軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話 変な夢を見たぜ

ファフニールが高らかに嗤った。

「フハハハハッ! 我ハ、死ヲ超越シタノダァァァッ! モハヤ、イカナル攻撃モ、効カヌゥゥゥッ!」

(死を超越……。なるほど)

つまりアンデッドになったということかと、リオンは理解する。

道理で痛みを一切感じていないわけだ。

アンデッドモンスターというのは、手や足、場合によっては頭部が吹き飛んでも動き続ける。

なので完全に破壊するしかない。

ただ高位のアンデッドであれば、時間が経つと修復してしまうこともあった。

「だが馬鹿になっていて助かった。自分から弱点を教えてくれるとは」

「ナニ?」

「――セイクリッド・パニッシュメント」

アンデッドには浄化魔法。

リオンが極めた治癒士系ジョブにとっては専門ではない。

それでも最上級の【聖者】まで到達すれば、それなりの浄化魔法は習得できる。

「ギアアアアアアアッ!?」

めちゃくちゃ効いた。

ファフニールは分かり易く激痛に悶え始め、実際、身体がボロボロと崩れていく。

「ナ……何故ダ……何故、浄化魔法マデ……使エル……」

「今度こそ安らかに眠れ」

◇ ◇ ◇

ゼタは目を覚ました。

周囲を見回すと、そこは見慣れた部屋だ。

鍛冶工房の奥に設けられた生活空間であり、いつの間にかベッドで眠っていたらしい。

寝たときの記憶がないが、恐らくぶっ通しで作業をしていて、そのままベッドに倒れこんだのだろう。

「にしても変な夢を見たぜ……」

身体を起こしながら嘆息する。

変な少年に連れられ、ダンジョンに潜る夢を見ていたのだ。

最高到達記録とされる二十階を優に超えた四十階層まで進み、超希少なアダマンタイトを採掘。

さらには未だ存在すら知られていないダンジョンのボスに遭遇したのである。

「色々と妙にリアルだったが……まぁ夢に違いねぇよな。こりゃちょっと疲れてるのかもしれねぇ」

夢以外にあり得ないはずだ。

そう自分を納得させつつ、ゼタはベッドから起き上がる。

と、そこで気づいた。

テーブルの上に置かれている大きな鉱石に。

「あ、あ、あ、アダマンタイト!?」

さらにその横にメモが添えられていた。

『これで剣を打ってください。代金は言い値で支払います。――リオン』

「ゆ、ゆ、夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

彼女の絶叫は工房から数百メートル離れた場所でも聞こえたという。

◇ ◇ ◇

アダマンタイト製の剣が手に入った。

(うん、悪くない)

漆黒の刀身を天に掲げて見ながら、リオンは満足そうに心の中で呟いた。

ファフニールを浄化させてから一週間。

リオンはゼタが打った剣を受け取りにきていた。

「あとはこれに色々と付与して、と」

リオンは付与魔法を使い、新しい剣に全属性攻撃力強化、自動修復、不壊性能、劣化防止などを付与していく。

並みの金属では耐えきれない数の付与も、アダマンタイトなら問題ない。

「ちょ、ちょっと待て! テメェ一体、その剣に何をした!? なんかさっきより輝いてんだが!?」

「ちょっと軽く強化しただけだよ? 全属性攻撃力強化とか、自動修復とか、不壊性能とか、劣化防止とか」

「いやいや、それもう国宝級の魔剣とか神剣のレベルじゃねぇか!?」

「このくらいじゃ神剣には程遠いと思うけど。そんなことよりお姉ちゃん、代金は幾ら?」

「……金は要らねぇよ」

ゼタは疲れた顔で言った。

「え? 要らない?」

「むしろお釣りが出まくって困るぐらいだっての! あの塊いくらすると思ってんだ!」

ゼタに渡していたのは、それ一つで剣が五、六本は作れそうな大きな塊だった。

余ったアダマンタイトを代金の一部にするつもりだったリオンだが、それだけでゼタが今まで稼いできた額を上回るほどの価値があるだろう。

もし誰かに知られでもしたらとんでもないことになるからと、ゼタは残りを床下倉庫の奥に仕舞い込んでいた。

「ところで、北のダンジョンが攻略されたって聞いたんだが……」

「うん。ボスを倒しちゃったからね」

「やっぱあれを倒したのかよ……」

ゼタは眠らされたため途中からの記憶はないが、恐ろしいボスモンスターが現れたところまでは覚えていた。

あんな化け物を十歳かそこらの子供が単身で倒してしまうなど、普通なら絶対に信じられない話ではある。

だが目の前の少年ならそれくらいやってしまうだろうと、ゼタは呆れながらも思う。

「これからこの町の冒険者は減っちまうだろうな」

ボスが倒されたとなると、ダンジョンの魔物は一気に弱体化し、さらには新たな魔物が生まれにくくなる。

そしてダンジョンそのものも崩壊へと向かっていく。

今後、冒険者の多くが拠点を移し、ギルドも規模が縮小されることだろう。

そうなると必然的に鍛冶師の需要も少なくなってしまう。

「それにしてもテメェ、一体何もんなんだ……? その強さ、まるで伝説の勇者じゃねぇか。実は勇者の生まれ変わりだって言っても信じちまうぜ」

「…………勇者ナニソレ美味シイノ?」

「なんだ今の不自然な返しは!? まさか本当じゃねぇだろうな!?」

「ソンナワケナイヨ、オ姉チャン」

リオンは嘘を吐くのが苦手だった。

ただメンタルは図太いので、下手な芝居を貫くことができた。

「はぁ、もういいや」

結局、根負けしたゼタが諦めたように息を吐き、追及を諦めたのだった。

ダンジョンを攻略したことをリオンはギルドに報告しなかった。

というのも、さすがの彼にもそれがこの時代では目立ち過ぎることだと理解できたからだ。

当然ながら、攻略者が一体誰なのか皆が知りたがり、しばらくその話題で持ちきりとなった。

「実は俺だ! って言ったらどうする?」

「ないない。Dランク冒険者のお前ごときが攻略できるわけねぇだろ」

「てか、マジで一体誰なんだよ。やれるとしたら上級冒険者のパーティだろうが……」

「一番近いのはリベルトにいるあのパーティか」

「けど、彼女たちがこの町に来たなんて話すら聞かねぇしな……」

各々好き勝手に推理しているが、答えに辿り着けるものは誰もいなかった。

ただ、中には薄々勘づいている者たちもいて、

「なぁ、ニーア。あの規格外ボウズ、無事に冒険者になったどころか、すでにDランクに昇格したって聞いたが……まさか……」

「私も同じことを考えていたわ……」

「ねぇ、ユーリ。あの子が北のダンジョンに潜るのを見た人がいるみたいだけど……もしかして……」

「ええ、私も同じことを考えていました……」