軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第85話 おっきなおふろなのー

「ふんっ」

先ほどまでの陽気な様子とは一転、メルテラはむすっとした顔で船首に座っていた。

リオンが褒めてあげなかったせいで拗ねてしまったのだ。

双子が魔物を倒したときに頭を撫でられていたのを見て、自分も魔物を倒せば同じようにしてもらえると思っていたのだろう。

「「よしよし?」」

それを見かねたらしく、双子がメルテラの頭を撫でた。

「むう……お主らに褒められてものう……」

「「?」」

不満そうに言いつつも、メルテラは少し嬉しそうだった。

「あ、そうだ。聞き忘れてたけど、その身体どうなってるんだ? 百年生きてるようには見えないし、やけに頑丈だし、そもそも自然なものとは思えないんだが」

それにリオンの記憶では、百年前にしつこく仲間にしてほしいと懇願してきたエルフとはまったく姿形が変わっているのである。

「くっくっく……よくぞ聞いてくれたの!」

メルテラはすっかり機嫌を取り戻すと、自らの秘密を自慢げに語ってくれた。

「実はこの身体、錬金術の秘奥によって作り出した人造人間――ホムンクルスなのじゃ!」

「ホムンクルス?」

錬金術には疎いため、リオンにはあまりピンとこなかった。

あるのは、錬金術が土魔法から派生した魔法系統であるという知識程度のものだ。

「不老不死、完璧な魔力循環、そして高い身体能力! すべてを兼ね備えた最強の身体を作り出し、そこへわらわの魂を移したのじゃ!」

「「おー?」」

メルテラがあまりに勝ち誇ったように告げたため、それに釣られてしまったのか、双子は感嘆の声を上げた。

「ほほう! お主ら、わらわが成し遂げたことの凄さが分かるか。なかなか見どころがあるのう!」

「「ん!」」

本当はまったく理解してないのだが、双子は褒められたので嬉しそうに頷く。

「過去を紐解いてみても、ここまで完全なホムンクルスを作り出し、さらには自らの魂を移し替えることに成功したのは初めてのことじゃろう!」

「「おおー」」

楽しくなってきたのか、とりあえず合いの手を入れる双子。

「けど、何で子供の姿なんだ?」

「む……それはじゃな……」

リオンが問うと、メルテラは急に歯切れが悪くなって、

「身体を大きくしようとすると、それだけ作るのが難しくなってしまっての……何度も試したのじゃが……」

どうやら意図的に子供の姿にしたわけではなく、それしか作れなかったかららしい。

「だ、だが! この方が可愛いからよいのじゃ! 結果オーライというやつじゃの!」

メルテラはそう言って胸を張る。

「お主らもそう思うじゃろ?」

「「……かわいい?」」

「そう! これが可愛いというやつじゃ!」

「「ん!」」

「……二人とも、無理やり頷かなくていいんだぞ?」

「見えてきたな」

「うーむ、相変わらず大きな湖じゃのう」

土船を飛ばすこと数時間。

前方に見えてきたのは、対岸が霞むほどの巨大な湖だった。

あれこそが目的地であるリュメル聖王国最大のシンボルであり、国の中心地である。

というのも、聖王国の王都はあの湖の中に浮かぶ島の上に存在していて、それ以外の街も大半が湖畔に点在しているからだ。

『おっきなおふろなのー』

「「おふろ……」」

リオンの頭の上でスーラがぷるぷると嬉しそうに震え、一方で双子は圧倒されたのか口をぽかんと開けている。

「お風呂じゃなくて、あれは湖というものだ。お湯じゃなくてすべて水だぞ」

「「ふえー」」

どうやら双子も湖を見たのは初めてのことらしい。

この様子だと恐らく海も見たことがないだろう。

「近くで見てみるか?」

「「ん」」

湖に近づいて土船を停止させた。

双子は恐る恐る湖に近づくが、波で水が伸びてくると慌てて逃げていってしまった。

猫の獣人ということもあって、二人は元々あまり水が得意ではない。

お風呂には慣れてしまったが、これだけ巨大な水となるとやはり怖いらしい。

「大丈夫だ。湖は襲ってきたりしないから」

「「……」」

今度はリオンの背中に隠れながら水際へと近づいていく。

と、そのときだった。

ズバァァァァンッ!

突如として湖面が噴水のごとく跳ね上がった。

「「~~っ!?」」

湖が襲ってきたのかと飛び上がって驚く双子だが、その正体は人型の魔物だった。

「「「ギョギョギャギャ!」」」

「サハギンか」

水中に棲息している半魚人の魔物だ。

魚の身体に腕や脚が生えており、凶暴な性格で船乗りたちに怖れられている。

エラ呼吸なので基本的には水中でしか生きることはできないが、時々、岸辺に上がって人間を攻撃することもあった。

全部で三体。

びちゃびちゃと水を蹴りながら躍りかかってきた。

「「えい!」」

「「「ギョッ!?」」」

ただの魔物なら恐るるに足らずと、双子があっさりと撃退する。

サハギンは悲鳴を上げて宙を舞い、湖面へと叩きつけられた。

「「……あ」」

魔物を倒すのに集中していたせいか、双子は気づかないうちに湖の中に両膝の辺りまで浸かっていた。

「「だいじょーぶ」」

どうやらそれだけで湖への恐怖を克服したらしく、バシャバシャと走り回って遊び始める双子。

「っ!」

「さかな!」

湖の中を泳いでいる魚に驚いている。

「そうか。生きてる魚を見るのは初めてなのか」

「「ん!」」

魚好きな二人の目が輝く。

「つかまえた!」

「いりすも!」

気づけばその手には生きのいいフナが握られていた。

手掴みで捕まえたらしい。

『すーらもやるのー』

「わ、わらわだって負けぬぞ!」

双子に対抗してか、スーラとメルテラも魚獲りを始めてしまった。

獲れたての魚を見ながらリオンは呟く。

「せっかくだし、すぐに調理してやるかな」