軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十五話

契約解除を申し出た私。

どうなったかというと、まあいつも通りだ。異世界二日目にして、いつも通りがあるのはどうかと思うが、いつも通りだ。

ピィピィピィ&クーンクーン。きゅるん&うるうる。気づけば私は「かわいい……かわいい……」と呟きながら、レジェドとシルフェを抱きしめていた。

……契約解除なんてできなかったよね。

重要事項説明書も甲乙甲乙甲甲乙も紙面にサインもしていないわけだが、かわいいとかわいいの前に私にできることなんてない。クーリングオフ? なにそれ。

「ほら、訓練に戻れ」

私の姿を遠巻きに見ていた騎士たちが、ザイラードさんに促され、離れていく。

「救国の聖女様は奇跡を起こせるのだな」とか「あの光は聖なるものに違いない」とか「元魔物らしいが、今ではすっかり懐いているんだな、さすが救国の聖女様」だとかを言い残していった気がするが、私には聞こえていない。聞こえていないよ。

「トール、スキ!」

「トール、スキダヨ!」

「うん……うん……」

私の人生において、こんなにもまっすぐに好意をむけられたことがあるだろうか。いやない。

じゃあいいじゃない。光っても。PCだって光るんだし。ゲーミングPCと同じだと思えば……。ゲーミングPCと同じってなんだよって心は言っているが、いいじゃない。まだ七色に光ってはないしね。

「光るとなにかあるのか?」

かわいさにすぐに屈した私と違い、ザイラードさんはやはり根気強い。忍耐力がある。『光ってもいいか、かわいいし』という結論に達し、尋ねることを放棄した私に代わり、レジェドとシルフェに聞いてくれている。

たしかに。光るとどうなるんだろう。

「トール、ツヨクナル」

「トール、ツヨクナルヨ!」

「私、強くなる」

なるほど?

「ボクノチカラ、ワタシタヨ! 『エイッ!』ッテ、ヤッテミテ?」

「えい……?」

えいとは? そして、あの体が光ったのは力を渡したってことだったのか?

首を傾げる。すると、シルフェが腕の中でもぞもぞと動いた。

あ、これは下ろして欲しいってことかな?

左手で抱えていたシルフェを地面に下ろす。

地面に下りたシルフェはとことこと森に向かって歩いて行った。そして、一本の木に前足を振り下ろす。

といってもあれだ。そこは白くてかわいいポメラニアンである。「えい❤」みたいな、なんていうかこう、小さなかわいい生き物が前足でちょこんと木に触れて離した感じなんだけども。

――ズジャアアァッ!!

木が粉砕した。え?

「なにこれ」

「圧縮ダヨ!」

「圧縮……」

木って圧縮できるの? そしてなぜ、圧縮したら粉砕したの? こわい。

「そうか、シルバーフェンリルは空間を操る能力に長けていると聞いたことがある。触れた瞬間に急激に圧縮し、離したときに急激に元に戻る。すると、物体は耐えられずにこうなるのか……」

私がドン引きしている間に、ザイラードさんは手を顎に当てて考え込んでいる。そして、どうやらシルフェがやったことを理解しているらしい。

話を聞いている私はちょっとわからないが……。いや言っていることは理解できなくもないが、それをこのかわいい生き物がやったというのが信じられない。

しかも――

「トール! イッショニ!」

私がお誘いを受けている。

「一緒にって言われても……」

「コッチ、コッチ!!」

シルフェが違う木へと移動して、私を呼ぶ。

ぴょんぴょんとその場で跳んでいてかわいい。かわいいから行くけれども。

「シルフェ、私はそういうのできないと思うよ?」

「ボクノチカラ、ワタシタヨ! デキルヨ!」

赤いうるうるの瞳が自信満々に私を見上げている。かわいい。かわいいからやってみるけれども。

「じゃあ、一応ね」

「ウン! 『エイッ!』ダヨ!」

「オッケオッケー。はい。『えい』」

やる気などなかった。できるとも思ってなかった。

だから、私はただ木に触れて、すぐに離しただけ。一応、やる気のない『えい』も添えておいた。すると――

――ズジャアアァッ!!

はい。粉砕。

……。

うそだぁ……。

「ざ、ざざ、ザイラードさん……!?」

私は狼狽え、身元引受人へ助けを求めた。