軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第81話 これで治ったと思うよ

「それではこれより表彰式を開催いたします」

決勝戦が終わり、表彰式が行われた。

シリウス王太子が自ら表彰状を優勝者と準優勝者に授与するようで、ステージへと降りてきていた。

「う~~~~~~~~」

イリスは未だに敗北が悔しいようで、表彰を受ける前も後もずっと不満顔だ。

それでも観衆は「よくやった!」「強かったよ!」と彼女を称えている。

「ああ……イリス様……僕にとっては貴女こそ勝者だ……っ!」

ランスロットは泣きながら意味不明なことを呟いていた。

「諸君らには素晴らしい戦いを見せてもらった。まずはその健闘を称え、私は心から感謝の意を表したい。ありがとう」

総括を述べるシリウス王太子。

その言葉に観衆が湧いた。

「そして私は我がステア王国の騎士たちの強さ、勇敢さを確認することができたように思う。今回は国外からも多くの優秀な戦士たちが参加してくれた。二十四名の本選出場者のうち、我が国の騎士は三分の一の僅か八名だ。しかし優勝した聖竜騎士団団長のバルバスを筆頭とし、ベスト8に六人も駒を進めたのだ」

約二名の例外はあったが、確かにこの大会は、王国の騎士たちの活躍が目立つものだった。

――〝彼ら〟が意図した通りに。

パンッ!

そのとき観客席の方で何かが破裂するような音が響いた。

「「「きゃああああっ!?」」」

悲鳴が轟く。

ステージの上で演説中だったシリウスが、崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだからだ。

「「「殿下っ!?」」」

すぐに護衛の騎士たちが駆け寄っていくが、彼らが見たのは胸から血を流し、すでに意識のない主君の姿だった。

「あの男だ!」

誰かが叫んだ。

そこには他の観客を押し退けながら逃走する男の姿があった。

警備員たちが即座に男を追う。

会場が騒然となる中、リオンは一人冷静にこの状況を見ていた。

(違う。あの男じゃない。わざわざ観客に紛れて狙撃した犯人が、あんなに分かりやすく逃げるわけないだろう。あらかじめ用意しておいた偽物だ)

リオンはシリウスの胸を貫いた銃弾の軌道から、犯人の位置を割り出していた。

(あいつだな。あの気配、恐らく以前、同じように王太子を狙ったやつと同一人物だろう)

驚く観客たちに紛れながら、静かに逃走を図っていた。

「スーラ。こっそりあいつに分身体をくっ付けておいてくれ」

『わかったのー』

小指サイズの分身体が犯人の背中に貼りつく。

これでどこに逃げようと無駄だ。

ステージの方に視線を戻すと、シリウスは担架で運ばれていくところだった。

(あれだと普通の回復魔法じゃ助からないな……仕方がない)

リオンは後を追いかけた。

「おい、この先は立ち入り禁止だぞ!」

「ごめん、急いでいるから」

「えっ? ちょっ、こら!」

途中で警備の兵士に止められてしまったが、その脇をすり抜けて先に進む。

「失礼しまーす」

「っ、誰だっ? 貴様はこの前のっ……どうやって入ってきた!?」

その部屋に入ると、そこにはパゾロ宰相がいた。

面倒な奴がいるなと思いつつ、リオンは奥へと視線をやる。

ベッドに寝かされたシリウスに、治癒士たちが必死に治療を施しているところだったが、案の定、焼石に水の状態だ。

「何をしている! 早くこいつを放り出せ!」

「「「は、はいっ」」」

パゾロ宰相が怒鳴り、兵士たちがリオンを取り囲んでくる。

だがその中の一人が声を上げた。

「君はあのときのっ……」

それは先日、野盗団からシリウス一行を助けたときに、リオンに助力を依頼してきた人物だった。

実は近衛騎士団の隊長である。

「確か君は回復魔法を使うことができたはずだ! 手を貸してくれないかっ?」

「うん、いいよ。というか、そのために来たんだし」

どうやらリオンが回復魔法を使えることを覚えていたらしい。

「どういうことだ? こんな子供が回復魔法? 必要ない! 我が国の治癒士たちの邪魔をするな! おいっ、邪魔するなと言っているだろう!」

喚くパゾロ宰相をスルーして、リオンは奥のベッドへと近づいていく。

そこには青ざめた顔で兄を見下ろすセリア王女の姿があった。

「あなたは……」

リオンに気づいて視線を向けてくる。

一方、治癒士たちが当惑する中、リオンは王太子の容態をさっと診察して、

「まぁこれくらいならすぐ治るよ」

「ほ、本当ですのっ?」

しかしそこへ再びパゾロ宰相が割り込んでくる。

「セリア王女、なりませんぞ! こんな得体のしれない子供に殿下の治療をさせるなど、言語道断! 殿下の身に何かあったらどうなさるおつもりですか! ここは彼らに任せておけばよろしい!」

「……パゾロ宰相」

セリアはキッとパゾロを睨みつけると、核心を突くような問いを口にした。

「もしかして貴方はお兄様が回復したら困るんですの?」

「な、何をおっしゃっているのですか!? わたくしめがそのように思うわけがないでしょう……っ!」

「ではなぜお兄様の治癒を妨害しようとしていますの?」

「ぼ、妨害などではっ……」

すぐさま反論するパゾロだったが、セリアは納得するはずもなく、さらに追及の言葉を投げかける。

「――パーフェクトヒール」

「あっ」

時間の無駄なので、王女と宰相の言い合いを後目にリオンはさっさと回復魔法を使った。

鮮烈な光がシリウスを包み込む。

見る見るうちに穴が塞がっていった。

「な、なんという癒しの力……」

「こんな子供が……」

治癒士たちが驚愕する中、リオンは言った。

「はい、おしまい。これで治ったと思うよ」