軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十一話

よくわからないが、いろいろとめんどくさいことが起こっていることは理解できる。

額に手を置いたザイラードさんは話を続けた。

「今、我が国は王子が三人いる。王がまだ王太子を決めていないのだ」

「……えっと、第一王子が王太子というわけではないということですか?」

これは私の感覚だが、一番最初に生まれた男児が王太子になるというイメージがある。だから、第一王子と聞いたときに、次期トップだと思ったのだが、そうではないのかな?

「ああ。王が後継者を決め、その者が王太子となる。それは王族であればだれでも可能だ」

「なるほど」

「そして、今、王太子として考えられているのは二人。第一王子と第二王子だ。第三王子はまだ三歳と幼いため、ほぼないだろうと言われている。まあ、普通は第一王子が王太子となることが多いんだが……」

ザイラードさんは、再びはぁとため息を吐いた。

「どこに出しても恥ずかしく育ってしまってな……」

声に滲むに徒労。苦くて渋い。

「知能もなければ、運動能力もない。判断力も観察力も劣っている。さらに内面も忍耐力がなく、すぐに地位を笠に着る始末」

……ザイラードさん。

「唯一あるのは行動力なんだが……」

「あ、それで、この騎士団まで来たということですね?」

「ああ。俺がレジェンドドラゴンが来たことを王宮に報告しろと部下に伝えた。そして、部下は王宮へと連絡したのだろう。結果、第一王子が王宮軍を連れて、魔法陣で転移してきたわけだ」

「たしかに、行動力はありますね」

騎士団からの報告を受けて、すぐに自分も行く! となるのは、素晴らしい行動力だ。第一王子という立場を考えると、なかなかできることではない。

が、ザイラードさんはきっぱりと言った。

「そのせいで、いつも拗れる」

……うん。

「もはや、唯一の美点である行動力のせいで、より周りから反感を買っている状態だ」

「ああ……」

私はその状況を考えて、深く頷いた。

だれかが言ってたよね……。無能な働き者が一番困るって……。

「今回、第一王子は少女が救国の聖女であると報告している。もちろん、ほとんどの者はこれまでの第一王子の行動を鑑みて、その言葉を鵜吞みにはしていない。王宮軍は実際にあなたの力をその目で見ているから、そこからの噂の広がりも早いからな」

ザイラードさんの話を頷きながら聞く。

ここまで聞くと第一王子の評判は散々だ。美人な女子高生を王宮に連れて帰ったところでどうにかなるとは思えない。

が、険しいザイラードさんの表情を見るにそうではないのだろう。

「……やはり、救国の聖女というのは、求心力がある」

ザイラードさんは額に当てていた手を下ろし、私を見た。

「あの少女は見目が良かっただろう? そして、第一王子も見目だけはいい。その二人が揃っていると、ほんのわずかだが、王宮内にもこれまでとは違った風が吹きそうなのだ」

うん。人間、見た目が10割。世知辛い。

「これまではほぼ確実に第二王子が王太子になるだろうと言われていた。だが、もし少女が本当に救国の聖女ならば……特別な力を持つのならば、第一王子も王太子となる可能性があるのではないか? と」

うわぁ……拗れている。話に聞いた通り、第一王子は話を拗れさせている。さすが。伊達にきらびやかな衣装は着ていない。

「今後は、あの少女が果たして本当に特別な力があるのかどうかというのが、王位継承に関わりそうでな……」

「あー……それはまた……そうですか……」

めんどくさそうですね。

そう言おうとして、私は言葉を吞み込んだ。

なかなかバイタリティある女子高生だったし、一筋縄では行きそうにない。

特別な力……あるのかなぁ。とりあえず祈れば浄化するというのはなさそうだけども……。でも、本人がそう主張していれば、それを否定するのも難しいような……。

「そこで、問題はあなただ」

「え、私ですか?」

突然の話題の振られ方にびっくりする。

今、私に関わりありそうなことあったかな? めんどくさそうだなって思ってただけだけども。

「第二王子派が、あなたを取り込みたいと考えている」

「え……ええ……?」

「あなたが本物の救国の聖女であり、第二王子についていると示せれば、第二王子が王太子に近づくからだ」

「なるほど……」

それはまた……。

「すごく……めんどくさいです……」

今度は言葉を呑み込まなかった。

だって、それめんどくさすぎない? なぜ異世界の王位継承に巻き込まれなければならないのか……。しかも相手はあのバイタリティある美人な女子高生である。

第一王子と第二王子の戦いであったはずが、美人な女子高生VS疲れた会社員という図に変わっている。どちらが救国の聖女かなゲームで、勝者は王太子になれるわけだ。

……それ、私に得ある?

「得が……ないです……」

なさすぎる。

なぜ、キャットファイトせねばならぬのか。

「そうだろう。俺もあなたならそう言うだろうと考えた」

死んだ目になる私に、ザイラードさんは力強く頷いてくれた。

「あなたはここで暮らしたいと言っていただろう? キイチゴを摘んだり、釣りをしたい、と」

「はい」

「王宮に行くことも望んでいない、と」

「はい」

どうやらザイラードさんは私が眠る前に伝えていたことを覚えていてくれたらしい。

そして、その願いを叶えようと動いてくれたようで――

「そこで、あなたの後見人、身元引受人には俺がなろうと思う」