軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話 薬草採取と初めての舎弟

翌日、オーグさんのおかげで宿に泊まれた僕は、借りたお金を返すため、そして今日からの生活費を稼ぐ為に冒険者ギルドへとやってきた。

「ついに今日から僕の冒険者生活が始まるんだ!」

我知らず拳を握ると、僕は意気揚々と冒険者ギルドの中へ入っていった。

ギルドの建物に入った僕は、さっそく冒険者さん達が集まっている依頼ボードに向かう。

「ようドラゴンボウズ。今から依頼を探すのか?」

見知らぬ冒険者さんが話しかけてくる。

昨日の買取りを見ていた人かな?

冒険者ってフランクだなぁ。

「はい、まずはFランクの常設依頼から受けようと思います!」

「Fって……まぁそういうヤツもいるか。頑張れよ」

何か含みのある言い方だったけど、きっと新人は背伸びして上の依頼を受けたがるって意味なんだろうな。

依頼ボードの前に来た僕は、自分のランクであるFランクの依頼を探す。

一応Eランクの依頼も受ける事が出来るけど、最初は無理せず自分に合ったランクの仕事をしないとね。

「よし、これにしよう」

僕が選んだのは薬草採取の仕事。

報酬は10本1束で銅貨3枚だけど、この依頼は常設依頼っていういつも募集しているものなので、たくさん採取すれば採っただけ報酬に上乗せされる。

更にもうひとつ良い点として、この依頼には不達成ペナルティがないという事。

通常冒険者の依頼は達成期日があったり、依頼主の指定を守らないといけない。

だから身の丈に合わない依頼を受けた冒険者が依頼を達成できなくて、ペナルティを受けてしまう事が多々あるのだそうだ。

と、昨夜オーグさんが食堂で上機嫌に酒を飲みながら教えてくれた。

お金を貸してくれただけでなく、貴重な情報まで教えてくれるなんてなんて優しい先輩なんだろう。

だから最初に受ける依頼はペナルティのない常設依頼が良いとオーグさんからアドバイスを貰ったのだ。

薬草だったら田舎でポーションを作る時に良く採取していたので知っているのも良いしね。

「なぁ、お前それを受けるのか?」

振り返ると、そこには僕と同じくらいの年恰好の少年が居た。

少年は後ろに同じくらいの年齢の少年少女を連れている。

装備からして僧侶と魔法使い、それにもうひとりは身軽な格好だから狩人か盗賊かな?

「うん、薬草採取」

すると少年ははははっと笑いだす。

「おいおい、薬草採取なんて子供でも出来るぜ。お前も俺達と一緒で成人して冒険者になった口だろ?」

「じゃあ君達も?」

「ああ、俺はジャイロ、チームドラゴンスレイヤーズのリーダーだ!」

少年は拳を握り締めて自らの名を名乗る。

「ちょっとその名前はやめてって言ったでしょジャイロ!」

と、そこで後ろに居た魔法使いの少女が待ったをかけた。

「そうだよジャイロさん。さすがにそのチーム名は恥ずかしいよ」

「私もどうかと思う」

どうやら彼が名づけたらしいチーム名は不評のようだ。

「かっこいいと思うんだけどなぁ」

「お、分かるかお前! なかなか見所があるじゃねぇか! 俺の舎弟にしてやってもいいぜ!」

えっと、それは遠慮しておきます。

「とにかくだ、せっかく冒険者になったんだからよ、もっとバーっと派手に行こうぜ! 薬草採取なんてチマチマした仕事してたらいつまでたっても下級冒険者のままだぜ!」

「あはは……」

そんな事言ったら周りの冒険者さん達が怒らないのかなと思ったんだけど、むしろ逆で彼等はジャイロくんをもの凄く優しい眼差しで見つめていた。

そうか、皆夢にあふれた新人冒険者を応援してくれているんだなぁ。

「そして俺は噂の竜殺しを超えるのさ!」

「竜殺し?」

へぇ、そんな人が居るんだ。

「ああ、何でも昨日、ふらりとギルドに現れて、とんでもなく状態の良いドラゴンの買取りを依頼したらしいぜ」

「へぇ」

凄い人も居たもんだなぁ。

状態の良いドラゴンってどうやって倒したんだろう?

きっと僕の倒したグリーンドラゴンなんて比べ物にならないくらい綺麗な倒し方なんだろうな。

「しかもあまりにも綺麗な倒し方過ぎてギルドじゃ買取れなく、王都で貴族相手のオークションに出品する事になったんだとよ!」

凄いなぁ、貴族相手のオークションかぁ。

「男ならこのくらいビッグにならないとな!」

「そうだね」

「というわけで俺達は魔物退治の仕事をしてくるから、お前も薬草採取なんてチンケな仕事してないでもっとすげえ仕事探せよな!」

と、言うだけ言うとジャイロ君はギルドを出ていってしまった。

あれは彼なりの同期の冒険者への激励だったのかな?

「ご、ごめんねジャイロのヤツが好き勝手言って。バカだけど悪い人間じゃないのよ! 待ちなさいジャイロー!」

ジャイロ君の仲間の魔法使いさんが、わざわざ謝罪をしてくれてから彼を追いかける。

良い仲間だなぁ。

僕もチームを組むのもありかもしれないね。

「でも、今は受けた依頼を達成しないとね」

彼は彼、僕は僕だ。

頑張って薬草採取をするぞー!

ちなみに常設依頼だから、窓口で依頼の申請をしなくて良いのも楽で良いね!

「さーて採るぞー!」

森へやってきた僕は早速薬草探しを始める。

故郷では普通にやっていた事なのに、冒険者の仕事だと思うとなぜか特別な事のように感じるから不思議だ。

「薬草は日陰になった場所を探せばっと……ほらあった」

早速見つけた薬草を見つけると、ナイフを取り出して根元から切り取る。

このタイプの薬草は葉っぱが材料になるので根っこは残しておくとまた何度でも生えるからだ。

「お、あっちにもあった」

次々と薬草を見つけて採取していく。

「この辺りは薬草が多いなぁ、このペースなら規定数の10本だけじゃなく、借りた銀貨5枚分のお金もすぐに返せるかも!」

僕は薬草を採るのが楽しくなって夢中で集めていく。

故郷じゃあお店もなくて、薬草は村で使う為に集めていたから、売る為に集めた事はなかったもんな。

やっぱり自分の得になるから全然やる気が違うよ!

冒険者になって本当によかったなぁ!

「さーて、こんなもんで十分か」

けっこうな量の薬草を集めた僕はそろそろ町に戻ろうと考えていた。

魔法の袋があるから重さは感じないけど、あんまり遅くなると昨日の様に受付が混むからね。

と、その時だった。

突然森から音が消えた。

獣や虫の鳴き声、それに木々のさざめきまでも。

「っ!?」

こういう時は必ず何かが起きている。

前世で英雄をやっていた時も、周囲の音が消えた時には強大な魔物が現れたり、恐ろしい災害が起きたのだ。

そして予想通り、森の奥からバリバリと木々が倒れる音がした。

「あっちか!」

僕は森の奥に向かって駆けていく。

途中状況を確認する為に大きく跳躍しながら彼方に視線を向けると、森の木々を突き抜ける程巨大な魔物の姿が見えた。

「あれは、イーヴィルボア!?」

イーヴィルボア、それは巨大な猪型の魔物だ。

別名魔猪と呼ばれドラゴンと同じく伝説や英雄物語でたびたび姿を表す。

イーヴィルボアはドラゴンと違ってブレスも吐けないし空も飛べない。

けどもの凄い突進力で短距離なら馬より早く走るし、毛皮はとても硬くて柔軟なので、下手な武器じゃ傷も付けられない。

何よりドラゴン以上に人間の前に姿を表し、雑食だから何でも食べるので森の恵みも人間が耕した畑も滅茶苦茶に食い荒らしてしまうので、場所によってはドラゴンよりも恐れられている。

そしてこれが一番恐ろしい事なんだけど、イーヴィルボアは群れで行動するんだ。

「「「「ブフゥオォォォォン!!」」」」

そう、僕の視線の先に居るイーヴィルボアも、ご多聞にもれず群れで行動していた。

イーヴィルボアは興奮しているのか、森の中を全力で駆け抜けていた。

彼等が走るたびに足元の木々が小枝のように吹き飛ばされてゆく。

「いけない、このままだと町にぶつかる!」

イーヴィルボアがこのままの進路で進むと、一時間と経たずにトーガイの町にたどり着いてしまう。

「退治しないと!」

ギルドに所属する冒険者は町を襲う魔物と戦わないといけない。

これは冒険者の義務だ。

魔物の群れが現れた時、ギルドは一切の利益を考えず町の防衛のために戦う。

そうする事で荒くれ者の冒険者達は町や国との間に信頼を築いてきたんだ。

なにより、町を守るために命がけで戦う冒険者の物語を、僕達は幼い頃から聞いて育ってきた。

そして自分もそうありたいと願って、木の枝を武器に見立てて冒険者ごっこをする。

それは前世から変わらない子供達の憧れの姿だ。

「だったら、今度は僕が子供達の憧れにならないと!」

僕はイーヴィルボアの群れを殲滅する為、大規模魔法の準備を始める。

今度はグリーンドラゴンの時と違って素材の状態を気にする必要はない。

森を破壊しないように気をつけさえすればそれで良い。

と、思ったんだけど、そこで僕はふと違和感に気付いた。

「あのイーヴィルボア達、何かを追っている?」

そう、イーヴィルボアの動きはまっすぐじゃなかった。

時折何かを追う様に微妙に進路がずれるのだ。

「一体何を追っているんだ?」

視力を上げる遠見の魔法を発動させてイーヴィルボアの視線の先を見つめる。

そして丁度木々が途切れるスキマから、あいつ等の追っているものの正体が分かった。

「あれは、冒険者!?」

どうやらイーヴィルボアが追っていたのは冒険者だったみたいだ。

おそらく知らないうちにイーヴィルボアの縄張りに入ってしまったんだろう。

「となると大規模魔法は使えないな。巻き添えを避ける為に個別撃破するか」

そう決めた僕は、イーヴィルボアに向かって跳躍をしての移動を繰り返す。

イーヴィルボアに近づいていくと、連中が追っている冒険者達の姿も見えてきた。

「あれって確か……ジャイロ君!?」

そうだ、先頭を走っているのはさっき冒険者ギルドの建物で出会ったジャイロくんだ。

彼の後ろにはパーティメンバーの魔法使いさん達も居る。

と思ったら僧侶さんが転んだ!

「いけない! てりゃあぁぁぁぁぁっ!!」

僕は全力で跳躍すると、僧侶さんに襲い掛かるイーヴィルボアに飛び蹴りを喰らわした。

「ブモォォォ!?」

突然先頭の仲間が吹き飛んでイーヴィルボア達が慌てて脚を止める。

「ここからは、この僕が相手だ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

なんでこんな事になっちまったんだ。

「ジャイロ! アンタがまだイケるなんて言って無理やり森の奥に入るから!」

「うっせー! あんなのが居るなんて思わなかったんだから仕方がないだろ!」

仲間が俺に恨みの声を投げつけてくる。

でもしょうがないだろ。あんなのが居るなんて思わなかったんだから!

最初は確かにゴブリンとかコボルトみたいな雑魚ばっかりだったんだよ。

これでも元冒険者のギルドの人から剣を教えて貰ってたし、実際に上手く戦えてた。

仲間のサポートがあったし、怪我をしても魔法で回復できてた。

だからこの辺りなら楽勝だと思ったんだよ。

なのに……

「なんでこんな所にあんなデカい魔物が居るんだよー!」

あんな魔物聞いた事もない。

町の近くってのは冒険者や自警団、それに時々騎士団が魔物退治に来るからたいした魔物は居ないって大人達が言っていたのに。

居るじゃないか!! デカいのが!

「ああっ!?」

僧侶のノルブが悲鳴を上げて倒れる。

木の根に脚を引っ掛けて倒れてしまったらしい。

「ノルブ!?」

脚を抱えてうずくまっている、怪我をしたのか!?

急いで助けに行かないと。

「ブモォォォォォ!!」

後ろを見ればあの魔物がすさまじい勢いで迫ってくる。

ヤバい、潰される、助からない、助けられない。

見捨てて逃げるか、一緒に踏み潰されるか。

どちらを選ぶかを決めれなかった結果、時間切れになった。

自分も逃げ切れないところまで、近づかれてしまった。

「っ!」

体がすくんで目を閉じる。

その時だった。

「てぇりゃあぁぁぁぁぁっ!!」

「ブモォォォ!?」

すさまじい音と振動が響き渡り、周囲が静寂に包まれた。

もしかしてあの魔物に踏まれて痛みを感じるまもなく死んじまったのか?

そーっと目を開くと、目の前には知らない人間の背中があった。

「ここからは、この僕が相手だ!」

ふぅ、なんとか間に合った。

「ううっ」

むっ、僧侶さんが脚を抱えてうずくまっている。

まずは傷の手当をしないと。

「ディスタントヒール!」

イーヴィルボアが目の前に居るから牽制の意味でも僧侶さんのそばにはいけない。

だから僕は接触していなくても使える遠隔回復魔法で僧侶さんの傷を回復する。

「えっ!? 脚の痛みが消えた!?」

良かった、ちゃんと効いたみたいだ。

「僧侶さん、僕の後ろに下がって!」

「え? あ、はい!」

僧侶さんは目を白黒していたけど、すぐに状況を察して僕の後ろに下がる。

よし、これでイーヴィルボアだけに集中して戦える。

「ブモゥゥ……」

こっちを警戒していたイーヴィルボア達が踵をざっざっと踏み鳴らす。

問答無用で突撃して、圧倒的質量で踏み潰すつもりだな。

でもそうはさせない。

「ホールドツリー!!」

僕の魔法が発動し、周囲の木々がイーヴィルボアの体に絡みつく。

これはツタで敵を捕縛する拘束魔法の上位魔法で、木の形をツタの様に変えて相手を捕縛する魔法だ。

「ブモォォォ!?」

イーヴィルボアが慌てて振り払おうとするけど無駄だよ。

スピードを乗せて突撃している時ならともかく、止まっている今じゃ振りほどくのは無理さ。

それに僕の魔力で木も強化されているしね。

瞬く間にイーヴィルボアは体をがんじがらめに拘束されて動けなくなった。

木は硬さとしなり、そして折れ難さを併せ持つ素材だ。

それがツタの様に巻きついてきては、抜け出せる生き物なんてそうそう居るものじゃない。

魔法の効果で根っこが伸びてしっかりと地面に食い込み、周囲の木々と絡み合ってまるで網のように木が組み合わさる。

イーヴィルボアを逃さない無敵の拘束だ。

「何あれ!? あんな魔法見たことない!?」

あれ? この魔法は僕の前々世で開発した魔法だから、そんな珍しい魔法じゃないと思うんだけどな。

「というか、あの人呪文を詠唱せずに魔法を使いましたよ!?」

え? 戦闘中は無詠唱が基本でしょ?

そっか、彼等は新人冒険者だからその辺りの常識を知らないんだ。

僕には前世と前々世の実戦経験の記憶があるけど、彼等にはそれがないもんね。

「さぁ、これで終わりだ!」

僕は跳躍してイーヴィルボアの真上に飛び乗ると、その額にブロードソードを突き刺して魔法を放つ。

「ライトニングビート!!」

剣を伝ってイーヴィルボアの体内に雷撃の魔法を放つ。

こうする事で硬い鱗や分厚い毛皮を持った敵でも簡単に倒す事が出来るんだ。

これなら毛皮をボロボロにしなくて済むしね。

僕は残りのイーヴィルボアにも同じように止めをさしてゆく。

「これで全部と。君達大丈夫だった?」

全てのイーヴィルボアを倒した僕は、ジャイロ君達に声をかける。

僧侶君は回復したけど、他の子達が怪我をしているかもしれないからね。

「え、ええ。大丈夫。ちょっと魔力が消耗してるけど怪我はないわ」

魔力が不足しているのか。

それだと町に帰るまでが危ないね。

「ちょっと失礼。トランスファーマナ!」

僕が魔法を発動させると、光が僕から魔法使いさんに移動していく。

「ふわっ!? な、なにこれ!?」

「ちょっと僕の魔力を君に分けたんだよ。これで少しくらいなら魔法が使えるでしょ?」

「魔力を!? ってウソ!? ホントに魔力がみなぎってる!?」

まぁマナのロスがあるから、たいした量は分けられないけどね。

さて、せっかくだからこのイーヴィルボアの死体も回収しようかな。

これも多少は金になるだろうし。

僕は魔法の袋にイーヴィルボアの死体を収納していく。

「あ、あの……」

と、収納作業をしていた僕に、ジャイロ君が声をかけてきた。

「何?」

「た、助けてくれて……ありがとうございます」

うん、ちゃんとお礼を言えるのは良い事だね。

「気にしなくていいよ。冒険者は助け合いが基本だからね」

「あ、あの……」

ジャイロ君が何か強い意志を込めて僕を見つめてくる。

「貴方の名前を、教えて貰えませんか?」

「名前?」

「はい!」

ああ、そういえば彼の名前は聞いたけど、こっちからは名乗ってなかったっけ。

「僕の名前はレクス。改めて宜しくね」

「……レクスさん」

ジャイロ君は僕の名前をポツリとつぶやいた。

「どうしたのジャイロ君?」

「あの、レクスさん、いえレクスの兄貴!」

「うん?」

兄貴?

「俺、本当に分かってませんでした。ゴブリンなんかを相手にしていい気になって、その所為で仲間を危険に晒して」

いや、別にそんな大した事はしてないんだけどね。

「それなのに貴方は俺なんかをわざわざ助けに来てくれて。男としての器の違いをはっきりと感じました!」

器って大げさだなぁ。

「だから、俺を、俺を兄貴の舎弟にしてください!!」

「は?」

「俺! 兄貴の強さに惚れました! だから! 俺を兄貴の舎弟にしてくださいっ!!」

ジャイロ君はそういって僕の前にひれ伏して土下座した。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

この日、僕に初めての舎弟が出来たのだった。

って、舎弟なんて要らないよーっ!!