「いいじゃない。料理が得意なことも生かせるし……何より、顔も良いから、きっと再生数伸びるわ!」

「どうせなら、メイド服着ましょう! バズりまくり間違いなしですよ!!」

「そこまで行くなら、童貞を殺す服とか良いんじゃない? 私、チャンネル登録したい!」

「これは再生数、百万突破間違いなしね」

「私、スパチャしまくっちゃいますよ! デビューしましょう!! 服は私が用意します! ぐへへへへ」

一方の愛理沙は首を傾げる。

「……童貞を殺す服? 何ですか、それ」

「このセーター」

亜夜香は愛理沙に携帯の画面を見せた。

しばらくして、愛理沙の顔が真っ赤に染まった。

「え、えぇ! こ、こんなの、あるんですか? い、いや、でも、これ、横から全部見えちゃうんじゃ……」

目を白黒させる愛理沙。

そしてこれを着ている自分を想像し……増々顔を赤くさせる。

「ダメですか? 愛理沙さん」

「ダメに決まってるじゃないですか! だ、大体……私がこんな服でお金稼いで……由弦さんは喜ばないでしょう!!」

愛理沙のもっともな意見に三人は確かにと頷いた。

「確かに……もう、これ半分、NTRだよね」

「由弦君の脳が破壊されちゃう……」

「そうですか? むしろ私が由弦さんの立場だったら興奮……」

「しません。由弦さんはそんな変態じゃないです」

最後の千春の言葉を愛理沙は強く否定した。

が、しかし千春はポンと手を打った。

「思ったんですけれど。どうせ、童貞を殺す服を着るなら……」

「着ませんけどね!」

千春の言葉を愛理沙は強引に遮ろうとするが、千春は止まらない。

「どうせ着るなら、お金稼ぐとか、回りくどいことをしないで、童貞を殺す服で由弦さんの童貞を殺した方が、由弦さんは喜ぶんじゃないですか?」

童貞を殺す服で童貞を殺す。

最初はその意味が理解できず、愛理沙は首を傾げたが……

すぐに、みるみるうちに顔が真っ赤に染まっていった。

「な、な、な、何を言っているんですか! そ、そんなエッチなこと!!」

愛理沙は大声で叫び……それからハッとした様子で店内を見回した。

注目を浴びていることに気付いた愛理沙は、小さく縮こまった。

そして三人を睨みつけた。

「相談した私が馬鹿でした。……素直に由弦さんに相談します!」

それから拗ねてしまった愛理沙の機嫌を直すために、三人は苦労したとかしないとか……