軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 どうだこの剣の斬れ味は

屋敷を出てしばらく行くと、町の広場に出た。

そこで待っていたのは、兄スネイルと歳が近く、よくつるんでいる連中だ。

ちなみにスネイルは十五歳である。

「よお、待たせたな。こいつがトロくて遅くなっちまった」

「いや、俺らも来たばっかりっす」

「魔物狩り、楽しみっすね! またスネイルさんが大物を狩るとこ、見てみたいっす!」

彼らは領主の息子であるスネイルには逆らうことができないため、友人というより子分と言った方がいいかもしれない。

そんな彼らと比べても十二歳のリオンは小柄で、この中では断トツで貧弱だった。

「それで、今日はどこに行くんすか?」

「西の森だ」

「に、西の森?」

スネイルの言葉に子分たちが驚く。

「だ、大丈夫っすかね? あそこは結構な数のゴブリンがいるって話っすよ?」

「大人から西の森には近づくなって言われてますし……」

「はっ、ゴブリンなんか何匹いようが怖くねぇよ。それにこれ、見ろよ」

スネイルは腰に提げていた剣を抜いた。

美しい刀身が陽光を浴びてきらりと輝く。

素人のリオンでも業物の剣だとすぐに分かるほどの煌めきだった。

兄が自慢げに見せびらかすほどであるし、間違いないだろう。

「おおっ、なんか凄そうな剣っすね!」

「そりゃそうだ。なんたって、あの伝説の勇者が使ってた世界一の剣なんだからな」

「マジっすか?」

「すげぇ!」

「さすがスネイルさん!」

本当かどうか怪しい話だったが、機嫌を損ねると酷い目に遭うことが分かっているので、誰も疑う素振りは一斉見せない。

「けど、何で勇者の剣が?」

「なんでも昔、この辺りにヤバい魔物が現れたみたいでよ。それを勇者が打ち倒したらしいんだが、その際にうちの先祖が一緒に戦ったそうだ。なんと勇者も驚くような活躍ぶりだったらしいぜ! この剣はその褒美として貰ったんだとよ」

「へぇ!」

「それは凄いっすよ!」

そもそも世界一の剣なんて、褒美で誰かにあげたりしないだろう。

もちろんそんなことを指摘できる者はいない。

「こいつがあればゴブリンどころか、オークだって倒せるぜ!」

結局、意気揚々のスネイルに従って、彼らは西の森へと行くことになった。

その名の通り町の西にある森だ。

(だ、大丈夫かな……?)

ゴブリンは確かに弱い魔物だ。

ちゃんとした装備さえあれば、子供でも倒せるくらいである。

しかし森では徒党を組んでいることが多く、数によっては大人の戦士でも苦戦するという。

だから西の森に近づく人はあまりおらず、子供だけでなどなおさらだ。

不安を覚えるリオンだったが、彼には大人しく後を付いていくことしかできなかった。

「おらっ」

「ギャッ!?」

スネイルが振るった剣がゴブリンの胴体を斜めに両断する。

ゴブリンは赤黒い血を噴き出しながら地面に倒れこんだ。

「はっ、どうだこの剣の斬れ味は」

「マジでパネェっす!」

「ゴブリン真っ二つとか、町の衛兵でも無理なんじゃないっすかね!」

剣を掲げてスネイルが決めポーズを取ると、取り巻きたちがここぞとばかりに賛辞を浴びせる。

リオンたちは西の森の中にまで立ち入っていた。

確かにゴブリンが多くいるようで、さっきから引っ切り無しに現れている。

〝はぐれ〟なのか、今のところ単体ばかりだった。

スネイルが自慢している通り、伝説の勇者が使っていたという剣は、その名に相応しい性能のようだった。

スネイルは同年代の中では大柄な方で、力も強いが、それでも普通の剣ではゴブリンを一刀両断するなんて真似はできなかったはずだ。

子分たちも今までスネイルに連れられて何度も魔物狩りをしてきただけあって、さすがにゴブリン程度に後れを取ることはなさそうだ。

これならたとえ群れに遭遇しても大丈夫かもしれないと、リオンは心の中で安堵する。

ちなみにリオンは荷物持ちという役割通り、本当に荷物を運んでいるだけだ。

チビで非力だし、まともに剣も握ったこともないので、戦闘には参加させてもらえなかった。

(したくないけど……怖いし)

「ギギギッ」

「ギャギャギャ!」

複数のゴブリンが姿を現したのはそのときだった。

一匹や二匹ではない。

十匹……いや、もっと多いだろう。

「む、群れだっ!」

「狼狽えるんじゃねぇよ! オレが全部ぶった斬ってやる!」

「「「ギギャギャギャッ!」」」

悍ましい叫び声を上げながら、一斉に襲いかかってくるゴブリンの群れ。

それをスネイルたちが迎え撃った。

リオンは慌てて木の陰に身を隠す。

後は目の前で繰り広げられる激しい攻防を、息を潜めて見守ることしかできない。

数ではゴブリンが勝っていたが、それでも個々の力で勝るスネイルたちが優勢だ。

特に一振りで確実に一匹を仕留められる彼の活躍で、見る見るうちに形勢がさらに有利になっていく。

「……え?」

そのときあるものに気づいて、リオンは自分の目を疑った。

正面に茂る草木の向こう。

そこに身の丈二メートルに迫る大きなゴブリンがいたのだ。

一瞬、目の錯覚か何かかと思ったが、違う。

確かに通常の何倍もの大きさのゴブリンが、悠然とこちらに向かって歩いてくる。

他のゴブリンたちとの戦いに夢中で、まだ誰も気づいていない。

リオンはすぐに注意喚起しようとしたけれど、その大きなゴブリンと目が合ってしまい、声が出なくなった。

「ウゴアアアアアアッ!」

代わりに兄たちにその存在を気づかせたのは、巨大ゴブリン自身が上げた雄叫びだった。

「なっ……」

「お、オーガだとぉっ!?」

どうやらゴブリンではなく、オーガだったらしい。