作品タイトル不明
第5話 どうやら今世でも同じみたいだ
ジョブの取得には、種族レベルが上がることでしか入手できないジョブポイントが必要だ。
そのため自ずと取得できるジョブの数には限りがある。
このジョブポイント、入手量には個人差があった。
普通、レベルが一つ上がった際に手に入るのは5ポイント程度。
そしてたまに10ポイントや20ポイントの者がいるくらい。
ジョブにはクラスがあって、初級職のクラスⅠなら取得に100ポイントが必要だ。
中級職とされるクラスⅡは400ポイント、上級職のクラスⅢは2000ポイントと、クラスが上がるにつれて要求されるポイントも上がっていく。
種族レベルは最大で100であるため、レベルアップの際に25未満のポイントしか取得できない人は、頑張ってもクラスⅢを取ることはできない。
だがリオンは1ランク上がれば100ポイントを入手することができた。
だからこそ、四つの系統のジョブを最高位のクラスⅢまで取得できたのである。
「どうやら今世でも同じみたいだ」
レベル3の段階で300ポイントが入っているということは、一度のレベルアップで100ポイントを得ることができるということ。
ちなみに系統ごとに整理すると、リオンが取得してきたジョブのクラスは次のようになる。
剣士系統
クラスⅠ【 剣士(ソードマン) 】
クラスⅡ【 剣闘士(グラディエーター) 】
クラスⅢ【 剣聖(ソードマスター) 】
魔術士系統
クラスⅠ【 魔術士(メイジ) 】
クラスⅡ【 魔導師(ウィザード) 】
クラスⅢ【 大魔導師(グランドウィザード) 】
治癒士系統
クラスⅠ【 治癒士(ヒーラー) 】
クラスⅡ【 回復術師(リカバラー) 】
クラスⅢ【 聖者(セイント) 】
盗賊系統
クラスⅠ【 盗賊(シーフ) 】
クラスⅡ【 怪盗(ファントム) 】
クラスⅢ【 盗賊王(キングシーフ) 】
リオンが取得したものはすべて、上記のように四つの系統で綺麗に分類できた。
しかしジョブの中には、 派生(エクストラ) ジョブと言って、系統外のものも存在していた。
例えば、
【剣士】と【魔術士】をマスターして解放される【魔法剣士】(クラスⅡ)
【 騎士(ナイト) 】と【 神官(プリースト) 】をマスターして解放される【 聖騎士(パラディン) 】(クラスⅡ)
【魔術士】と【治癒士】をマスターして解放される【 賢者(セージ) 】(クラスⅡ)
といった具合だ。
リオンは【魔法剣士】や【賢者】になることもできた。
だが前述のジョブをすべて取るのに必要だったのが、きっちり10000ポイント。
余分がなかったので、寄り道をせずに取り進めていったのである。
しかし新たに10000ポイントあれば、前世で諦めたジョブを取ることも可能だろう。
「……どうしよう」
一度ジョブを取ってしまうと、やり直しが利かない。
しっかり考えなければ。
「ひとまず教会に行ってくるか」
教会に行けばジョブツリーを見せてもらえるので、それを確認しながらじっくり検討したい。
ジョブの取得も教会でないとできない。
神官系統のジョブが覚える特別なスキル〝祈祷〟が必要なのだった。
「スーラ。また出てくるけど、お留守番よろしくな」
理解しているのかいないのか、スーラはただぷるぷると震えた。
「おい、お前! 勝手に帰ってんじゃねぇよ!」
屋敷を出たところで、ちょうど兄と出くわしてしまった。
ほんと、いつも怒ってんな、とリオンは内心で呆れた。
「聞いてんのかっ?」
「そんな大声だし、聞きたくなくても聞こえるんだが」
「ああっ? お前、何だその口の利き方は!」
言われてリオンは気がつく。
確かに前世の話し方をしてしまっている。
(えっと、いつもの口調はどんな感じだったっけ?)
記憶を取り戻した直後のせいか、今世の自分のことが曖昧になっていた。
頑張って思い出そうとしていると、
「さっきから生意気なんだよっ!」
スネイルがいつものように殴りかかってきた。
避けるまでもないだろう。
そう判断したリオンは兄の拳をそのまま顔面で受けた。
蝿がぶつかってきた程度の痛みが走る。
要するに痛くも痒くもない。
――〝倍化反射〟発動。
「ぼがっ!?」
「あ」
いきなり兄が吹き飛んだ。
(しまった。カウンタースキルが発動すること忘れてた)
しかも、倍化反射は二倍にして跳ね返すというものだ。
ただし反射できるダメージ量には上限があり、それは魔王クラスの一撃の前では微々たるものでしかないが。
兄は自分の放った倍の威力のパンチを受けた結果、白目を剥いて伸びてしまった。
「おーい、生きてる?」
「……」
返事はないが、息はある。
どうやら気絶しているだけらしい。
ただ、ちょっと鼻が曲がっていた。
完全に自業自得なので放っておいてもよかったのだが、さすがにそれもどうかと思い、リオンは回復魔法で治療してあげることにした。
「スネちゃま!?」
そのとき甲高い悲鳴が聞こえてきた。
視線を転じると、そこには四十がらみの女性が顔を真っ青にして立っていた。
兄・スネイルの母――リオンから見たら嫡母である――であるスザンナだ。
血相を変えてこっちに走ってくる。
タイミングが悪いなと、リオンは溜息を吐いた。
「スネちゃま! 大丈夫ざますのっ?」
リオンを押し退け、兄に縋りつくスザンナ。
面倒だし、今のうちにこっそり立ち去ろう――
「待つざます! スネちゃまに何をしたざますっ!?」
――としたリオンだが、呼び止められてしまった。
「……何もしてません。兄上が突然、勝手に倒れただけです」
白を切ることにした。
「そんなはずはないざます! スネちゃまがお前に近づいていくところを見ていたざます! あんなふうに急に転倒するなんてあり得ないざますよ! お前が何かしたざますねっ!?」
しかし完全にリオンがやったと決めつけてくる。
実際その通りではあるのだが……それ以前に、殴りかかってきた兄が悪いだろう。
だがそんな言い分が彼女に通じるはずもなかった。
なにせリオンのことを蛇蝎のごとく嫌っていて、いつも何かあるたびにリオンのせいだと喚いているのだ。
兄がした悪戯だって、リオンがしたことになってしまう。
「許さないざます……っ! 妾の子の分際で……! やっぱりとっとと追い出しておくべきだったざますわ! 我が家に置いてここまで育ててやったというのに、この恩知らずめ……っ!」
わなわなと握った拳を震わせ、スザンナは金切り声で叫んだ。
このまま放っておくと、延々と叱責が続くのは間違いない。
そして今までのリオンであれば、それを我慢して大人しく聞いていただろう。
だが、
「用事があるので、その話なら後にしてくれませんか?」
「……へ? ちょっ、待つざますっ!」
スザンナの制止の声を無視して、リオンは屋敷を出た。