軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン曰く吠えよエルフ*3

ということで、俺は即座に3人で打ち合わせ。ミシシアさんのGOサインも出たところで、早速解散。

俺は走りつつ咄嗟に判断して……そこらへんでみゅーみゅー鳴いていたミューミャ一匹とそこらへんでもっちりもっちりしていたスライム一匹を捕まえて、更にダッシュ。ダンジョンの裏から回ってジェネリック君へ命令を出しに行く。

今、ジェネリック君はダンジョン内の適当な通路の中をもっちりもっちりと散歩中だからな……。多分、アレは温泉帰り。

朝風呂を楽しんできた帰りだろうところを申し訳ないが、まあ、仕事である。彼にはもっちりむっちりと道を塞ぎつつ、エルフ達を足止めしてもらいたい。

そして一方、入り口からエルフ5人組を追いかける形でミシシアさんとリーザスさんが入る。ミシシアさんにはエルフ達を一旦ダンジョンの外に出すための交渉をお願いしている。リーザスさんは、万一のことがあった時の補佐。

……エルフ達がいきなりミシシアさんに襲い掛かるようなことが無ければ、多分、大丈夫だと思う。

だが、それが全く無いとは言い切れないのが現状だ。ミシシアさんとしても、『まあ、最初から殺しにかかってこないとは言えないなあ……』ということらしい。そんなになの?エルフってそんなに野蛮なの?マジで?

エルフが野蛮かどうかはさておき、そういうわけで、ミシシアさん達にはもう、ダンジョンに入ってもらっている。

そして俺はジェネリック君の元へと向かい……。

「ジェネリック君!仕事だ!コレ飲んだらすぐ俺についてきて!」

ジェネリック君に世界樹ポーションを与えてより一層光り輝かせたら、レッツゴー。

さあ、エルフ5人組を挟み撃ちしに行くぜ!……いや、まあ、撃たないけど。撃てないと思うから、退却させるだけだけど。

でも、しっかり相手の出方は見ていきたいね。それ次第でこっちの対策を変えなきゃならねえんだから。

ジェネリック君は意外と俊敏である。スライム一族の中ではかなり俊敏な方じゃないだろうか。

それは恐らく、クソデカスライムサイズであることによるリーチのデカさと、世界樹ポーション由来の魔力の影響……もあるんだろうが、何より、『ダンジョンの中に住んでるのに毎日温泉に入りに行くもんだから足腰が鍛えられた』という理由がデカいと思う。いや、こいつに足も腰も無いが。

まあ、そういう風呂好きジェネリック君は、案外素早く俺についてきてくれたので、そのままジェネリック君と共にダンジョン内迷路を逆走していく。同時に、視覚を時々ダンジョン内のあちこちに動かして、ミシシアさん達の様子を見て、エルフ達の様子を見て……とやりつつ、速度調整。

エルフ達は罠も魔物も警戒していない舐めプっぷりでスタスタ行くから他の冒険者達と比べると圧倒的に速いんだが、それでも急いで歩いているわけじゃないんで、走るミシシアさんとリーザスさんの方が当然速い。この分なら、ジェネリック君もペースダウンせずにつっこんでいってよさそうだ。

「よし、ジェネリック君!このまま直進して、分かれ道を右だ!更に直進して天井の穴から上の階に移動したら、出口に向かっていって突っ込んでくれ!エルフ5人組を通さないように!」

……そうしてジェネリック君にちょっと回り道を指示してジェネリック君を送り出す。ジェネリック君はぽよんと弾むと、温泉へ向かう時のダッシュの8割ぐらいの速度(つまりスライムとしてはかなりの速さ)で向かっていってくれた。

よし……では俺は、万一に備えてここで待機しつつ、エルフ達の動向を見守るとしよう。

丁度そろそろ、ミシシアさん達が追い付く頃だし……。

……ということで、視覚と聴覚をエルフ達の方に移す。

こうなると俺は完全に無防備になっちまうので、『何かあったら俺の膝の上で飛び跳ねろよ』と命令を出したミューミャとその保険のスライムが必要だったというわけなんですね。心配だけどね。でも、村人とか冒険者とかをこっちの裏口から連れてくるわけにもいかないからね。しょうがないね……。

エルフ達の観察をしていたら、彼らが雑談しているらしいことは分かった。

『里の近くの樹がどうの』とか『谷の花がどうの』とか、そういう話をめっちゃしている。

……で、そんな話の中に、『人間が』というかんじの話が出てきたのでそれも聞いてみると……。

「人間は愚かだな。ダンジョンの傍に里を作るなど」

なんというか、俺としてはなんとも複雑な顔をしてしまう話が始まっていた。

「こんなところに世界樹があるとは思えんのだがな。ダンジョンの中、ましてや人間の里と共にあるダンジョンの中に、など」

マジでエルフは人間嫌いなんだなあ。ってことは、やっぱりミシシアさんってかなり異端なんだろう。彼女の苦労が偲ばれるぜ。

「世界樹がこんな場所で育つはずないじゃない。やっぱり確かめる必要なんて無いんじゃないかしら?」

「だが……確かめないことには、あの人間達を処分できない。面倒なことだ」

「殺しちゃえばいいじゃない。人間なんてどうせすぐ生えてくるんだし」

「妙な術を持っている人間だぞ。他に何を持っているかもわからない相手だ。10年程度は様子を見てもいいだろう」

……なんつうか、本当に……本当に、人間とは感覚が違うんだなあ、と思わされる会話が繰り広げられている。ミシシアさんって、本当に、本当に人間に感覚が近い方なんだなあ!

俺が膝の上のミューミャを撫でつつ複雑な気分になっていると……ふと、エルフの集団の最後尾を歩いていたエルフが、ぴく、と長い耳を震わせて振り返った。

「……後ろから、何か追跡してきている」

ほう。どうやらミシシアさんとリーザスさんに気付いたらしいな。

それもそのはず、今、エルフ達が居る道の後方300mくらいのところに、ミシシアさんとリーザスさんがやってきているからだ。

……ということは、これくらいまでの範囲がエルフの索敵範囲、ってことになるのかな。これはよい収穫。

「人間か?」

「……分からない。でも、恐らくは、そう」

リーダーっぽいエルフに、索敵エルフがそう答える。……ミシシアさんは彼らとしては人間判定なんだろうか。

「エルフ狩りってことかしら?なんて命知らずなの」

「我々を狙っているとも限らないだろう」

「でも野蛮な人間のことよ?なにをするか分からないわ」

警戒されてるねえ。俺としてはそっちが何かしないか警戒してるところなんだが。

「……殺すか?」

「待て。確認してからにしろ。騒ぎは起こしたくない。面倒が増える」

弓のエルフの1人が物騒なことを言って、リーダーに止められる。……このリーダー、ちょっと苦労してそうだな……。

「……来る」

そして、エルフ達が物騒な会話をしている間にも、ミシシアさんとリーザスさんは近づいてきて……。

「……混じり物が、何故、ここに居る」

ミシシアさんを見た途端、エルフ達の雰囲気がぴりついた。

これは……いけるか?ミシシアさんを出したのは、本当に正しかったか……?

「……話を、しにきたの」

ミシシアさんがそう切り出すも、エルフ達の警戒は解けない。リーザスさんは1人、アウェーなかんじで『こういう雰囲気になるとはな』みたいな顔をしている。

「あなた達、世界樹を探しに来たんでしょ?」

ミシシアさんの言葉に、エルフ達は返事をしない。こっちは多少、向こうの情報を既に持ってるわけなんだが、向こうはミシシアさんを警戒してる、ってことなんだろうな。

「なら、その話をさせて。話の後でなら、世界樹に案内してもいい。……このダンジョンの迷路は、すごく複雑だよ。すぐ道が変わるし、かなり活発なダンジョン。ただ通り抜けるだけでも、苦労すると思うけれど」

エルフ達はしばらくそのまま、じっとしていた。だが……ようやく、リーダーっぽいエルフが口を開く。

「……まさか、お前が世界樹を植えた、とでも?」

「その『まさか』だよ」

ミシシアさんが答えれば、エルフのリーダーは明らかに不快そうな顔をした。

「混じり物が、世界樹を?そんなわけないだろう」

……えーと。

なんか……こう、話が通じる相手か、と言われると、『あんまり!』ってかんじなわけね。OK。うーん……これ、どうするかなあ。

まあ、こうなっちまうこと自体は、ミシシアさんも危惧してたんで、ジェネリック君の参戦がそこに活路を生み出してくれる、とは思うんだけど……。

「あなた達が信じられないのは分かるよ。私だって、私がやれるとは思ってなかった。でも」

「どうやら、このダンジョンに世界樹は無いらしい」

……活路が、見出される、とは思うんだけどさ。

「……なら、不愉快な噂の根源など、潰しても構わないな」

それはそれとして、俺はエルフってものに悪い印象しかねえぞ!おいコラ!鼻の孔にスライム詰められてえんか!?ああん!?

「何、言ってるの……?」

ミシシアさんは俺より怒りの瞬発力が出なかったらしく、ただ茫然としていた。一方、後ろに控えるリーザスさんは、明らかに緊張した様子である。

「エルフの誇りを人間の法螺話の種になどされては困る。驕った人間達は粛正するべきだ。世界樹は、エルフの誇り。エルフにのみ許された奇跡なのだから」

エルフにとって、世界樹ってそういうモンで、そして、人間ってのはそういうモンであるらしい。

……『混じりもの』であるミシシアさんがこういう扱いなのも、納得だね。ったく。

「人間の村なんてどうせ100年もすればすぐ生えてくるんでしょうけれどね」

「世界樹の存在を騙る者は、徹底的に潰さねば」

が、俺達人間はむざむざやられるようなかわいこちゃんじゃない訳だ。

……よし。

今だ!行け、ジェネリック君!

もちっ、と、エルフ達の背後で音がする。

ぎゅぎゅぎゅ……っぽん、と、瓶の栓が抜けたような音もする。

……それは、ジェネリック君がちょっと狭い通路を抜けた音だ。

「何だ?」

エルフ達は振り返る。

そして、そこに居るのは……!

「……何だ!?」

ちょっと世界樹の魔力を食わせすぎて、レーザービームの如き光を放つようになっちまったミラーボールジェネリック君である。

こいつ一匹居れば、ダンジョンがディスコホールだぜ。レッツパーリー!イェア!

が。

「スライム如き……!」

問答無用で、火の玉がジェネリック君に向かって飛んでいた。容赦ねえなあ。ワァオー。

「ジェネリック君!」

ミシシアさんの悲鳴が上がる。ばっ、と目を焼くように炎が燃え盛り、そして……。

「なっ……何?このスライムは」

火の玉を放ったエルフも、それ以外のエルフも、皆が炎の行き先を、そしてジェネリック君を見ていた。

……何故なら、そこには無傷でもっちりしているジェネリック君が居たからである!

すごいぞジェネリック君!強いぞジェネリック君!やっぱり時代はスライムだぜ!