軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

残酷な真実

「いつ、お祖父様……先代は気付いたのですか?」

「気付いたというか、あたしが金を寄越すよう、ゆすりにいったのさ」

ギャンブルですべてを失ったエラは、情報を新聞社に売ろうとしたものの、その寸前で得意の悪知恵が働く。

新聞社で情報を売ったらその場限りだが、イーゼンブルク公爵家に話を持ちかけて口止め料を請求したら、永久的にお金が貰えるのではないか。

それに気付いたエラは、昔働いていたという伝手を最大限にまで使って、お祖父様と面会したらしい。

「十年前の話だったか。先代のイーゼンブルク公爵は血相を変えながらも、ありえないって言って信じなかったんだ」

その当時、伯父は伯母とともに地方で療養していたのだが、肺炎を煩っていたらしい。

「毎晩激しい咳に苦しんでいるという状態で、子作りなんてできるはずないのさ。夫が苦しんでいる間に、アネモネは毎晩のように遊びほうけて、看病なんてしていなかった」

お祖父様が信じないことなど想定していたようで、エラは医者から伯父の記録簿の写しを買い取っていた。

そのときの伯父が肺炎を患い、起き上がることさえできなかったことを目の当たりにすると、お祖父様はエラの暴露を信じるしかなかったようだ。

もともとオイゲンは母親にそっくりだったらしく、別の男との間に作った子だとは疑いもしていなかったらしい。

「先代のイーゼンブルク公爵は、この情報を喋らせないために、毎月金貨一枚を送るよう、銀行省と契約してくれたのさ」

お祖父様が亡くなった今も、金貨は送金されているらしい。

あらかじめ、数十年分の金貨を用意していたのだろう。

「先代イーゼンブルク公爵の書斎には、アネモネとロイ、十歳になった子の肖像画が大切そうに飾られていてね、嘘っぱちの絵だと思って、笑ってしまったよ」

それはエルツ様がお祖父様の書斎で目にした、布が被せられていた絵だったのだろう。

アネモネは離婚していてすでにイーゼンブルク公爵家におらず、伯父も亡くなってしまった。オイゲンは母親の顔さえ知らない。

お祖父様がこうあってほしい、という願いを画家に描かせた肖像画だったのだろう。

オイゲンと血が繋がっていないと知って、その絵を見続けることが辛くなり、布をかけてしまったのかもしれない。

「イーゼンブルク公爵家の名誉を守るために必死になって隠して、挙げ句、死んでしまうなんて、不幸な爺さんだったよ。あははは、あはははははははは!!」

エラの高笑いが、いつまで経っても耳にこびりついていた。

お祖父様が隠そうとしていたのは、とんでもない過去だった。

考えれば考えるほど、具合が悪くなる。

くらくらと 眩暈(めまい) に襲われ――。

「ビー、大丈夫か!?」

「!?」

エルツ様に体を支えられ、ハッと我に返る。

いつの間にかエラの家を離れ、クワルツが待つ場所まで戻ってきていたようだ。

「少し休んだほうがいい」

「いいえ、大丈夫です。ここを、一刻も早く離れたいので」

「ビー……」

転移魔法は一度行き来した場所であれば使えるようだが、長距離移動は酔いやすいらしい。そのため、帰りもクワルツに乗ろうと考えていたようだ。

「早く帰りたいのであれば、転移魔法でもいいのだが、そなたの体調が心配だ」

「頭を冷やしたいので、クワルツに乗って帰りたいです」

「わかった。その通りにしよう。ただし――」

エルツ様は私を横抱きにし、クワルツに乗せてくれる。

それだけでなく、背後に跨がった状態で、外套に私を包み込むように抱きしめた。

「落ちないよう、この体勢で帰るからな」

大丈夫、とは言えなかった。

エルツ様の厚意に甘え、このままの状態で帰ることとなる。

クワルツは私に対し気遣いを見せてくれたようで、行き以上に丁寧に飛んでくれた。

おかげで、何事もなく戻ってくることができた。

王都にある塔へと戻ってくると、エルツ様が転移の魔法巻物をくれた。

「これでエルミタージュまで帰るといい。今日はゆっくり休んで、ぐっすり眠るように」

「はい、ありがとうございます」

深々と頭を下げて、感謝の気持ちを伝える。

魔法巻物を破ろうとした瞬間、エルツ様が「待て」と叫んだ。

「やはり心配だ。そなたを放っておくことはできない」

エルツ様が私を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめる。

「一人で抱え込まず、私にもわけてほしい」

その言葉で、これまで我慢していた感情が爆発してしまう。

涙が零れ、止まらなくなった。

どうして伯母は、お祖父様が大切にしてきたイーゼンブルク公爵家をめちゃくちゃにしてくれたのか。

伯父の体調のことがあって、子どもができなかったという事情はわかるが、そうであっても、家族を裏切るような行為などしてはいけない。

もっと他にも方法があったはずなのに、真実を隠し、オイゲンを伯父の子どもとして育てさせるなんてありえないだろう。

私はエルツ様にしがみつくように抱きつき、子どものようにわんわん泣いてしまったのだった。