軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仲間を招待しました

ついに約束の日、ソフィアの我が家への訪問日がやってきた。

私は朝からソワソワしてその到着を待った。

「お嬢様、お話されていたソフィア様という方が来られたのですが……」

アンがソフィアの到着を教えてくれたのだが、どうも様子が変な気がした。

しかし、一刻も早くソフィアに会ってお話したい私はアンにお礼を言って客間へと急いだ。

そうして、客間に行くと―

待ちかねた美少女ソフィアも確かにいたのだが……

なぜか、その隣にこれまた絶世の美少年がいた。

黒髪、黒い瞳のその少年は髪と瞳の色こそソフィアとは違うがその顔立ちはソフィアに似ていて血縁関係を感じさせた。

そして、そんな美形な二人が並ぶとまるで対の人形のように見えた。

ああ、アンの様子が変だったのはこのお人形のような二人に動揺したからなのね。

そんな美しい二人を見つめ、ぼーとなっている私に声をかけてきたのは、美少年の方だった。

「妹を招待していただきありがとうございます。妹はほとんど一人で外出したことがないので、付き添いでまいりました。兄のニコルです」

似ていると思ったがやはり、この美少年はソフィアの兄であるらしかった。

それにしても外出に家族が付き添いとはソフィアは箱入り娘さんのようだ。

しかし、実はこの私だってかなりの箱入りである。

なにせ、お母様に『出かけるときはキースに付き添ってもらいなさい。キースの言うことを聞いて可笑しなことは絶対にしないこと』と言われて、いつもキースに付き添ってもらっているのだから。

うん。同じ箱入り同士より仲良くなれそうだわ。

そんなことを考えながら、とりあえずソフィアのお兄さんに向き合いドレスの裾をあげる。

「こちらこそ、おいでいただいてありがとうございます。カタリナ・クラエスと申します」

「ソフィアの兄でニコル・アスカルトといいます。どうぞよろしくお願いします」

美少年が再び名乗った。

そして、それを聞いて私は固まってしまった。

ニコル・アスカルト……聞き覚えのある名前だ。

「あの、失礼ですけど、ニコル様は宰相様のご子息でいらっしゃいます?」

「はい。そうです」

やっぱり!?この人、攻略対象のニコル・アスカルトだ!

道理ですごい美形だと思ったら攻略対象だったのね!

正直、すぐにでも、部屋に戻って『前世でのゲームの記憶を書き出した帳』を読み返したいが……そうすることはできないので必死に記憶をかき集める。

ニコル・アスカルト、宰相の息子でジオルド、アランとは幼馴染。

主人公よりは一つ年上で、学園では一学年上の先輩で無口キャラ。

うん、これくらいしか思い出せない。

そもそも、実はこのニコルはまだ攻略していなかった。

ジオルドを終えたら取りかかろうと思っていたのだ。

そのため、結局、ニコルのルートはやらずじまい。

わかっていることと言えば、ゲームの人物紹介と、先にゲームをしてクリアしたオタク友達あっちゃんから少し聞きかじった情報だけだ。

確か、あっちゃん曰く……ニコルのライバルは……妹!!

そうだ、ニコルはかなりのシスコン設定でライバルはその妹だと聞いた。

そして、ニコルを落とすのにはこの妹を先に攻略しなければいけないとあっちゃんは言っていた気がする。

ああ、ありがとうあっちゃん。あの時はネタバレを怒ってごめんよ。まさか、ここにきてあっちゃんのネタバレがこんなに役に立つとは。

ニコルのライバルは妹、つまりカタリナはライバルではない!

それならば、ニコルに関わっても私の破滅フラグは立つことはなさそうだ。

それに、妹がライバルなら、アランとメアリの時みたいに名台詞横取りしてお邪魔虫になることもなさそうだ。

よし、それなら別にソフィアと仲良くしても問題なさそうね。

折角できたロマンス小説を語り合えるであろう仲間なのだ。

そう簡単に逃してなるものか!

「……あの、カタリナ様」

どうやらだいぶ自分の世界に入っていたらしい。

ソフィアが心配そうな顔でこちらを見ていた。

「ああ、ソフィア様。ごめんなさい。改めまして、ようこそおいでくださいました。よかったらこの前の続きをお話しさせて」

そう言って、私はお茶やお菓子の準備されたテーブルにソフィアを誘った。

そして、とても有意義な時間を過ごした。

初めこそよその家になれないのかオドオドしていたソフィアだったが、本の話になると口が軽くなった。

本当に本が好きなようだ。

ソフィアは今はやりのロマンス小説はもちろん、昔の御伽話や歴史を元にした物語など本当にたくさんの本を読んでいて、その話はとても面白かった。いくつかおすすめの本も教えてもらった。

強いていえば、兄のニコルが完璧に蚊帳の外になっていたが……

まあ、そのことに気付いたのもだいぶ時間がたってからだったので仕方ない。

しかし、本当に設定どおりに無表情で無口な少年だ。

折角の美少年なのになんだかもったいない。

楽しい時間はあっという間にすぎるもので、気づくと日が傾きかけ、ソフィアの家の召使さんが「そろそろ、お暇しないといけません」と声をかけてきた。

そうして召使さんに促され立ち上がったソフィアの髪に光が当たりキラキラと光っていた。

本当にきれい。きっと絹のようなさわり心地に違いない。

ああ、少しでいいから触ってみたいな~。

「本当にきれいな髪ですね。少しだけ触ってもいいですか?」

私は思い切ってソフィアに頼んでみた。

なんとなく、『エメラルド王女とソフィア』の台詞みたくなり、気分はすっかりエメラルド王女だった。

しかし、小説ならここで顔を赤く染めるはずのソフィアだが……

「……え!?」

残念ながら、すごく怪訝な顔をされてしまった!

やってしまった!その顔を見て私は自分の大失態を悟った。

いつもメアリが喜んでそのふわふわの髪を触らせてくれるから油断していたが、もしかしたらこちらの世界では婦女子の髪にみだりに触るのは失礼なことなのかもしれない。

そもそも初対面では鼻息あらく迫ったりしているから……変態だと思われたかも……

やばいよ!悪役面はもう仕方ないとしても変態の称号は欲しくない!

「…え、えっとその」

なんとか言い訳を考えるがなかなか浮かんでこずに私は一人アワアワする。

「……ないのですか?」

「……え?」

ソフィアが弱々しい声で何かつぶやいたが聞き取れなかった。

私が聞き返すと―

「……気持ちが悪くないのですか?」

今度は先ほどより大きな声でソフィアが言った。

気持ち悪い……私が!?

私が変態だから気持ち悪いのか!

いや、私は決して変態ではないわ!確かに一年前には俺様王子にメアリを誘惑したとかわけがわからないこと言われたけど……そんな趣味はないし!私は至ってノーマルなのよ!

「あのですね……私は」

私は何とか弁解しようと口を開いたが―

「カタリナ様は私のこの見た目が気持ち悪くないのですか?」

続いたソフィアの台詞に言葉を失ってしまった。

え?どういうこと気持ち悪いのは私ではなくて?ソフィアが?

思わずきょとんとする私にソフィアがまるで泣き出しそうな顔で告げる。

「……この老人のように白い髪に血のように赤い瞳………みんな気味が悪いと呪われた子だと言うのに……」

「!?」

なんですと!?

こんなに綺麗なのに気味が悪いですと!?

この世界の人の髪や瞳は金、銀、茶色に、赤、黒にと本当に色とりどりだ。

なので、ソフィアの白い髪も、赤い瞳も普通のものだと思っていた。

なのに……異質なものだったのか……

それに―

「……呪われたって…いったい?」

私の問いかけにソフィアが口を開こうとすると、それを遮るようにニコルが冷たい声で言った。

「中傷です……父の功績やわが家を妬んだものたちがそのような悪口を広めているのです」

たしかに、アスカルト家は非常に優秀だ。優秀であるがゆえに敵も多く、悪く言われることも多いのだろう。

我がクラエス家だって、キースはとびっきりに優秀だし、私だってちゃんと令嬢をしているのに『あそこの子供は変わっている』なんて根も葉もないことを言われることがあるのだから。

「……それでも私のこの姿が気味悪いのは変わりありません」

ソフィアが力なく呟く……

きっと心ない悪口をたくさん言われてきたのだろう。

たしかに言われれば、ソフィアのような容姿の人を今まで見たことはないが―

「でも、私はきれいだと思うけど……」

「……え」

私の呟きにソフィアが目を見開いた。

じっとこちらを見つめるソフィアに私は続けた。

「私は、ソフィア様のその絹のような白い髪も、ルビーみたいに赤くキラキラした瞳もとても綺麗だと思います」

このくらいの発言なら変態とは思われないだろう。

変態認定は絶対に避けたい!

私はノーマルですよ安心ですよとソフィアに笑顔を向ける。

「ですから、また遊びにきていただけると嬉しいです。そしてよければ、私のお友達になってくださいませんか?」

そう言って私がさしだした手にソフィアが手を重ねてくれた。

その白く綺麗な手を私はぎゅっと握りしめた。

喜ばしいことに今度は怪訝な顔を向けられることはなかった。

こうして私は念願のロマンス小説を語り合う友達をゲットしたのである。

ソフィアと彼女に寄り添うニコルを馬車まで見送った後。

とりあえず部屋に戻り『前世でのゲームの記憶を書き出した帳』を引っ張りだしてみたが―

最初に思い出した以外のことは特に記入されていなかった。

まあ、ソフィアが攻略対象の妹でカタリナと同じライバルキャラだということには驚いたが―

今回はおそらくなんの邪魔もしていないのでそこは安心だ。

そして、とても喜ばしいことにソフィアは私と同じ年であり、魔力保持者だった。

つまり魔法学園でも同級生になるのだ。

これからもずっと小説を語り合える!

私は喜びにベッドの上で飛び跳ねて小躍りし、アンに注意をうけることとなった。

その後も、ソフィアは我が家に来てくれるようになった。

ちなみに付き添いのニコルも一緒だ。

そして喜ばしいことにソフィアと私の熱い小説トークに影響を受けたのか「私にも貸していただけないかしら」とメアリも一緒に読んでくれるようになりさらに小説トークは盛り上がることとなった。

また、外ではほとんど遊んだことのないというソフィアを外に連れ出して遊び、一緒に畑作業もするようになった。

最初こそ、驚いた様子のソフィアとニコルだったが、今では私がほっかむりで登場しても大丈夫になった。

こうして、我が家に新たな通い仲間が増えた。