軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八話

ようやく休めることとなり、私はすやすや寝た。

普通なら異世界転移なんてしてしまったら、不安やなんやかやでこんなに眠れるものではないだろう。が、私は疲れていた。

ザイラードさんにきれいな部屋に案内され、あたたかいお茶を飲み、体を清潔にし(シャワーがあった!)、ふかふかのベッドへ体を横にしたら、もう意識がなかった。ほぼ気絶。

だから、これは夢なのだろう。

私の意識はふわふわと漂っていて、そこへ声が聞こえた。

男性とも女性ともいえない、不思議な高さの声。

『この世界はどう?』

どう? どうとは?

『元の世界へ帰りたい?』

帰りたいとかは今はないな。キイチゴ摘みと魚釣りがしたいし、なんならほかのこともしたい。

『そう。前向きだね』

声がふふっと笑った気がする。

『元の世界の家族や、ほかのことは心配しなくていいよ。こちらに来てもらったのだから、その分、あなたに関わるものは幸運を手に入れた。それぞれが生きていくはずだよ』

それならよかった……かな。

『あなたの能力の発現もおもしろいし、こちらに来てくれて助かったよ』

すると、そこまで話していた声がすこし暗くなって……。

『問題はあの子かな。あなたもいやな気持ちになっただろう?』

いや? というわけではないけれども。そこまで関わってない。

ただ、最後にこちらに敵意剥きだしだったので、その視線はやっぱり疲れた。人に敵意を向けられると、心がじわっと削られる感じがするよね……。

『あの子にも説明はするから。そこからどう動くかは、あの子次第だけれど、あまり酷いようなら……』

声はそこまで言うと、だんだんと遠くなっていった。

『今後、こうして声を届けることはないけれど、ずっと見守っているよ』

消えていく声。

ぼんやりと聞いていたから、深く考えていなかったけれど……。どこか温かな雰囲気だ。

……神様みたいなものなのかな?

なんとなくそう思った。

『ああ。この世界をよろしく』

……いや、そのよろしくはない。

そんな大きなものに対してよろしくするような人間ではない、私は。

が、もう、声が返ってくることはなくて――

「……変な夢だったな」

意識がゆっくりと浮上していく。

眠りから覚めた私は、ベッドの中で軽く体を伸ばした。

異世界転移して、かっこいい騎士団長さんに手を取られ、ドラゴンや大きな狼を小さくしてしまうなんて笑える。

仕事で疲れすぎると、きっとおかしくなるんだな。うん。

「メガサメタカ?」

「オキタ?」

聞こえてきた二つの声。一つは低めで、もう一つは男の子みたい。

え。なにこの声。

驚いてパチリと目を開ける。すると――

「オハヨウ!」

「オハヨウ!」

「……夢じゃなかった」

夢だけど、夢じゃなかった……。

目が覚めて見えたのは、小さなドラゴンと、ふわふわの白いポメラニアン。二人の青い瞳と赤い瞳がそれぞれ私をじっと見ている。

「おはよう……」

挨拶を返せば、その瞳がうれしそうに細まる。かわいい。

どうやら私はこの二人を抱っこしたまま寝たようだ。

すべすべの鱗と、ふわふわの毛皮と。両方の感触が伝わってくる。気持ちいい。

そっかぁ、私はやっぱり異世界に来てるのかぁ……。

「まあ、そこそこ生きるか」

よくわからないが、思ったよりもショックはない。

寝る前は疲れていたせいだと思うが、すやすや寝た今も、心配や不安や元の世界のことが心残りというようなことはなかった。

あまり覚えていないけれど、温かな空間にそういうのは置いてきたような気がする。

「オレ、ズットイッショ」

「ボクモ! ズットイッショ」

抱きしめた二人のうれしそうな声。それのおかげもある。

魔物をペット化する能力が目覚めたわけだが、二人が一緒にいてくれるならいいかもしれない。

「二人ともかわいいね」

へへっと笑って、それぞれの頭を撫でる。

気持ちよさそうに目が細くなるから、こういう表情もたまらなくかわいい……。一人暮らしだったから、自分になにかあったとき責任も持てないし……と動物を飼うことはしていなかったが、こんなにかわいいんだな。

初めての感覚に胸がほわっと温かくなった。

「って、もしや今夕方?」

二人を見ていた視線を窓へと移す。

窓の向こうの空はオレンジ色に染まっていた。

まずい。異世界初日から昼夜逆転。

すると、扉をコンコンとノックされた。

「ザイラードだ。話ができそうか?」