軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十三話(グレイス視点)

「おーほっほっほっ! このエミリー・マーティラスにかかれば悪魔など敵ではありませんことよ!」

マーティラス家の長女であるエミリーは胸を張って高笑いしていました。

ここ最近、大陸中で頻発している神隠し事件。その犯人が悪魔などという信じがたい事実を聞いてのこの反応。

彼女には怖いものは居ないのでしょうか。

「お気になさらずに、エミリーお姉様は時々、あんな風になるだけですから。慣れれば聞き流せますわ」

「わたくしたち、四人がかりでようやく捕縛したのに、よくもまぁ。自分だけの手柄のように振舞えますね。そういうのって、聖女として如何なものなのでしょう?」

退魔師を名乗る男性――クラウス・エーセルバイン様がこの度、マーティラス家の四聖女の護衛としてダルバート王国にあるクラムー教の本部から派遣されてきました。

銀髪で青い目をした青年――クラウス様はフィリア様の元にも同じく退魔師が護衛に行かれていることをわたくしたちに伝えました。

退魔師とは悪魔と大昔から戦っている方々で教会から命じられて世界中で秘密裏に動いているみたいです。

彼は青白い顔をした異形の者――サタナキアという名前の悪魔を使役しており、百聞は一見にしかずということで、実際に悪魔の力を見せつけました。

高い魔力と生命力を持つサタナキアさんに……わたくしたちは魔物との戦闘とはまた違う緊張感の中で苦戦を強いられましたが、エミリーの拘束術式でようやく動きを封じたのです。

そのためにわたくしたち残りの三人は陽動に陽動を重ねてスキを作りましたので、三女のジェーンがエミリーの態度に苦言を呈すのは無理もありません……。

クラウスさんによれば、悪魔とは首を切り落としても生きているらしいです。さすがに女性には見せられないとして実演はしませんでしたが……。

「これで、悪魔の恐ろしさは分かってくれましたか? 黒幕である悪魔……アスモデウスはサタナキアよりも何倍も強い魔力を持っています」

神隠し事件の黒幕であるアスモデウスという悪魔は、こともあろうに大聖女になられた私の師匠――フィリア様の肉体を狙われているのだとか。

同時に高い魔力の保持者も狙っているらしく、それが理由で四人の聖女がいるマーティラス家を彼は守りに来たとのことです。

「気に入りませんわね。そのアスモデウスという悪魔」

「はい。平和を乱す元凶ですから……僕も許せません」

「このエミリー・マーティラスをよりによって、フィリア・アデナウアーのおまけみたいに扱うなんて……。レディの扱い方をご存知ないみたいですわ」

「…………」

クラウス様はエミリーのどうでも良い対抗心と嫉妬心を耳にされて、黙ってしまわれました。

これさえ無ければ、ただの高飛車なお姉様ですのに……。

「エミリーお姉様、クラウスさんがそろそろ護衛に来られたことを後悔されますから、その辺で」

「アマンダ、わたくしは何も変なことは申しておりませんが」

次女のアマンダがエミリーをそれとなく諌めますが、あまり効果は無いようです。

エミリーはフィリア様が大聖女になられたと聞いて以来、一人で厳しい修行を積んでおりました。

今回の件がフィリア様を巡る戦いになりそうだと知って、面白くないのでしょう。

「エミリー姉様、フィリアさんが悪魔に捕われたら一番になれるとか考えていたりして」

「ジェーン、見縊らないで頂戴! 大聖女フィリアには実力で勝利します。そう、わたくしも大聖女になることによって! 悪魔に捕まるなど許されません。それこそが――」

「誇り高き、マーティラス家に生まれし者の生き様である!」

「「お父様……!」」

応接室に入って来られたのはわたくしたち四人姉妹のお父様――マーティラス伯爵です。

お父様、もう深夜ですから先に休まれたのかと思いましたわ……。

「エミリーよ、よくぞ申した。フィリア殿は素晴らしい聖女である。それを超えることは容易ではない。この神隠し事件、フィリア殿を狙う不埒な輩が暗躍しているのだな? それならば、事件を解決することで彼女を守るのだ!」

「いえ、伯爵殿。お嬢様方も狙われているので、僕が守りに来たのですが」

「お父様! お任せください! マーティラスの名に懸けて……このわたくしが見事に優雅にそして……気品を持って解決に導きますわ!」

「ですから、エミリーさんも聞いてください。僕がですね――」

お父様とエミリーの悪い癖が出ていますわ。

クラウス様が泣きそうな顔をしていらっしゃいます。

その傍らでサタナキアさんは心配そうな顔で彼を見ていました。悪魔も困ることがあるのですね……。

しかし、 聖女国際会議(セイント・サミット) には魔力の高い女性が集まります。

そこで何かが起こるような予感は確かにありました。

わたくしもフィリア様に何かがあれば……と思うと胸が締め付けられます。

あの方はこの大陸を救ってくれました。

それならば、今度はわたくしたちが彼女を助ける番ではありませんか。

「よし、ワシも 聖女国際会議(セイント・サミット) が行われるパルナコルタへ行こう! フィリア殿にはグレイスが世話になっておるし、挨拶をせねばな」

「わたくしも別の意味で挨拶をするつもりですわ」

「あの、くれぐれも 聖女国際会議(セイント・サミット) では軽率な行動は避けてくださいね。僕が教会から叱られるのですから」

こうして、わたくしたち四人姉妹に加えて……退魔師のクラウス様、その従者のサタナキアさん、そして我が父マーティラス伯爵がパルナコルタに向かうことになったのでした。

「わっはっはっは!」

「おーほっほっほっ!」

「エルザ先輩……、僕と担当代わってくれないかなぁ……。フィリアさんの所が良かった……」

フィリア様、こんなに早くお会い出来るなんて嬉しいです。

ミアさん、あなたには絶対に負けませんから――。