軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十三話

ドタドタと大きな足音に追われながら、私たちは魔城の通路をまっすぐに進みます。

通路にはぎっしりと人形が並べられている他には何もなく簡素な造りで、物寂しさすら感じました。

「どうやら当たりみたいね」

「アスモデウスの旦那には隠す気があるのか無いのかハッキリしてもらいたいもんだ」

数分間、鬼ごっこを続けて辿り着いたのは、如何にも厳重そうな分厚い扉の前でした。黒光りしていて、頑丈そうな造りに見えます。

確かにこれは如何にも大事なものが隠されてそうです。それに、中から魔力を持っている人間の気配を強く感じます。

もしかしたら、神隠し事件の被害者の方々が捕まっている可能性があります。

本当に大事なものなら普通は目立たない場所に隠しそうな気もしますが、お城の前に見張りを置くなど一切されていないような防犯意識でしたし、そういったものの取り扱い方も違うのかもしれません。

「中に入ってみたいですが、鍵は見当たりませんね。流石に……」

「マモン、破壊しなさい」

「なーんか、嫌な予感するなぁ。まぁ、やってみるけどよぉ。 漆黒の魔弾(ダークマター) ……!」

マモンが黒い塊を扉に放つと、またもや耳を塞ぎたくなる轟音と共に大爆発が生じました。

それでも、扉は傷一つなくきれいなままです。

かなり頑丈な扉みたいですね。私の魔法でも破壊は難しいでしょう。

「やっぱり無理でしたか」

「ちょっと、ちょっと、ちょっとー! フィリアの姐さん! そりゃあねぇって、最初から期待していなかったのかよ!?」

「はい。申し訳ありませんが効果は芳しくないと予想していました」

「ある意味、丁寧な分、エルザ姐さんよりも心に来る」

マモンさんには悪いですが、あの扉の見た目から推測すると、ゴーレムに使われている鉱石と同様の物質だと予測できました。

つまり、マモンさんの魔法がゴーレムに効かなかったことから、この扉を傷付けるのも無理なのではと考えていたのです。

「どうする? ゴーレムはもうすぐ、こっちにやって来るし、鍵を探しに行く?」

「それしかねぇだろ。俺らに当然旦那も気付いているだろうから、急がねぇとならないけどな」

迫りくる大きな足音。揺れる通路。

ゴーレムがこちらに間もなく到着するでしょう。

幸いなことに鈍足なので、逃げることは容易ですが、時間をかけるとアスモデウスがやってくるかもしれません。

「扉を壊しましょう。その方が早いですし」

「いや、そりゃそうなんだけどよぉ。フィリアの姐さんも俺の魔法でもビクともしないのを見てただろ? それとも何か? 姐さんはもっと凄い魔法が使えるのか?」

「それなら、ゴーレムを破壊していたんじゃない? 大聖女さんなら、何が出来ても不思議じゃなくなってきてるけど」

私は鍵を探すよりも扉を壊すことを選択しました。

どこにあるのか分からない鍵を短時間で見つけることは現実的じゃありませんし。

多少のリスクはありますが、この扉をこじ開けた方が早いです。

「皆さんにもご協力して頂きたいのですが――」

私はエルザさんとマモンさんにどうやって扉を壊すのか方法を教えました。

危ない橋を渡りますし、絶対に大丈夫だという確信はないのですが。

自分の中では八割くらいの確率で成功すると睨んでいます。

「なるほど、そいつは面白そうだなぁ」

「まぁ、それ以外に方法は思いつかないし。」

お二人にも作戦を理解していただき、私たちは扉を背にしてゴーレムと対峙しました。

こうして、近くで見るとやはり巨体が威圧的に見えますね。

さて、上手くいけば良いのですが……。

「シンニュウシャ、コロス!」

ゴーレムは拳を振り上げて私たちを殴りつけようとしました。

ここまでは作戦どおりです。単純な命令しか実行されないのは単調な動きを見て分かっていました。

私たちはギリギリまで引きつけて、ゴーレムの拳を躱します。

ゴーレムの拳は扉に直撃し……、マモンさんの魔法ではビクともしなかった分厚い扉が砕けて室内へ入ることが出来るようになりました。

「ゴーレムは同じ硬度の鉱石で出来たボディを持っていましたから、その巨体の質量を利用して扉に思いきりショックを与えれば砕ける可能性は高いと思っていました」

「鬼ごっこも無駄ではなかったということね」

分厚い扉の先には檻がいくつもありました。檻の中には魔力を保有する女性たちが捕まっていました。

やはり神隠し事件の被害者が閉じ込められていたみたいです。

およそ百人くらい居ますね。報告よりもずっと数が多いということは大陸の外の人間もかなりの数が連れ去られているのかもしれません。

「あの棺桶は何でしょう? ただならぬ気配を感じますが」

私は部屋の中央にある棺桶の中から感じられる気配が気になりました。

魔力ではないのですが、胸が締め付けられるような不思議な感じがしたのです。

「特に変な感じはしませんぜ」

「そんなもの気にしているより、早く鍵を開けましょう。不用心にもあそこに無造作に引っかかっているし」

そうですか。エルザさんもマモンさんも何も感じないのでしたら、気のせいみたいです。

とにかく、エルザさんの言うとおり捕まった人たちを解放することが先決ですね。

「シンニュウシャ、コロス、コロス!」

「ったく、黙ってなさい! この扉の破片も同じ鉱石で出来ているのなら!」

ゴーレムも室内に入ってきて暴れようとしていたところをエルザさんが魔力で扉の破片を浮遊させて、それを猛スピードでゴーレムにぶつけました。

アスモデウスが大事なものを置いているなら、何も壊されないように、この場所には入ってこない命令を出しているものかと思っていましたが認識が甘かったみたいです。

「ピガーーーーー」

同じ硬さの鉱石の破片は次々にゴーレムの腕や足の節々を貫いて、行動不能へと追い詰めました。

硬くて痛みを感じない生命体とはいえ、これには参ってしまったみたいです。

「助けてください」

「誰か! お願い!」

「助けが来たの!? 良かった……!」

鍵を手にした私は檻の鍵穴にそれを入れようとしました。

捕まっていた方々は安堵の表情を浮かべます。

しかし――。

「わざわざ君からここに来てくれるなんてね。手間が省けたよ」

「「――っ!?」」

不敵な笑みを浮かべながらアスモデウスが現れました。

これだけ大がかりなことをしたので、奇襲は諦めていましたが、接近に全く気付かなかったなんて。

エルザさんもマモンさんもアスモデウスが近付いてきた事には気付いていなかったらしく、驚きの表情を見せています。

それでも、ここで何とかスキを見つけて決着をつけねば。

私はこの強大な敵と戦う覚悟を決めました――。