軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お邪魔します!*5

ウーパールーパーだ。ウーパールーパーだよ。俺の目の前には今、ウーパールーパーが居るよ。

でもサイズを見るに、ウーパールーパーじゃないよ。サイズだけ言ったら猫。本物のウーパールーパーはこのサイズにはならねえ!

だが、この水かきのついた手といい、ぷにっ、としたボディといい、妙に気の抜けた顔といい、つぶらな目といい……概ね、ウーパールーパー!サイズ以外はウーパールーパーっぽいんだけどなあ!

「えっ……?アスマ様、これ、何……?」

「分かんない……いや、クソデカいウーパールーパーっぽいことは分かるけど、そもそもウーパールーパーって陸生生物なんだっけ……?水の中に居るもんじゃなかったっけ……?だとしたらこいつは一体、何……?」

「あの、うぱるぱ?って、何……?」

わかんない!俺、そもそもウーパールーパーに詳しくないもん!水族館でちょこっと見たことある程度だもん!

アッ!?水族館で見たんだからやっぱりウーパールーパーって水生生物なんじゃねえの!?だとしたらやっぱりこいつってウーパールーパーじゃなくてオオサンショウウオだったりするの!?

駄目だーッ!何も!何も分かんねえーッ!

が、混乱は加速する。

「あっ!このうぱるぱ、お洒落してるよ!かわいいね!」

「え?」

ミシシアさんがそんなことを言いつつ、ひょい、とウーパールーパーを抱き上げた。ウーパールーパーは不服気な顔で『ぷぁー』みたいな鳴き声を上げた。ウーパールーパーって鳴くんだっけか……?

「ほら!前足のところ!」

「……え?」

……俺はいよいよ、考えることを止めた。

だってよぉ……ウーパールーパーのプニッとした脚に、見事に……見覚えのある腕輪が付いてるんだよ。

「……あれっ!?よく見たらこれ、アスマ様とお揃い!?」

「お揃い……俺、ウーパールーパーとお揃い……!?」

そう。つまるところ、『ダンジョンの主の腕輪』だ。

それが、このウーパールーパーに付いていた。

「成程な……こいつが、ダンジョンの主、なのか……」

「あっあっリーザスさんそんなご無体な!つつかないであげてつつかないであげて!」

「そ、そうか?うん……じゃあやめておくか……」

さて。

そうして俺達は会議中。

ミシシアさんの膝の上で抱きかかえられてしまったウーパールーパーは、リーザスさんにむにむにとつつかれて、不服気な顔で『ぷぇー』と鳴いている。やっぱり鳴くんだね、こいつ……。

「……アスマ様。こいつはカエルか?それとも、魚……?いや、ドラゴン、ではない、よな……?」

「えーと……うん、まあ、どれでもないね……えーと、オオサンショウウオの仲間?いや、もしかしたら陸生だからマジでオオサンショウウオかもしれない」

「ねえアスマ様ぁ、オオサンショウウオって何?」

オオサンショウウオって……えーと、何なんだろうね。オオサンショウウオ、以外にオオサンショウウオを表現する方法、ある?無いよね?

……そもそもさあ!俺、ウーパールーパーにもオオサンショウウオにもそんなに詳しくねえんだよ!うわあああああああ!

「で、このうぱるぱが……」

「あ、うん、ウーパールーパーね……」

「うぱるぅぱ……?」

……うん。もう『ウパルパ』でいいか。そうだね。こいつ、ウーパールーパーっぽくはあるが、サイズからして絶対にウーパールーパーじゃねえし。もうお前はウーパールーパーじゃない。

ということで、『ウーパールーパー!?贅沢な名前だね!今日からお前はウパルパだよ!』と宣言して、こいつの名前はウパルパとした。よろしくウパルパ。

……ウパルパ本人は、『ぷぅ』とちょっと不服気な声を上げていたが。だがもう遅い。お前はもうウパルパになった。ウパルパになったのだ!

「で、このウパルパの腕輪、俺の腕輪と同じなんだよね。ほら」

「ああ……同じ、だな。刻まれた文言まで同じだ」

そうなんだよ。この腕輪、俺の腕輪とマジでお揃いなんだよね。

『ダンジョンは、あらゆる物質を食らい、魔力へと変じる機構である。ダンジョンは、魔力を用い、あらゆるものを生み出す機構である。ダンジョンは、新たな魔力を求めて活動する。ダンジョンは、眠れども滅びない。』

……で、多分、『ダンジョンは、眠れども滅びない。』の後に、『ダンジョンは、主を待っている。』って書いてあったんだろうな。俺の腕輪にも、それはもう書いてないけど。

「この腕輪を装備している以上、多分、このウパルパがこのダンジョンの主なんだと思う。それは間違いないんじゃないかな……」

「ええー……この子が、ダンジョンの主ぃ……?」

うん。まあ、ミシシアさんの気持ちも分からんでもない。俺も正直、そんな気分ではある。だってウーパールーパーよ?ウーパールーパー。それがダンジョンの主だ、ってのは、ねえ……。

「あー……アスマ様。俺はこのウパルパには詳しくないんだが」

「俺も詳しくない」

「……このウパルパは、賢い生き物なのか?その、ダンジョンをどうこうできるような……」

うん。まあ、それは気になるところだよな。

俺はまあ、インテリジェンスなホモサピエンスなのでダンジョンパワーをそこそこに使いこなしている、と思う。少なくとも、分解吸収再構築で、いろんなことをやってきたし、これからもやっていくつもりである。

だが……この、目の前で『ぽけーっ』としているこいつに、同じようなことができる、のか……!?

「……あの、ね?この子、あんまり難しいことはできないんじゃないかなあ」

「うん。俺もそう思う」

まあ、どう見ても……ウーパールーパーだから。いや、ウパルパだから……俺もミシシアさんと同意見だ。このウパルパには、難しいことは、できない!少なくとも、元素が分子がって話は分かってないだろうし、そもそも再構築とかをやってのけてるかどうかすら怪しい!

何故なら!

「このダンジョン、どう見ても簡単な造りだし……」

「そうだな……。魔物が居るだけで、それも、奥に行くにつれて魔力が濃くて、それに応じた魔物が出現する、というだけのようだしな……」

「何よりこいつ自身にインテリジェンスの欠片も感じられねえ!見てよこのポケーッとした顔!」

ポケーッとモンスターなこちらのウパルパは、俺達がこんな話をしている間も、ポケーッとした顔で『ぷぁ……』と鳴いているだけである。暢気だなあ!生き残ろうという気概すら感じられねえよ!

……だが、俺としては、このインテリジェンスの欠片も無い、ぽけらん、としたウパルパがダンジョンの主だと知って、なんか納得がいったところもある。

「俺さ、ダンジョンから出そうと思ってスライム出さなくても、勝手にスライム出てくるんだけどさ……」

「ああ、そうだったよね。アスマ様が何かしなくても、スライムは出てくるんだった」

そう。俺、スライムはダンジョンに勝手に湧くもの、として認識しているのだ。

で、他のダンジョンがモンスターだらけと聞いて、『モンスターを意識して出していない俺がおかしいのか!?』って思ってたんだが……他のダンジョンの主がこういう、うぱーっ、として、るぱーっ、としてる奴だというのなら話は簡単だ。

「多分、ウパルパも何もしないまま、ここでぽけーっとしてるだけなんだと思う。でも、ダンジョンがあって、魔力があると、魔物が勝手に生まれるんじゃねえかな」

魔物が勝手に湧く、ということは、ダンジョンの主がどんなにアホでも魔物だけは補充されるということである。

パニス村よりも魔物が多いダンジョンが多い、っていうのは、パニス村では俺が他の事に魔力を使いまくってて、魔物になる余剰分の魔力が少ないとか、そういうことじゃねえかなあ。多分。多分だけどね。

「ということは……その、他のダンジョンの多くも、こうした……人間以外の生き物がダンジョンの主をやっているから、単純で魔物が溢れ返ったダンジョンにしかならない、ということ、だろうか……?」

「そう、っぽいんだよなあ、これ……」

で、結論としては……『人間じゃない生物がダンジョンの主をやってるもんだから、そのダンジョンは複雑なことができず、ただ、考え無しに魔物が生まれるだけのダンジョンと化している』ということだ!

だからこの世界には、魔物いっぱいのダンジョンばっかりなんだなあ!

これが多分、この世界におけるダンジョンの真実!間違いないね!ショボい!

俺達がダンジョンのショボい真実に気づいちまったところで……さて。

「……ってことは、このウパルパにお願いしてスライムを増やしてもらうとか、そういうのは難しそう、ってこと……?」

そう。俺達がこのダンジョンに来たのって、スライムの増産が可能かどうかを確かめに来たんだよな。

で、スライムとか他の魔物の生産を担っているダンジョンの主がウパルパだったもんだから、色々と頓挫してる、って訳で……。

「一応試してみる?おーい、ウパルパ。お前、スライム多めに作れる?」

「ぷぇー」

「そっかー。うん、駄目かもしれない」

「まあ、意思の疎通すら難しいな……」

……ね。まあ、分かっちゃいたけどよぉ……やっぱり、ウパルパと意思の疎通は、きついよ。流石に。流石にね……。

ということで、俺達は意気消沈しつつウパルパと遊ぶことにした。

ウパルパは俺達が持ってきた菓子折り……菓子箱の底に『情報』である書物が詰まった豪華な奴を気に入ったらしい。えーと、情報の方は早々にダンジョンに分解吸収されたっぽくて、そして、ウパルパ本人は菓子折りの方……パニス村名物になってきた、『ブランデー入りの焼き菓子』を食べてご満悦である。

……ウーパールーパーって焼き菓子食べて大丈夫なんだろうか。これ、ミュー乳から作ったバターとかたっぷり入ってる奴なんだけど、大丈夫なんだろうか。あと、焼いたとはいえブランデー入ってるんだけど、大丈夫だろうか。

まあ、ウパルパ本人は焼き菓子をもしゃもしゃ食べつつ、なんか嬉しそうな顔してるからね……多分、大丈夫なんでしょう。まあこいつウーパールーパーじゃなくてウパルパだしな。胃腸もきっと丈夫なんだと思うよ。

「ウパルパ、ちょっと可愛いねえ。他のダンジョンの主も皆、ウパルパなのかなあ」

「だとしたらなんで俺だけ人間なの?ってことにならない?」

「……アスマ様も実はウパルパだったりする?」

「流石にそれは無いと思いたい」

どうする?俺がウパルパだったら。怖いね。考えるだけで怖いわ。やめてやめて。

「他のダンジョンの主も、全部が全部ウパルパ、ってことは無いだろうけど、人間じゃない奴が多い、ってのは確かなんだろうなあ……。それこそ、犬猫とかウサギとか」

リーザスさん曰く、大抵のダンジョンは『魔物が出て、奥に行くほど強くなって、それだけ』らしいからなあ。トラップがあるダンジョンもあるにせよ、パニス村ダンジョンみたいな高度な罠が仕掛けられてるもんでもないらしいし……。

となると、多くのダンジョンの主は人間じゃない何かなんだろうな、と思われる。うん。そこまでは、いい。

「……でも、人間も、居ると思うんだよな」

「え?」

俺が注目したいのは、ここだ。それは、俺達も知っている場所。

「ほら、王都の金鉱ダンジョン。あそこはどう考えても、人間かそれに近しい誰かが手を入れてると思う」

「ああー……そうだよねえ。あそこ、かなり不思議なダンジョンだもん……あれをウパルパがやってるとは思えないよ!」

「もし人間ではなかったとしても、意思の疎通は図れる可能性が高そうだな!」

ね。やっぱりあのダンジョン、今思うと異質だった。

そしてその異質さ加減がどこから来ているのか、っていうところを考えて……やっぱり、『ダンジョンの主の違い』じゃねえかな、と思ったわけだ。

もし人間じゃない生き物だったとしても、あれだけのダンジョンだ。意思の疎通が可能なら、スライム増産はお願いできる余地があるんじゃねえかな、と思うんだよね!

「じゃあ、行ってみるか!金鉱ダンジョン!」

「うん!行ってみよう!」

……金鉱ダンジョン、行ってみるしかないね!

「ところでこのウパルパはどうするんだ」

「ええー……うーん、そっとしておこう」

……他所のダンジョンの主を連れ帰る訳にもいかないので、ウパルパには引き続きここに居てもらうことにする。

ウパルパは『ぷぇー』と鳴いた。うーん何言ってんのかはやっぱり分からんね……。まあ、どうぞ健康に生きてくださいね……。