軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン曰く吠えよエルフ*5

超巨大なボールを回す、となったら、動力はどうするのか。

それは、水流である。

水を一方方向から、びゃーっ!とぶっ掛けて、それで回す。……というか、迷路をそのまま切り取ったコレは重さに偏りがあるボールだから、それに逆らわないようにうまいことやれば、案外ぐりんっと動いてくれるモンである。

特定の方向に動かしたいというよりは、『とりあえず動けば大体何でもヨシ!』という条件だったので、もうこれでいいのである。

……案の定、エルフ達も、ミシシアさんもリーザスさんも、大混乱である。そりゃあね。いきなり地面が傾いて、ぐりん、と、さっきまで床だったそこが壁になっちゃったわけだからね。

「なっ……なんだこれは!?」

「地面が、動いた!?」

エルフ達が大混乱の最中、ミシシアさんとリーザスさんも当然、めっちゃ混乱した。

が、その2人については大丈夫である。

「行けーッ!ジェネリック君!やれ!やるんだ!」

そう。ここには、ディスコホールの源、むっちりもっちりのジェネリック君が居るのだ!

ジェネリック君は、非常に賢かった。そのもっちりむっちりしたボディでさっきまで床だった壁に、うにょ、と張り付き……ついでに、そのボディの中に、ミシシアさんとリーザスさんを閉じ込めて救出!これにより、ミシシアさんとリーザスさんは無事、落下することなく壁面に張り付くことができたのだ!

「よくやったジェネリック君!」

俺が興奮しつつ叫べば、俺の膝の上でスライムとミューミャがそれぞれちょっと嬉しそうにしているのが感触で分かる。よしよし。お前らも同僚の活躍は誇らしかろう。俺も誇らしいよ、ジェネリック君!

……そして、ジェネリック君の救いの手に救われないエルフ5人組は、さっきまで壁だった床に叩きつけられるのを、すんでのところで回避していた。多分、なんか魔法使った。宙に浮いてる。なぁにこいつらぁ!飛べるのかよぉ!マジですげえなあ!

が、俺が待っていたのはこの一瞬!

エルフ達の意識は完璧に自分達のことで手一杯!妨害の魔法を展開し続けるだけの余裕は無くなり、彼らの認識している範囲が、一気に狭まったのである!

……つまり、どういうことが起きるか。

「液体窒素&ドライアイス充填完了!発射ーッ!」

……こういうことが、起きるんだよ!

ダンジョンパワーのチートなところっていうと数限りないが、その中でもやべえのが、『その物質の持つエネルギーの状態を割と好き勝手できる』というところである。

つまり、再構築する水の温度は自由に弄れるし、窒素を気体じゃなくて液体で出すことも可能なのである。

当然、液体窒素を常温下にぶちまけたら、一気に気化する。そして、一気に体積が増えた液体窒素は、ぼばんっ、と突沸してくれる訳だ。

で、窒素の出口を一か所に絞るような構造の容器の中でそれをやったなら……つまり、『通路の先の行き止まりを壁で封鎖して、その壁に小さめの穴を1つ空けただけにして、その奥の空間に液体窒素とドライアイスをいきなり充填した』状態にしてやれば……液体窒素が噴射されるのである!

まあ、ジェネリック君が冷凍されないように気を付けたよ。というか、流石にそこまでやべえことにはならんだろ、という想定でいった。

だって、相手はエルフだからな。

「氷の魔法だ!一気に冷えるぞ!」

「炎を用意するわ!私の補助をお願い!」

……通路内の空気が一気に冷えたのを見て、優秀なエルフ達はすぐさま、炎を展開し始めた。

まあね。彼らにとって、冷たいものってのは氷であって、氷ってのは水の固体、っていう、そういう認識でしかない訳だ。

彼らは、『空気を極限まで冷やすと固体になる』っていう、至極単純なことすら知らない。だからこそ、咄嗟に炎なんざ出しちまうんだ。

……凍ることよりももっとヤバいことがあるなんて、知らねえから。

エルフ達の炎は、立派なものだった。科学の法則を丸ッと無視して、いきなり通路内が熱され、明るくなる。

その炎に、ドライアイスは一気に融ける。じゅっ、と音を立てるそれに、エルフの内の2人……リーダーっぽいのと、弓を持ったのの内の無口な方は、『何かおかしい』と気づいたようだった。まあ、普通に水が凍ったものとは、なんか挙動が違うもんな。

が、今気づいてももう遅いんだよ。

「この程度、何てこと……」

勝利を確信したのであろう、炎の魔法使いのエルフは、にや、と笑って……その直後、ふら、と姿勢を崩した。

そして、その直後、エルフ達5人は一斉に異変に気付く。

「……えっ、な、なに、これ……」

呼吸ができないわけだ。彼らはすぐ、そう気づいただろう。

ちょっと吸ってすぐ、彼らは意識を失っていく。だが、その原因は何も分からない。それもそのはず。『融けて気体になる氷』も、『常温で沸く水』も、彼らの知識に無いんだからな!

……だが。

「何……が、起こっ、た……?」

……マジありえんことに、リーダーのエルフが、生き残っている!朦朧としてるが、意識がある!エッ!?どういう仕掛けで!?

これは困った。エルフ達全員の意識が消えたら彼らを即座に捕縛して、空気も調整して原状復帰、と思ってたのに、1人でも意識が残ってるとそれもできねえ!

……でも、まあ、俺には頼れる仲間が居るからね。

「……ごめんね!でも、あなたの意識があると、皆、死んじゃうから!」

ジェネリック君の中から腕だけを出したミシシアさんは、即座に矢を放って、生き残っていたエルフの喉をぶち抜いたのであった!

はい。リーダーエルフが意識を失ってくれたその瞬間、それでいて死ぬ直前に、エルフ達に世界樹ポーションをぶっ掛けつつ捕縛。ダンジョン内の空気を通常状態に戻して、これでOK。

「アスマ様ー!聞こえるー!?これだとエルフの捕縛には足りないよー!」

で、そんな中、ジェネリック君から出てきたミシシアさんがそう言ってくれたので、俺は『えっそうなの!?』と大慌てで檻を追加。が、ミシシアさんは悩みつつ首を横に振った。

「魔力を奪うような仕組みが無いと、エルフの無力化ってできないからー!」

そっか。成程。成程ね。えーと、つまり……。

「スライムに埋めた状態でお風呂に入れよう!」

そうして。

「あ、アスマ様、お帰り!」

「ただいま!ごめんなー、急に床を壁にして」

「うん!びっくりしたけどジェネリック君が居たから大丈夫だったよ!」

俺は、ミシシアさんとリーザスさん、そしてジェネリック君と無事に合流。今回のMVPはジェネリック君なので、俺はジェネリック君を撫でておいた。もっちりぷるん、とジェネリック君は誇らしげである。こりゃ叙勲ものだね。今度、ジェネリック君専用温泉タオルをプレゼントしてやるか……。

「で、こんなかんじでいいの……?ほんとに……?」

「うん!いいと思う!」

……そして、エルフ達は、というと……。

「ねえミシシアさん!?見た目は大分間抜けだけど、本当に良いの!?」

「うん!魔石の装飾品は全部外して、魔力を織り込んだ布の服も全部外して……この状態で、スライムに入れてお風呂に入れれば、スライムがエルフの魔力を吸い取ってくれるよね!」

……えーと。

なんか、こう……非常にアレな見た目になっているのだが。

エルフ達は今、下着姿でクソデカスライムに閉じ込められ。そしてその上で、風呂に浸けられている。クソデカスライム達は『まあ風呂に入れるしこれはこれでいいか』みたいな顔をしている。いいのかお前ら。本当にいいのか。なんか俺はわかんなくなってきたよ。

未だ意識を取り戻さないエルフ5人組を眺めつつ……さて。

「……で、この人達、どうする?」

俺達は、そんな相談をすることになる。まあ、この人達、いずれは意識を取り戻すだろうし。意識を取り戻されちゃった時にすぐ落とせるように、色々準備はしてあるけどさ。でも、延々とそうやって先送りにするわけにもいかない。

そう。俺達は、こいつらをどうにかしなきゃいけないんだよな。

「最悪の場合はこいつらを捕虜にして、エルフ達と交渉、ということになりかねないだろうな」

リーザスさんの意見を聞いて、『成程なあ』と頷かされる。……まあね。エルフ達も、この5人だけじゃないんだろうし。もっと沢山のエルフが居て、そいつらとの意思の疎通を図ることも、視野に入れなきゃいけない訳で……その時、交渉材料としてこの5人を使う、ってのは、アリだよな。

「そうなった時は……まあ、彼らが賢いことを祈ろう」

「うん……」

ミシシアさんは複雑そうな顔をしていた。まあ、同郷の連中に散々バカにされた挙句、その連中が今バカみてえな状態になってるわけで、思うところは色々あるだろうね。それに加えて、世界樹のこともある訳だから。

「どのみち、一度まともに話してみた方がいいだろうな。彼らの目的も気になるが……元大聖堂の連中とのつながりも、吐かせた方が良さそうだ」

「そう、だね。……話す、のかあ。話してくれる、かなあ……」

……うん。そう、なんだよなあ。

「……折角だからさ」

俺は、心配そうなミシシアさんと、ちょっと難しい顔をしているリーザスさんに宣言することにした。

「ミシシアさんと、ここの世界樹のことを認めさせてやろうぜ!で、頭くらいは下げさせようぜ!」

「ええっ!?」

ミシシアさんは驚いていたが、俺としては、やっぱりね、ここは譲れないのよ。

……あのね。

俺はね、ミシシアさんとはそこそこ付き合いが長いわけよ。

この、頭脳労働はそんなに得意じゃないらしくて、でも弓の腕はピカイチで、木と会話できて、やたら絵が上手くて、そして恐ろしい酒豪であるミシシアさんのことは、まあ、それなりに見てきたわけよ。

楽しいことが好きなのは知ってる。一緒に踊ってくれるから、踊るのも好きなんだろう。そして何より、パニス村のことをとても大切に思っている人だ。

……そういう人だから、俺も彼女を大切にしたいと思う訳だ。

このダンジョンと世界樹とパニス村と……色々とまとめて守るべく行動を共にする、仲間として。

……それで、俺はね。仲間をバカにされて黙ってられるほど、大人しい性格してねえんだぜ。それはミシシアさんも知ってると思うけどさ。

「ということでミシシアさん。エルフがやられたら嫌なことを片っ端から教えてくれ」

「へ?」

なのでこういうことになる。なるのだ。

ミシシアさんが許しても、俺は許さねえ。

……覚悟しろ、エルフ!