軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第117話 服の中に隠れてるなら構わないぞ

素材をギルドに買い取ってもらったリオンは、依頼ボードのところへと足を運んだ。

シルヴィアに憑依され、大人しくなった少年も一緒に付いてくる。

「いや、どこか適当なところに置いてきてくれ」

「分かりました!」

少年が立ち去るのを見送って、リオンは貼りつけられた依頼をざっと見回してみた。

「何か面白そうな依頼はないかな?」

やはり交易都市だけあって、旅商人の護衛依頼が多いようだ。

報酬も悪くないが、この手のものは拘束時間が長いため、リオン的には稼ぎ辛い依頼だ。

そんな中、変わった依頼を発見した。

【料理大会の売り子】

料理大会での売り子兼護衛を募集しています。女の子希望(男は要相談)。実力よりも容姿優先します。

「……料理大会?」

リオンは首を傾げた。

聞いたことのないイベントだ。

百年前にはなかったものだろう。

いずれにしても、この依頼自体はリオンには用のないものだった。

下級冒険者向けらしく、報酬額も低い。

結局、幾つか討伐系の依頼を受注することにした。

どれも上級冒険者向けのものだったが、すでにリオンの冒険者ランクが知れ渡ってしまったのか、先ほどとは違う受付嬢であるにもかかわらず、すんなりと受理してくれたのだった。

「なるほど、これが料理大会か」

その日の夜。

宿に戻ってきたリオンは、街で入手したパンフレットに目を通していた。

簡単に言えば、料理の売り上げを競う大会らしかった。

主催はバルバラ飲食店ギルド。

参加資格があるのは、飲食店ギルドに未登録の者、言わばアマチュアの料理人だ。

バルバラには料理人を志す者が多く集まってくる。

そして彼らの夢は飲食店ギルドに所属することだ。

この街では、屋台などの経営は簡単に許可が下りるものの、飲食店を持つためには飲食店ギルドの一員になる必要があった。

そのためには難しい審査を通過する必要があるのだが、この料理大会で優秀な成績を収めることができれば、無条件で飲食店ギルドへの所属が許されるという。

言わば、新人料理人たちのための登竜門とも言える大会なのだった。

「入賞者にはかなり高額な賞金が出るんだな。要するにこのお金を開業資金にしろってことか」

無論たとえ入賞したとしても、必ずバルバラの飲食店ギルドに属しなければならないわけではない。

この大会で好成績を残したという実績を持って、他の国や街で店舗を経営する者も少なくないという。

「面白そうだな」

「「おいしそう?」」

「いや、面白そう、だ」

食べることしか頭にない双子だが、リオンはそうではない。

「機会があればもっと色々と試してみたいと思っていたんだ」

旅での料理には慣れているリオンであるが、さっと作ってさっと食べてさっと寝るのが基本だった。

そのため凝った料理は作れないし、レパートリーもあまり多くない。

入賞すれば賞金も貰えるようなので、この大会は一石二鳥の機会と言えた。

もちろん料理ギルドに入る気はないが、だからといって出場してはいけないという決まりはないようなので構わないだろう。

「ただ、やっぱりジョブが必要だよな。やるからには入賞、いや、優勝を目指したいし」

料理人の多くは、調理士系統のジョブを取得している。

その差を努力で覆すのは不可能ではないかもしれないが、大会が迫る今、そんな余裕はなかった。

幸いジョブポイントは余っているし、リオンはクラスⅠの【 調理士(コック) 】を習得することができる。

戦闘にはまったく役立たないと思われるが、今の世界でこれ以上の強さが必要になることはないだろう。

「しかしその前に【従魔王】をレベル20まで上げないとな」

聖王国で取得したばかりなので、まだレベル5だ。

「メルテラ、しばらく二人を任せていいか?」

「構わぬが……どうするつもりじゃ?」

「ちょっとジョブのレベル上げてくる」

ジョブのレベルを上げる方法は、大きく分けて二つある。

一つ目は種族レベルを上げる方法と同じで、魔物を倒すこと。

これは効率こそ落ちるものの非戦闘系のジョブにも当てはまり、強い魔物であればあるほど、倒すことで大きくレベルが上昇することになる。

二つ目はそのジョブに相応しい訓練を積むこと。

例えば剣士系統のジョブならば剣を振り続ければ、魔物を倒さなくてもレベルが上がっていく。

従魔士系統のジョブならば、特に、従魔を増やす、従魔のレベルを上げる、従魔を進化させる、といったことが、ジョブレベルを上げる要因となっていた。

なので、従魔たちを連れていくという選択肢もなくはなかったが、

「効率を考えると恐らく一人の方が早そうだからな」

「すーらもなのー?」

「服の中に隠れてるなら構わないぞ」

というのも、これからレベル上げを行おうとしている場所が、今の双子でも付いて来れないようなところだからだ。

強力な魔物を倒して倒して倒しまくる。

シンプルに一つ目のレベル上げ方法だけで、【従魔王】をカンストさせてしまおうというのである。

リオンはその場所へと辿り着いた。

それは、荒野のど真ん中に、ぽっかりと開いた巨大な穴。

「あれから百年経っているんだな」

――〝奈落〟。

かつてこの最奥に魔王城があった、世界最難関ダンジョンだ。