軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

町へ行こうよ*3

ということで、検問は無事に抜けられた。そもそも、よっぽど不審じゃない限りは、色々調べるとかは無いらしいよ。ちょっと荷物見て、違法薬物とか生物とか積んでない?ってのだけ確認して、それでちょっと話して解散、ってかんじらしい。心配して損した。

が、別の心配は発生しちまったよ。うううううおおおおお。

「リーザスさん……その、ごめん。王都、来たくなかったんじゃ……」

そう。リーザスさんである。リーザスさんは元嫁と間男が居る王都に居るのが気まずくて、第三騎士団で騎士を続ける道を諦めて、そのまま冒険者崩れと一緒に落ちぶれていった……という人であるにもかかわらず!俺はそこらへんをすっかり忘れて、リーザスさんをその王都へ連れてきちまった訳だ!

あああああ!ごめんリーザスさん!あああああ!あああああ!

「いや、大丈夫さ。王城に行くつもりは無いし……すれ違ったとしても、まあ、その時はその時だ」

リーザスさんはそう言ってくれるし、確かに、王城で働いてる人達には、王城に行かない限りは滅多に出くわさないんだろうけれど……。

「さて。じゃあさっさと本屋に行ってしまおうか。アスマ様も心配してちゃあ、食事どころじゃないだろうしな」

「ご飯はお持ち帰りとかできないかな。宿の中で食べたら会いたくない人に会う可能性を極力減らせる……」

「……そんなに気にしなくて大丈夫だぞ」

そう?うん、まあ、リーザスさんがそう言うなら、予定通り、本屋行って、宿に荷物置いて、どこか食堂入ろうか……。

……心配!

心配はさておき、王都の街並みである。

王都はラークの町より更に石造り成分が多い。

……ちょっとびっくりするぐらい、石造りな気がする。すげえな。統一感がすげえ。

「王都の主要な建物は、大体全部同じ魔法使いが建設してるんだ」

「魔法使いが?大工さんじゃなくて?」

「ああ。本当に優れた魔法使いは、大地から石を伸び上がらせて柱を作り、壁を作って、建物にしてしまうことだってできるんだ」

な、成程ね。そっか、ファンタジーパワー舐めてたわ。俺自身もやってることなんだし、そうなりゃ他にできる人がいてもおかしくないでしょ、とは思ってたが……しっかりがっつり実用されてるところを見ると、『おお、ファンタジー……』って圧倒されるね。

「つまりアスマ様は優れた魔法使い、ってことだね!」

……あと、そっちの評価についてもなんか分かってきたぞ。

成程ね……確かに俺は、『優れた魔法使い』っていう評価に値することをやっちゃってるわけだ。うん……でも、ダンジョンの外に出たらただの小学生ボディなわけだからな。ま、あまり威張らず生きていこう。

「この辺りは木造建築もあるね」

「ああ、多分、植物を生やすのが上手い魔法使いが居たんだろう」

「……成程ね!」

本当に街並みはファンタジーである。マジで、ファンタジーである!すげえなこの世界!

そうして街並みのファンタジーぶりに圧倒されつつ、俺達はリーザスさんの案内で本屋に入った。

「ここだけで揃わなかったとしても、もう2軒ほど本屋があるからな。そっちはここより小さいが……」

案内された本屋は、でかかった。

いや、大分でかい。すごくでかい。そして、ファンタジー!

「うおおお……天井まで本棚だ!」

「アスマ様って、もしかしてダンジョンのことが無くても本が好き?」

「うん……多分、割と好きな部類に入ると思う……」

これだけの本があるとなると、やっぱり楽しい。なんか、本ってあるだけで割と楽しい。それがこのファンタジー本屋なもんだから、最早興奮を抑えることは不可能である。

「まあ、他2軒をハシゴしてもいい。ゆっくり決めてくれ。ただし、閉店時間までに頼む」

「うん!頑張って急ぐ!こりゃあ無限に時間があっても足りそうにねえし!いやっほーう!」

俺は昼休みに解き放たれた小学生の如き元気さで本屋の奥へと進んでいった。もうね、気分は冒険よ。だってこんだけ本があるわけで、そりゃもう、こうもなるよ。しょうがないしょうがない。

が、本を選び始めた俺は、早速いくつかの壁にぶち当たった。

「……この世界における本の需要ってどんなもんなんだろうか」

「需要?ええと、それはどういう……」

「えーと、村の人達が読みたがる本って、どんなんかな、と思って」

俺としては、もう、この世界自体がファンタジーなわけだから、この世界の歴史とか魔法の理屈とか生態系とかそういうのすら全部ファンタジー小説みたいなもんなんだが、この世界の人の好みとは噛み合わない可能性が高い。

ついでに、好みと需要ってまた違うので……苦くても飲まないといけない薬があるように、別に好きじゃない本も揃えておいた方がいいだろ、っていうのが図書館なので……。

「あっ!だったら図鑑!図鑑が欲しいなー!薬草の選り分けの時とか、綺麗な花を見つけた時とかに使えるから!」

悩んでいたらすぐ飛んできてくれるミシシアさん。ありがとう。参考にして図鑑をどんどん買い込みます。

「小説は流行りを追うと大変だからな。古典的な作品を主として選んだらどうだろう」

「成程ね。まあ、貴族が湯治に来たとかだと、古典的名作をゆったり読み直す、みたいなところで需要が発生しそうだね」

まあそういうことなら分かる。が、俺にとってはどれが古典でどれが新作なのかも分からないので、そっちはリーザスさんにお任せすることにする。よろしく!

……そして。

「やっぱり、これは気になるよなあ」

この世界においては揃えておくべきでしょう、というブツがある。俺は、『多分そうだろうなあ』と思われる背表紙に手を伸ばして、それを棚から抜き出した。

それは……魔導書である!

ファンタジー世界の本だったらこれは外せないでしょう!と思うので、少なくとも1冊は買わせてほしい。俺は本物の魔導書を読んでみたい!読んでみたい!

「ん?ああ、魔導書も買うの?」

「うん。どうしても1冊、読んでみたくて……」

そこに、図鑑タワーを抱えたミシシアさんがやってきたのでちょっと相談に乗ってもらう。

「できるだけ基礎的な奴がいいんだけれど、どれだろ」

「ああ、村の子供達の魔法の練習にも使えるような奴がいいよね!ちょっと待ってね。えーと……あ、あった!これ!古いやつだけど、内容がしっかりしてるからおすすめ!」

「おお……!」

ミシシアさんおすすめの魔導書とやら、早速ぱらぱらっ、と中身を見せてもらって……。

「……成程ね。初歩的な魔法の使い方の教本、ってかんじか」

どうやら、この世界でいうところの教科書、みたいなかんじっぽい。多分、生活によく使う魔法を中心に載せてあるんだろうなあ。よし。帰ったらしっかり分解吸収して内容を理解するぞ!

……いや、ちゃんと手動アンド肉眼で1ページ1ページ読んでみるかな。うーん。ちょっと迷いどころ……。

そんなかんじに、村の子供達の勉強に使えるような本もいくらか選ぶ。これがパニス村の教育の礎になるのだ!

更に、村の研究者や職人さん達が必要かもしれない本をいくらか選ぶ。専門的な本って、こう、中身理解できなくてもちょっと楽しいよね……。

そうしている間にリーザスさんも大量の小説を手に入れてきてくれたし、ミシシアさんの図鑑タワーは冒険記とかも混ざって更に増えていたので、こんなもんにしとこうね、ということになった。

何故かって?……馬車の積載量には限りがあるからだよ!

「2軒目にハシゴする余裕はなさそうだね」

「そうだねえ……本屋さんって、楽しいねぇ、アスマ様」

「うん。真にそう思います」

ということで、馬車の中に本を詰めて詰めて……本でいっぱいの馬車が爆誕してしまった。これ、帰りの馬、大丈夫かな。馬車自体の重量が倍ぐらいになってるんじゃねえかな。大丈夫かな。

「……まあ、この本だけだとどのみち、大図書館、ってかんじにはならないだろうし……今後も何度か、王都に本の買い出しに行こうね」

「うん、勿論!……でもアスマ様、大丈夫?馬車、苦手みたいだけど……」

……うん。

「先に馬車の改良から始める」

「そっかぁー」

今後のパニス村の発展を考えるにあたって、やっぱりここは外せないよな……。どう足掻いても、パニス村の中だけの需要って限度があるだろうし、そうなったら物流を強化して、王都とか、ラークの町とかに物品の輸出をもっと増やすとか、そっちも考えていく必要があるし……。

「しかし、まずは帰り道だな……。アスマ様。本がある分、非常に狭いが……大丈夫か?」

……いや、まずは目の前の……目の前のことから考えよう。

「ダメかもしれない」

本がミッチリ詰まったこの馬車。ちょっとね……乗り心地が悪化はしていても、良くはなっていないだろうという確信は持てちまうよね。うん……。

「そういうことなら、この馬車は俺が持って帰ろう。ミシシアさんとアスマ様は乗合馬車で帰る、というのはどうだ?まだあっちの方が乗り心地がいいと思うが」

「えっ、私の膝だとちょっと足りないと思うよリーザスさん!だから、この馬車は私が運転して帰るから、リーザスさんとアスマ様が乗合馬車を使えばいいんじゃないかな」

なんか、ありがたいことにリーザスさんとミシシアさんがそんな話をしてくれている。すまねえ、俺が乗り物酔いするばっかりに!

「……よし。じゃあ、アスマ様。明日は馬車と本をミシシアさんに任せて、俺達は乗合馬車でパニス村まで行くことにしよう」

「うん。お世話になります」

……ということで、俺達2人は別行動をすることになった。まあ、多少でも乗り心地がマシになるなら、その方がありがたいし……。

と、思ったんだ。

思ったんだけどな、やっぱり上手くいかねえんだなぁ、こういうの。

そうして、王都の宿に泊まって飯食って、翌日の朝。

「へー、ここが乗合馬車乗り場かぁ。成程、『パニス村方面行き』があるのね。ほー……」

概ね、田舎のバス停、みたいな雰囲気のそこに到着して、俺はちょっと感動していた。

今、王都の貴族とか富裕層とかの絶好の観光スポットとしてパニス村が有名になりつつある、ということは知っていても、その実態がどうなのかはよく分かってなかったからな。

が、こうして『パニス村行き』があるってことは……かなりの数の人が常にパニス村への移動を希望している、っていうことに他ならない!

これは嬉しいね、と思いつつ、バス待ちならぬ馬車待ちしているらしい、冒険者っぽい人達や、ちょっと身なりのいい、でも貴族じゃないんだろうな、ってかんじの人達……多分、研究者の類とか、金はあるけど平民、みたいな人達とか、そこらへんの人達を眺めていた。

だが。

「す、すまない、アスマ様」

「えっ?」

突如として、俺は、ひょい、と抱き上げられてしまった。

そして、俺を抱き上げたリーザスさん、すたすたと元来た道を戻り始めた。

「……やはり、ミシシアさんに頼もう」

「えっ?な、何かあった?」

これ絶対何かあったんだな?と思いつつ、その実態が何かをなんとなく察してしまいつつ、聞いてみたら……。

「パニス村行きの馬車を待つベンチに……元同僚と、元嫁が居た」

「……ワァオー」

……滅茶苦茶に、事故っていた!ウワーッ!リーザスさんごめん!本当にごめん!ウワアアーッ!