作品タイトル不明
第24話 練習(三回目)
まず、由弦はそっと愛理沙の手を取った。
婚約指輪が光るその手の甲に、そっと唇を押し当てる。
「んっ……」
愛理沙は小さな声を上げた。
そして、ぐったりと脱力し、由弦に体重を預ける。
由弦はそんな愛理沙のきめ細かい髪をそっと手で撫でる。
一方、愛理沙は熱の篭った視線を由弦に向けた。
「愛理沙……」
由弦は彼女の名前を呼びながら、そっと髪にキスを落とした。
それから次に額に唇を近づける。
「あっ……顔は……」
弱々しい声を上げる。
しかしそんな彼女を無視し、由弦はその額に接吻した。
「どう?」
「……大丈夫そうです」
熱い吐息を漏らし、頬を紅潮させ、潤んだ瞳を由弦に向けながら愛理沙はそう言った。
それから二人は互いに体を正面に向き直る。
そしてギュっと、熱い抱擁を交わした。
互いに顔を見つめ合う。
由弦がそっと顔を近づけると、愛理沙は瞳を閉じる。
愛理沙の柔らかい、薔薇色に染まった頬に由弦の唇が触れる。
「私も……いいですか?」
「……あぁ」
由弦がそう答えると、愛理沙は目をギュッと閉じ、体を震わせながら、ゆっくりと唇を由弦へと近づけた。
愛理沙の艶やかな唇が、由弦の頬に触れる。
「できました……」
「できたね」
嬉しそうに微笑み愛理沙の髪を由弦はそっと撫でる。
心地よさそうに愛理沙は目を細めた。
「愛理沙」
「はい」
「……次はこっちに、していいかな?」
由弦はそう言って、そっと愛理沙の唇に触れた。
リップクリームが塗られた唇は、しっとりとして、とても柔らかい。
「えっ……あっ……」
愛理沙は小さく唇を動かした。
そして視線を右往左往させ、恥ずかしそうに伏してから小さな声で答える。
「そ、その……まだ、早いかなって……」
「そうか」
焦ることはない。
時間はまだまだあるのだ。
「唇以外はいい?」
由弦がそう尋ねると、愛理沙は赤らんだ顔で小さく頷く。
「はい……ご自由に」
由弦はそんな愛理沙を再び抱きしめる。
愛理沙の肢体はとても柔らかく、そして熱かった。
そして……
「んぁ……」
その白い首筋に唇を押し当てた。
愛理沙が体を震わせたのが、はっきりと分かった。
「ここはいい?」
「んっ……はい……」
こくりと、愛理沙は首を縦に振った。
次に由弦はそっと、愛理沙の耳元に口元を近づけた。
そしてそっと、息を吹きかける。
「あ、ちょ、そこは……」
続けて耳に接吻すると、愛理沙は体をビクリと震わせた。
「……だ、ダメです」
弱々しい声で愛理沙はそう言った。
しかし由弦には彼女が本当に嫌がっているようには感じなかった。
「愛理沙。愛してる」
由弦は愛理沙の耳元で囁いた。
言葉と共に吐き出された呼気が、愛理沙の耳と髪を僅かに擽った。
「そ、そんなこと言っても……ダメなんですからね」
一方、愛理沙は頬をプクっと膨らませ、拗ねるように言った。
そして……
「お返しです」
耳元でそう囁いてから、由弦の耳へと接吻する。
それから由弦の首元に唇を押し当てる。
「……愛理沙」
「由弦さん……」
お互いに顔を見合わせ、頬や額に接吻の交換をした。
回数を重ねるほどに二人の体は熱く溶けていく。
「愛理沙」
「はい」
「……唇、ダメ?」
愛理沙の柔らかい唇に吸い寄せられるように、由弦はそう言った。
一方の愛理沙は顔を真っ赤にさせ、僅かに逡巡してから答える。
「だ、ダメです……ま、まだ、恥ずかしいです」
愛理沙はそっと由弦の体を押しながら言った。
しかし由弦はそんな愛理沙の抵抗に逆らうように、体を近づけようとする。
「ちょっと……我慢、できないかも。……君が魅力的だから」
「そ、そんなこと言って、何でもかんでも、仕方がなかったことには、ならないんですからね」
戸惑った表情で愛理沙はそう言った。
しかし尚も由弦は距離を詰めようとしてくる。
愛理沙は僅かに迷ってから、飛びつくように由弦を抱きしめる。
愛理沙は悪戯っぽく、由弦の耳元で囁く。
「これでできませんよ」
それは由弦の耳には、どこか挑発するように聞こえた。
ギュっと、由弦は両腕の力を込める。
「あ、あの……由弦さん。その、ちょっと力が……」
「愛理沙!」
「ふぇ? あ、ちょ、ちょっと……」
ドン! と強い音が響いた。
由弦は目の前の翡翠色の瞳をじっと見つめる。
一方、愛理沙は混乱した表情で、口をパクパクさせていた。
気が付くと由弦は愛理沙を押し倒していた。