軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 何で雷撃を躱せるんだ

「貴様の弱点は接近戦しかできないことだ。やはりこの勝負、私が勝たせてもらう」

と、勝利を宣言するバルバスだったが、実は内心では大いに焦っていた。

(いやいやいや、何で雷撃を躱せるんだ!? 規格外にもほどがあるだろう、この子供!)

雷撃を回避されたことは、魔物も含めて今まで一度もなかった。

当たりさえすれば、オーガですら全身が痺れてしばらく動くことができなくなる一撃だ。

小さな幼女など、最初の一発で決着が付くだろうと思っていた。

なのに連射しても一向に当たる気配がない。

信じがたい瞬発力で、バルバスの放つ雷撃をすべて避けてしまうのだ。

(だがこのままいけば……)

それでもバルバスが間断なく放つ雷撃を前に、ただ逃げ回ることしかできていない。

幾ら体力があろうと、いずれ限界がきて回避できなくなるはずだ。

「あーすうぉーる!」

そのとき幼女の目の前に突如として土の壁が立ち上がったかと思うと、雷撃を受け止めた。

(えええええっ!?)

驚くバルバス。

「あーすうぉーる!」

少し手前に新たな壁が現れ、幼女は先ほどの壁から素早く移動する。

(まさか、魔法まで使えるのか!? 獣人は魔法が苦手なはずだろう!?)

リオンのスパルタ教育によって、イリスは初級の魔法までは一通り使うことができるようになっていたのである。

壁を次々と作り出し、その陰に隠れながらイリスはバルバスとの距離を確実に詰めていく。

接近戦では明らかに分が悪い。

バルバスは焦った。

(ど、どうする!?)

パゾロ宰相からも強く念を押されたが、この戦い、絶対に負けるわけにはいかないのだ。

――無論、どのような手を使っても構わん。

その言葉が脳裏を過る。

(……仕方がない。本当はこの手は使いたくなかったのだが……)

騎士団長と言えど、宰相に逆らうことはできない。

バルバスはあらかじめ決めていた合図を送る。

すると突然、全身から力が溢れ出してきた。

(よし、バフが効いた。周りには……バレていないはずだ)

実はステージ周辺に支援術師たちを配置し、合図に応じてバルバスに支援魔法をかけるよう命じておいたのである。

ついに彼我の距離が詰まった。

だがバルバスは焦らない。

タイミングを見極め、斬撃を繰り出す。

少しでも掠めれば、刀身を覆う紫電が相手の身体へと流れ、一時的なマヒ状態にすることが可能だ。

(って、完全に躱された!?)

しかしこちらの攻撃を読んでいたかのように直前で急停止され、剣は空を切った。

直後にまた躍りかかってくる。

「えい」

「ぐっ!」

繰り出された蹴りをすんでのところでガードしたが、衝撃を殺し切れずに吹き飛ばされそうになる。

(おいおいおい、こっちはバフで強化されているんだぞ!?)

信じられない破壊力の一撃に、バルバスは驚愕する。

そこから防戦一方の展開となった。

「お、おい、騎士団長が押されているぞ……?」

「まさかあの幼女の方が強いのか……?」

「「「ラブリー、ラブリー、イリス様!!」」」

「「「ラブリー、ラブリー、イリス様!!」」」

ランスロットたちの声援にも熱が入る。

(くっ……マズい、これはマズいぞっ! 密かにバフをかけてもらっていながら、この力の差っ! しかも徐々にバフの効果は下がっていく……っ!)

バルバスは大いに焦った。

このままでは敗北を喫してしまう。

だがそのときだった。

突然、身体が軽くなったかと思うと、今まで捌くだけで必死だった相手の猛攻が、驚くほどゆっくり見えるようになった。

身体中から湧き上がる力。

そして信じられないほどの全能感。

(何だこれは? バフなのか? だがこれまでとは桁違いだ!)

幼女の攻撃をいとも簡単に躱すバルバス。

「っ?」

急にこちらの動きがよくなったことに相手が驚いている。

(はははっ! こんな強力なバフをかけることができるなら、最初から使ってくれたらいいものを! しかし助かった! これなら倒すことができる!)

――仲間の支援術師たちに感謝するバルバスだったが、実はこのバフは彼らによるものではなかった。

(よし、これなら勝てそうだな。イリスには悪いが、さすがにここで優勝させては為にならない。自惚れは身を滅ぼすからな。……うん、あくまで彼女のためだから)

そう、リオンがこっそりと支援魔法を使っていたのである。

もちろんバルバスが支援魔法を受けているのを見抜いていたが、それをルール違反だと咎めるどころか、むしろ好都合とばかりに利用した形だ。

ちなみに治癒士系統のクラスⅢ【 聖者(セイント) 】を極めたリオンの支援魔法の効力は、一般人を国一の戦士にするほど。

元から国を代表する戦士であったバルバスが強化されれば、その強さは大災害級の魔物すら討伐できるほどだろう。

「いりす! がんばれ!」

イリスが苦戦し始め、リオンの隣でアルクが応援している。

(……悪い。後で美味しいものいっぱい食べさせてやるから許してくれ)

その後、リオンの期待通りにバルバスが勝ち、イリスは敗北を喫したのだった。