軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第27話 ストーンスティック

デートの定番と言えば、遊園地や映画館が挙げられる。

他にも水族館や動物園なども選択肢に入る。

とはいえ、どれもそれなりにお金が掛かる。

もちろん、由弦の家は言うまでもなく裕福なので両親に泣きつけば――婚約者のためと言えば――二人分の料金+αのお小遣いをくれるだろう。

しかし由弦はそれをしたくなかった。

そして愛理沙も由弦の両親に金をせびるような真似はしたくなく、かといってデート費用を全額負担することもできない。

というわけで、高校生らしい、健全かつ低コストなデートとなる。

あまりお金が掛からない。

そして由弦も愛理沙もそれなりに楽しめる場所。

ついでに体が疲れない。

そんな場所となると……由弦と愛理沙が思いつくのは博物館や美術館くらいだった。

「ところで由弦さんは普段、博物館とか行くんですか?」

道中。

電車に揺られている最中、愛理沙は由弦にそんなことを尋ねた。

「……そうだね」

正直なことを言えば、あまり行かない。

興味がないわけではなく、行っても楽しめないわけではないだろうが、敢えて博物館や美術館に行こうとは思わないからだ。

とはいえ、由弦も男の子である。

好きな女の子の前ではカッコつけたい。

見栄を張りたい。

知的な彼氏面をしたい。

だが嘘は言えない。

なので……

「まあ、人並みにかな」

「つまりあまり行かないんですね」

あっさりと見破られてしまった。

「……ちなみに愛理沙は?」

「人並みですね」

「行かないんだね」

愛理沙は家事能力やその辺りの思考回路は一般的女子高生から少しズレているが、趣味嗜好はそこまで大きく外れていない。

つまり博物館や美術館にはそんなに足を運ばないタイプだ。

「意外と機会ないですよね」

「まあ……ないよな」

小学生の頃は両親に連れられる形で幾度か行ったことがあるが……

高校生に上がってから博物館等には行ったことはない。

「じゃあ、今回は良い機会ということで」

「そうだね」

そんな話をしていると、下車予定の駅に到着した。

二人は駅を降り、バスに乗って博物館へと移動する。

到着地は大規模な歴史系の博物館だ。

入館料を支払い博物館に入る。

「へぇ……意外と詳しいことが書いてあるんですね」

「このプラント・オパール解析ってのは、授業でやったな」

二人とも日本史は履修していたので、展示の内容はそれなりに理解できる。

「ここ、小学生の頃に多分、来たことがあるんですよね」

「そうなんだ」

「はい。……まあ、変な土偶を見た記憶しかないんですけれど」

そう言いながら愛理沙は目を細めた。

「同じ物でも、見え方が変わるのは面白いですね」

「成長したって、ことなのかな?」

「そうだといいですね。……年を取っただけかもしれませんが」

「……そんな年じゃないだろう」

そんなやり取りをしながら、奥へと進んでいく。

「あー、これも授業でやりましたね。確か……豊穣や子孫繁栄を祈る目的で作られたんですよね」

そう言いながら女性裸像のキャプションを読み、「あってました」と嬉しそうに愛理沙は笑う。

一方の由弦は「全然、エロくないな」などとアホなことを考えていた。

「あれ? ……これはキャプションがないですね」

そして女性裸像の近くにひっそりと。

石製の柱のようなものが展示されていた。

大きさは由弦や愛理沙の身長を超える……およそ二メートルほど。

『石棒』

と展示品の名前だけが書かれている。

「あぁ……それは……」

愛理沙は見覚えがないようだったが、由弦にはあった。

「知ってます? この……石棒?」

「まあ、うん。資料集の端っこの方に書いてあったような気がするな」

そう言いながら由弦は頬を掻いた。

ちょっと微妙に説明しにくい。

「何ですか? これ」

「いや、うーん、女性裸像と似たようなものだったような気がするけど……何だったかな? 忘れちゃったよ」

説明しにくいので、忘れたことにした。

すると愛理沙は「ふーん」と小さく呟いてから、携帯を取り出した。

雪城愛理沙は現代っ子。

分からないことはグーグル先生に聞けるのだ。

「じゃあ、今、調べますね。えっと……」

文字を打ち込んでから、愛理沙の動きが止まった。

真剣に読んでいる。

が、その頬はほんのりと赤く染まっていた。

「……」

愛理沙は無言で携帯をしまった。

「……どうだった?」

由弦が尋ねると、愛理沙はポカっと由弦の胸を叩いた。

「知ってたでしょ」

「……さあ、何のことだか」

「しらばっくれると、嫌いになります」

「知ってました」

由弦は正直に白状した。