軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第82話 なかなか面白い推理ですわね

「ご報告です! 犯人と思われる男を確保しました!」

「なに、本当か?」

リオンの回復魔法によって無事にシリウスが一命を取り留めた後。

眠っている王太子の邪魔にならないようにと、医務室の外へと出た一行の元へ、犯人確保の報告が入った。

しばらくして、その男が連れられてくる。

それは先日リオンが捕まえるも、脱獄して行方をくらましていた男だった。

(……ん?)

リオンはふと違和感を覚え、首を傾げる。

「一体、誰に命じられましたの?」

そんな中、男に詰め寄ったのはセリア王女だ。

背後に黒幕がいると確信しているらしい口調だった。

「王太子を狙った凶行。当然ながら死罪は免れませんわ。ですが正直にすべて白状するならば、減刑を考えることもできるかもしれませんわ」

すると男は恐る恐る顔を上げると、パゾロ宰相の方を見た。

「なっ……」

パゾロが息を呑む。

「貴様っ、どういうことだ!? わたしは何も知らない! 殿下を手にかけようなど、思うはずがないだろう!」

「パゾロ宰相、弁明は後から聞きますわ。今はお黙りなさい」

「っ……」

セリアがぴしゃりと言い、パゾロは口を噤む。

「貴方はパゾロ宰相に命令され、王太子殿下の命を狙った。間違いありませんの?」

「……」

男ははっきりと頷いた。

「ち、違う! このような者のことなど知らん! 断じて無関係だ!」

パゾロは必死に訴えるが、しかしセリアは兵士たちに命令を下した。

「パゾロ宰相を……いえ、謀反人を捕えなさい」

予想外の事態に戸惑う兵士たちだったが、すぐにパゾロを拘束する。

「待て! このわたしを誰だと思っておる! やめんか!」

喚くパゾロはそのままどこかへ連れられていった。

「先日は助かりましたの。お陰でお兄様もすっかり良くなりましたわ」

武術大会から数日後。

王太子を助けた礼をしたいと言われ、リオンは再び王宮に招待されていた。

ただし今日は先日と違い、王太子は不在だ。

「本当にお兄様のご一緒したかったのですけれど、生憎と政務でお忙しくて」

宰相が捕らえられたことで、その処理に追われている最中だという。

国のナンバーツーが謀反を起こしたとなれば、その影響は計り知れない。忙しいのも当然だろう。

「「もぐもぐ」」

双子が相変わらず宮廷料理をがっつく中、リオンは料理には手を付けず、代わりに口を開いた。

「王女様、一つ聞いていい?」

「何かしら?」

「王太子様の命を狙ったの、本当は王女様だよね?」

一瞬、時が止まったかのようだった。

しかしセリアは笑顔のまま、

「うふふ、面白いことを言いますわ? お兄様を害そうなんて、考えたこともありませんけれど……後学のためにどうしてそうお考えになったのか、教えていただけませんか?」

「本物の実行犯に聞いたから」

「……実行犯なら捕まりましたわ? あなたも見ていたでしょう?」

「うん。でもあの人、偽物だったよ」

実はあの後、スーラの分身を追いかけていくことで、身を潜めた本当の実行犯を発見したのである。

宰相に命じられたと証言した偽物は、何らかの魔法によって姿を変えられていた。

【盗賊王】をマスターしたリオンには、すぐに別人だと分かった。

「……もしそれが本当だったとして、なぜわざわざそのようなことを?」

「そこは推測するしかないけど、たぶん本物を失うわけにはいかなかったからじゃないかな。あれだけの距離から狙撃できる人材はなかなかいないと思うし」

前世ならともかく、今の世界には希少な存在だろう。

「だから前回、捕まっちゃったとき、慌てて逃がしたんじゃないかな? もちろん拷問で本当のことを白状されたら困るから、ってのも大きかっただろうけど」

ゆえに今回はあらかじめ捕まってもいいように、別人を用意しておいたのだ。

そして宰相の手の者だと言わせることで、罪を擦り付けたのである。

「あくまで王太子様の暗殺に失敗した場合の保険でもあったわけだけれど」

「……それは一体どういうことですの?」

「目的は王太子様を亡き者にすることじゃなかったから。戦争を止めるためだったんだ」

リオンはこっそり調べたこの国の現状を告げる。

「王太子様は戦争の準備を進めていたんだね。狙いは恐らく隣国のパーメリア王国かな。今までは友好国だったけれど、王太子様は虎視眈々と狙っていたんだ」

パゾロ宰相は表向き、王太子様と争っているように見えて、実は水面下でそれに協力していたのである。

恐らく相手国を油断させるためだろう。

国のトップが仲違いしているような状態で、まさか戦争を仕掛けてくるとは思えない。

そして武術大会はこの国の騎士たちの力を国民に示し、支持を集めるためだった。

決勝で密かに支援魔法が使われていたが、恐らく元からどんな手を使ってでも、この国の騎士を優勝させるつもりだったのだろう。

もし王太子が死ねば、当然ながら戦争は行われない。

あるいは王太子と宰相の関係に亀裂が走れば、少なくとも当面は戦争どころではなくなるに違いない。

「ふふふ、なかなか面白い推理ですわね」

「推理じゃなくて、調査結果だよ」

リオンは断言する。

するとしばしの沈黙の後、セリアはにっこりと微笑みながら言った。

「一人の命を引き換えに、多くの命を奪う無駄な争いを防ぐことができるとしたら、それは正しいことだと思いません?」

(うわぁ……。まぁ間違ってはないのかもしれないけど、だからって自分の兄を殺そうとするなんて)

とはいえ、古今東西、王族同士の殺し合いは珍しいことではない。

(これだから王族は怖いんだよなぁ……)

改めてリオンは権力者には関わり合いたくないと思うのだった。

「それで、どうするおつもりでしょうか? 今のことをお兄様にお伝えしますの?」

「何もしないよ」

「あら?」

「だって子供の証言なんて、誰も信じないでしょ?」

それにセリアはただの深窓のお姫様ではない。

王宮の内外に独自の勢力を有しているようで、意外と大きな力を持っているのだ。

よほどの権力者でなければ、何を証言しても揉み消されることだろう。

「ではなぜわざわざ?」

「一つだけ、聞いておきたいことがあったんだ」

「……何かしら?」

「ゼタお姉ちゃんの居場所、知ってる?」