軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういうわけで

どうする?どうする?やっぱりここは一丁踊っとく!?DJ、音楽くれ!踊れるやつ!

……ってな具合に俺が混乱していると、ラペレシアナ様は声を上げて笑った。

「何、他言するつもりは無いとも。そのように慌てられるな」

「え、あ、うん……?」

どうやら、ラペレシアナ様は何故か俺がダンジョンの主であることを見抜いたらしいんだが……ええと、内緒には、してくれるらしい。うん、ありがたいんだけど……ええと。

「ただ、我らを癒してくださったことに、感謝を申し上げたかっただけなのだ」

「い、いや、俺は何もしてないし……」

お礼とか言われても困るよ!という気持ちを全面に押し出してそう言ってみると、ラペレシアナ様はまたくすくす笑った。

「ふむ、そういうことか。なら、勝手に礼を言わせてほしい。貴殿には身に覚えのないことであろうが……まあ、私はそのような気分なのだ」

「そ、そうですか……」

……ああ、バレてるんだなあ。うん、まあ……。

「……ところで、どうしてそのようにお考えになったんです?」

「それは……まあ、色々と妙であったのでな……」

色々と、妙。うん。そっか。妙ね。色々とね。

「決め手は帰路だ。落とし穴に落ちたというのに、まるで道が全て分かっているかのように、帰路を案内して頂いたものでな、確信に至った」

……うん。

そうでした。そうでしたね。うん。そりゃ、不審だわ。どっからどう見ても、不審だったね!うん!はい!

えーと……以後気を付けます……。

……ということで、まあ、なんか俺の正体がバッチリバレてるけど、まあ、バレた相手がラペレシアナ様でよかったね、ってことにしとくしかねえな。うん。あーよかった、敵に気付かれてるわけじゃなくて……。……気づかれてないよね?

いや、もういっそ、気づいた奴には気づかせとけばいいか。うん。それくらいの開き直りは必要な気がしてきたぜ。

「……アスマ様。一つ、聞かせて頂きたい」

だが、ラペレシアナ様がなんかちょっと畏まってきたから、また、『ぴゃっ』て姿勢を正すしかない。

「その……我々の負傷を、全て治していただけたのは、何故だ?」

「お、俺は治してないですけど……」

一応、まだ建前ってことで粘る。粘るからね。『俺は神様じゃありませんしダンジョンとは無関係です』って立場は、一応、貫かせてもらう!

けど……まあ、うん。

「多分あのでっかいスライムは、第三騎士団の人達が皆、いい人達だから治したんだと思いますよ」

それでも、言いたいことはあるし、そこは遠慮しないことにする。した。開き直りまくり!

「ダンジョンに悪いこと、しないじゃないですか。それに、このことが大ごとにならないようにも、して頂けそうじゃないですか。だから、治してまずいことって無いだろうし……」

折角なのでついでに『大ごとにしないようによろしくお願いしますね!』と遠回しにお願いもしておく。まあ、ここはお願いしなくてもやってくれただろうけれど……うん。

「……やっぱり、いい人達が理不尽に苦しんでるのは、嫌じゃないですか」

「……そうか」

ラペレシアナ様は俺を見て、ふ、と笑った。

「そういうことなら、ダンジョンの守り神にも……あのスライムにも、感謝せねばな」

「うん、まあ、ダンジョンに神様なんて居るのか分からないし、スライムはスライムで、お礼言われたってもっちりもっちりしてるだけだと思うけど……」

「だとしても、だ」

ラペレシアナ様は、屈んで俺と視線を合わせてくれた。畏れ多い!

「……理不尽を嘆いてくれる者があれば、我らは理不尽に抗って戦い続けることができる。騎士とは、そのようなものであるのでな」

「そっかぁ……」

……なんというか、ラペレシアナ様は王女様で、同時に、騎士様なんだなあ。うーん……極めてかっこいい御仁にあらせられる。

「そういう訳だ。我々に、戦い続ける希望をくださったことに、深く感謝申し上げる」

「うん……その、ええと、俺に感謝されても、困るけど……うん」

ラペレシアナ様の感謝に、なんかもじもじして色々と誤魔化しつつ……でもやっぱり、この人達を治せてよかったなあ、と思った。

やっぱりね。人は、希望に満ち溢れてた方がいいことが多いと思うし。うん。

「理不尽に苦しむ者が居るのは、嫌、か。……そうだな」

そうこうしている間に、ラペレシアナ様はそう言って、視線を少し遠くへやった。

視線の先では、第三騎士団の騎士達が冒険者達とも交ざって飲み食いしている。楽しそうだ。

「折角、奇跡を賜ったのだ。我々も腑抜けてはいられんな」

そしてラペレシアナ様ご自身も、なんか楽しそうに見える。よかったなあ。うん。やっぱり人間、元気がある方がいいもんな。

「……暗殺者共に情報を吐かせれば、まあ、第二王子派閥の襤褸が出るであろう。そこで姉上と協力の上、兄上の尻を引っ叩いて王位に就かせる。この国の下らん動乱も、もう終わりにした方がよかろう」

……うん。

なんかさあ……こういうのって、後々になってみないと分からないこと、結構あると思うんだけど……もしかしたら、この国の動乱の分水嶺が、ここだった、のかもしれない。

いや、ここというか……光るスライム?あの、謎発光ジェネリック君こそが、この国の動乱の、分水嶺……?

それはなんか、嫌ァ!

さて。

そうして、ラペレシアナ様も騎士達と一緒になって飲み食いし始めたところで、俺はいくらか、ダンジョンパワーで例のブラッディーマリーもどきを作って提供した。

いや、昼間っから酒ってのもアレかと思ったんだけど、冒険者達が『アスマ様よォ!昨夜の、あのトマトの酒!アレ出してくれよ!な!』と御所望だったので。しょうがないにゃあ……と。

……すると、第三騎士団の皆さんが結構これを気に入ってくれたらしいので、もうこれはいよいよパニス村名物として売り出していくしかねえな、と開き直ることにする。飲め。存分に飲め。ただし節度ある飲み方で飲め!そこ!脱ぐな!ラペレシアナ様の御前にあるぞ!脱ぐな!だから脱ぐなって!

……脱ぎ始めた冒険者をクソデカスライムナイナイして隠したところで、さて。

「アスマ様ー!トマト持ってきたよ!ここでいい?」

「うん!ありがとうミシシアさん!」

エタノールは再構築で作っているが、トマトはそのまま直搾りである。ミシシアさんがスライムから収穫したてのトマトを持ってきてくれたので、リーザスさんとエデレさんに潰す作業をお願いする。俺?俺はね、エタノール作ってる。こういう時、陶器の瓶っていいね。中身がこっそり増えててもバレねえから……。

「アスマ様も飲む?」

「いや、俺は酒はまだ飲めないんで……」

で、ついでにミシシアさんが出来立てのブラッディーマリーもどきのカップをくれるんだが、それはちょっと。

「あ、そっか。エルフだとアスマ様くらいでも飲むけど……」

「エルフの19歳ってこんなもんなの……?」

ミシシアさん、見た目は元々の俺と大して変わらない年頃に見えるんだが、今、『そっかー、アスマ様にお酒はまだ早いかぁ……』と、持ってきたカップの中身をくぴくぴ空け始めた。いや、俺だってあと1年で飲酒できる齢だし……。

「アスマ様の故郷だと、19歳がこんなかんじで、お酒はまだ早いんだね?うーん、エルフともやっぱり違うんだなあ……」

「いやいやいやいやいや、こんなんではない。俺はなんか事故でこんなんなってるけど、俺の故郷の19歳は流石にこんなんではない」

ほんとにね。なんで俺、縮んじゃったんだろうね!……いや、まあ、仮説はいくつか見繕ってるんだけどさ。でも、結局のところは謎なんだよなあ……。

ということで、俺、どうして縮んじゃったのかなあ……と、ちょっとばかり悩みつつ落ち込んでいたところ。

「……アスマ様は、さ」

ミシシアさんが、ちょっと声を潜めて、俺に囁いてきた。

「世界樹がある部屋の、あの、不思議な光の向こうから来たの?」

「……知ってたの?」

ちょっとびっくりした。いや、でもまあ、ミシシアさんが一番、付き合い長いしなあ。……何か、『異世界』っぽさを感じてた、んだろうなあ。

「なんか、そんな気がしてたの。ここじゃないどこかから来たんだろうなあ、って……そんな気が、してたの」

ミシシアさんはそう言うと、空になったカップをそっと置いて、少し離れたところのベンチに座った。まあ、エタノールの補充はしばらくは大丈夫だと思うので、俺もお隣に座る。

「向こうは神様の国なの?」

「いやぁー……神様の国?うーんと、葦原の国的な意味ではそうなんだけど、多分、ミシシアさんが考えてるものとは色々と違うと思う」

なんかこう、俺、未だにこの世界の宗教観、分かってねえからなあ……。でも多分、ミシシアさんの言うところの『神様の国』は、なんかこう……妖精や精霊いっぱいのメルヘンランドなんだろうから、まあ、違いますね!

「もっと現実的なところだな。こっちよりももっと系統立って動いてる、かも。あと、情報の行き来がすげえ早いし、多い。それは良し悪しだけど」

他にも科学の発達とか、色々とあるけども……まあ、この世界と俺の世界の一番の違いって、やっぱり、行き来する情報の量だと思うよ。インターネットってのは良くも悪くも、滅茶苦茶に影響がデカかった。本当にそう。

「……いつか、向こうに帰っちゃうの?」

ちら、とミシシアさんが俺の方を見る。

……うん。そうだよな。俺、大分この村の運営に携わってここまで来ちまってるけど、帰るんだよなあ。

で、それを隠しては、おけないわけだ。

「……うん。帰るよ」

隠しておくのは、流石に不誠実ってやつだ。それは俺にも分かるので……。

「帰るために、世界樹を育てようとしてる」

これは、ちゃんと言っておくことにした。

ミシシアさんにとって、世界樹というものが特別なものだっていうことは、もう知ってる。

……いや、知ってるっていうか、なんとなくそうだろうな、って察してるだけで、実際、どれくらい大切なのか、どんな意味があるのか、全部知ってるわけじゃない。

多分、俺が思ってるよりずっと、色々あるんだろうな、とは、思う。……ミシシアさん、エルフの里でなんか色々あったっぽいしな。それ考えると、まあ……そんなに大切な世界樹を、俺が別目的で利用しようとしてる、ってのは……どう、なんだ?とは、思う。

思うからこそ、言っておかなきゃな、と思った。これでもしミシシアさんが『それは嫌!』って言うなら、また別の方法を探すか、はたまた、譲歩してもらえるように交渉する必要があるだろ、と。少なくとも、黙ってやっちまうのは違うだろ、と。

……なんだけどね。

「そっか!じゃあ私とアスマ様はやっぱり、運命共同体、ってことだね!」

ミシシアさんがそんな風に言ってにこにこするもんだから、拍子抜けした。

「……いいの?」

黙って利用してたようなもんだぞ、という引け目はあるんだが、そんな俺の手を取って、ミシシアさんはぶんぶん振り始めた。

「うん!いい!世界樹が育つのは私にとっても嬉しいことだし!アスマ様の協力があったら、もっともっと、世界樹が元気に育ちそうだし!いいことづくめじゃない!?」

そ、そういうもんなの!?いいの!?

……まあ、いいんなら、いいかあ?うん……?

「それに、アスマ様はさ、お家に帰れないのは……やっぱり、寂しいでしょ?私だって、お家に帰れないのは寂しいって、知ってるから」

「そっかぁ……」

ミシシアさんは、俺のことを小さな子供だと思っていて、それで『お家に帰してあげなきゃいけない』って思ってるのかもしれないけど。でも……うん、まあ、勘違いはあったとしても、利害は一致するし、細かいところは気にしない、ってことで、いいのかな?

「アスマ様が居なくなっちゃうのは、寂しいけどさあ……」

へにゃ、と、ちょっと情けない笑顔でそう言って、ミシシアさんはそれから、俺の手を取ったまま立ち上がった。

「でも、さ!寂しいのは置いといて……とりあえずはさ、一緒にがんばろ!ね!世界樹大きくするのに協力して!」

なので俺もベンチから立ち上がる。立ち上がって、一緒に手をぶんぶん振る。

「……うん!よろしくミシシアさん!」

「よろしくアスマ様!」

色々と、思うところはあるけれど……今はそういうのいいや。当面の利害は一致する。だったら、短い間かもしれないけれど、それでもまあ、一緒に頑張る、ってことで!

俺達は手を取り合ったまま踊り出した。嬉しい時には踊るに限る。

が、ミシシアさんは相変わらず軽やかなエルフの舞踏だし、一方の俺はソーラン節なので全くかみ合っていない。まあ、これはこれで……。

そうしてお祭りめいた騒ぎは、夜まで続いた。そして夜になったら逆に皆疲れてきちゃって、『さっさと風呂入って寝るか……』ってなった。健康的である。

「ふぃー……やっぱり風呂って素晴らしい」

なので俺も、温泉に入りに来た。まあね。今日は色々あったことだし、俺も温泉入るかなあ、って……。

「……そして眠い」

で、風呂入ってあったまったら、眠くなってきた。そうなんだよな。俺、小学生ボディなんだった。なんか普段は滅茶苦茶元気なのに、いきなり眠気がガクッと来るんだよなあ……。子供の『電池切れ』みてえな状態が、今、俺に襲い掛かっている!

「お、おいおい、大丈夫かアスマ様」

「あ、うん……ちゃんと風呂の中で寝ます」

「風呂の中で寝るのか!?」

あ、いや、違う。布団で。フロンの中で寝ます……。

……と、うつらうつらしていたら、一緒に風呂入ってたリーザスさんが『ああもう、上がるからな!』って俺を担いで風呂を出始めた。

出ちゃったもんはしょうがねえ。俺もなんとか気合で起きて、体拭いて、服着た。ヨシ。

「さて……家まで運ぶぞ」

「お世話になります……」

まだちょっと頭濡れてるけど、それは運ばれてる内に多少乾くだろ、ということで、そのままリーザスさんにおんぶされることになった。いつもすまないねえ……。

……そうしてリーザスさんに運ばれていると、やっぱり気になる訳だ。

「……リーザスさん、騎士団に帰るの?」

俺自身が帰るのなんだの、って話、してたし。で、ラペレシアナ様の方も色々変化があった訳だし、そもそもリーザスさんとしては、腕と目が戻った以上、第三騎士団に居られない理由は無い訳で……いや、王城に居るっていう、元嫁と間男に会いたくないってのはあるだろうけど……。

「いや、帰らない」

けど、リーザスさんはそう言って、背中の俺を振り返りつつ苦笑した。

「この腕と目と……同僚達の分の恩くらい、返させてくれ」

「気にしなくていいのにぃ……」

律儀な人だなあ、と思いながらおんぶされていると、リーザスさんは笑いながら『よいしょ』と俺を背負い直した。

「……それに、ラペレシアナ様が城にお戻りになった後は、この村も色々と、あるだろうしな……」

……えっ。

「人が来るようになったら、忙しくなるだろう?なら、男手はあってもいいはずだ」

……うん。

そうだなあ……そっか。うん。これからこの村、もっといっぱい人が来るようになる、はずだもんなあ。

ラペレシアナ様の顔の火傷痕が治ったことはすぐに露見するわけだし、そうなるとその調査で人が入ることもあるだろうし、冒険者も増えるだろうし……それから、エデレさんに頼んでた移動図書館!あれにも来てもらうし、それからパニス村の特産品をもっと作って……。

「まあ、ゆっくり眠って起きてから考えても間に合うだろう。今日はアスマ様も疲れただろう?ゆっくり休むといい」

ああああ……色々と考えたいんだけど。アイデアは色々あるんだけど……それを考えようとすると、眠気がねむねむねむねむ……と侵略してきて、思考が潰れていく。

……駄目だ!寝る!運んどいてください!よろしく!

ってことで、オヤスミィーッ!