軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そして、神になった!

「おうちかえる」

「まだ帰っちゃ駄目!」

「おうち……おうちかえる……」

「スライムに埋もれるだけにしておけ……」

そうして俺はリーザスさんが提供してくれたスライムに埋もれた。埋もれていると落ち着く。全人類、スライムに埋もれるべき。特に俺。

「ま、まあ、なんだ。その……」

リーザスさんは非常に気まずそうな顔をしながら、ぽす、と俺の背を叩いた。

「俺が騎士団に居た時、『諦めと割り切りが大事だ』と、ラペレシアナ様が仰っていたぞ……」

「……おおーん」

いや、分かるよ。分かるけどさ……それでも限度ってもんがあるんですわぁ。まさか、まさか俺が、本当に、なんか色々な意味で、神になっちゃうとはね、思ってなかったからね……?

「後は寝てしまうのがいいぞ。うん。折角だ、このままスライムに埋もれて昼寝するといい……」

「じゃあ、ミューミャも連れてくるね!」

……なんか色々と考えるべきことはあるんだが、スライムに埋もれ、ミューミャが乗っかった時点で、俺はもう、考えることを止めた……。

「まあ、色々と考えるだけ無駄だな!よーし!かんぱーい!」

「かんぱーい!」

ということで始まりました、第一回パニス村『アスマ様呼んだら来ちゃったよ祭~開き直った俺を添えて~』。もうね、色々と考えるだけ無駄なので俺は楽しむことにしたぜ。したぜしたぜ。俺は楽しむことにしたぜ。

「おいしい……俺、焼きトマトと焼きチーズのっけパン大好き……」

「うふふ。喜んでもらえると作った甲斐があるわねえ」

やっぱりパニス村のご飯は美味しいなあ、美味しいなあ……。この、とろっでじゅわっなかんじ……あったかできたて料理の圧倒的旨味の暴力……!

「こっちも食べてね!ケーキは私が焼いたよ!」

「うん。おいしい。おいしい。しあわせ……」

やっぱりね、美味しいものは幸せを呼ぶ。そういうことだね。もう深く考えたら色々負けだから、俺はこのままこの状態を楽しむことにするぜ!

「まず、こっちから祈って向こうからも祈ったら、俺はこっちに帰ってくることが容易ってことが分かったね。後は多分、大学生協前の大穴にダイビングしてもこっちには来られると思うんだけど……まあ、皇居に侵入するのもアレだし、基本は穴から出入りしたいね……」

「行き来できるってことだよね?またアスマ様、こっちに来られるってことだよね?」

「うん。まあ多分そういうことになるね……。向こうのインペリアルクソデカトゥリーの根っこに連れてこられる分には、祈られた場所に召喚されちゃうっぽいんだよなあ……。このあたりももうちょい色々条件調べたいところではあるけど、まあそれは追々ってことにしよう」

色々と検証は今後も必要だが、もうね、色々と分からないことだらけだから検証どころじゃねえな……。そもそもこっちにちゃんと戻ってこられるかはちょっと心配だったし……。

が、ふと、ミシシアさんがちょっと心配そうな顔になって、眉間に皺を寄せていた。

「……あの、アスマ様。呼んじゃって、大丈夫だった?」

「え?うん。まあ、色々分かって正気度が減ってるけど、それは俺には最早どうしようもないことだし……向こうの世界へ戻る方法は確立されてるから特に問題は無いね」

……呼ばれちゃったことによる弊害があったとしたら、俺がなんかちょっと正気じゃなくなったくらいなものだね。だからまあ問題ない問題ない。美味しいもん食べて温泉入って昼寝したら回復するだろうし。

で、あとなんか色々と俺にはどうしようもないことが起きている気がするが、それは俺にはどうしようもないのでどうしようもないのであった。どうしようもないということは、どうしようもないということです。

「あ、でもまた向こう戻らなきゃ……。サンプル持って帰ってきてねって言われたんだけど、一体何持って帰ればいいんだろうなあ……。とりあえず世界樹の樹液を再構築で複製しまくって持って帰るかぁ……?あ、でもいっそ教授陣こっちに連れてきちゃった方が早いな……?」

今後のことを考えると、やっぱり教授陣を片っ端からこっちにご招待しちゃった方がいい気がしてきた。で、『こういうもんがあるんですけどどうしましょうね』ってやるのが手っ取り早い。間違いない。ただし教授陣は全員正気度が減る。でもね、研究者の正気なんて、元々時々消えるもんだからね……。

「後は、ダンジョンの親が俺の世界そのものだとしたら、各地にできちまう子ダンジョンの法則とかを探して、そっちを片っ端から潰していくことになるんかな……。或いは、もういっそ祈って何とかしちゃう?何とかしようと思えば何とかなっちゃう気もするね……?」

「そうだな、もしかすると、より多くのダンジョンにアスマ様の脳を吸収させていくと、より一層、祈りが通じるようになっていくかもしれないしな……」

「あ、そういうのもあるのか……?いや、待てよ?となると、より俺の世界が俺に侵略されていくことに……?あっ駄目だそういうのは考えないことにしよう。なんか都合よく上手くいくようになるってだけ考えることにしよう。そうしよう」

今後のことを考えると、こっちの世界の平和って意味でも、俺の世界での国防とかそういう問題を考えても、『ダンジョンおよび世界を繋いじゃってる割れ目を片っ端から潰していく』ってのは急務なんだけども……いや、まあ、それは最悪、あのインペリアルクソデカトゥリーにお祈りしたらなんとかなるかもしれないし。

そもそも、考えると健康に良くない!健康に良くないからもうこれは考えないこととして……えーと、後やらなきゃいけないことは何だ?他に大穴開いちゃった箇所が無いかどうか探すところから?

あーもうファンタジー学っていうよりは自然災害対応みたいになってきちゃってるか?でも実際そうなんだからしょうがないよなあ……?

「……アスマ様だなあ」

「え?うん、俺ですよ」

俺が『あれやってこれやって教授呼んであれ見せて……』と考えていたら、ミシシアさんがくすくす笑っていた。いや、笑われても。これから教授達に起こる悲劇を笑われても!

「なんかね、こういう風に考えてるの見ると、やっぱりアスマ様だなあ、って思って」

「そう?まあ俺は考える人なので……」

ということでオーギュスト・ロダンの『考える人』のポーズを取りつつキメてみたところ、『変なポーズ……』との感想をいただいてしまった。失礼な。地獄の門の上で考えてる人の由緒正しいポーズだぞ!確かに俺としても、『なんかよくよく見ると変なポーズ……』って思うけども!

「……ふふふ、アスマ様だぁ!」

「あ、うん。俺ですけど……?」

ミシシアさんはにこにこ嬉しそうにしてるんで、えーと、まあ、いいことだな。うん。俺が俺っぽいとミシシアさんはなんか嬉しいってことなら、まあ、今後も俺はこの調子だから、存分に嬉しくなってもろて……。

……ということで、俺は色々忘れて飲んで食べて楽しんだ。こういう時には色々放り投げるに限る。

で、すっかり丸一日くらいパニス村を満喫して……さて。

「じゃ、そろそろ帰るかぁ……。で、1人2人くらい教授連れてきてえなあ……よし!連れてくるかぁ!」

俺はそう決意した。決意しちゃったら後は速い。さっさと前回同様に儀式の準備をして、今度はちゃんと事前に全裸になった上で服を一式用意してから19歳ボディに戻りました。一部の村人には『折角のちび神様だったのに!またかわいくなくなった!』と泣かれました。なんでや!ええやろ!

「アスマ様、もう帰っちゃうの!?」

ミシシアさんにもなんかすごく寂しそうな顔をされてしまった。なんでや!……いや、まあ、こっちは分からんでもないけど!

「うん!俺、今、向こうでは『樹の根っこによって誘拐されて消息不明』状態だからまずいと思うんで!それで、またすぐこっち戻ってくるからよろしく!」

「あっ、すぐ戻ってくるの!?」

「うん!教授数名、道連れにしてくるから!」

またすぐ戻ってきますって、と宣言していけば、ミシシアさんはにこにこ顔に戻った。なんというか、この人こういうところ、いいよなあ……。

「戻ってきたら今度はしばらくこっちに居てね!」

「まあ、そうなると思うよ……。教授陣が帰りたがらないと思うからね……」

科学の徒たるもの、こんな世界でこんなファンタジーなの見つけちゃったら、そりゃ、色々解明したくなっちゃうよなあ。うん……。

……ま、そうやって色々試していけば、いつかは色々と、分かってくるんじゃねえかな。今はとっかかりすら見つかってない状態だが、まあ、多くの人を巻き込んで色々と進めていけば、いずれは、何かが出来上がる……と思う。

そうだ。地道な基礎研究が未来を創るのだ。ということで、この一歩も無駄ではないと信じて頑張ることとする!

「じゃあ客室用意して待ってるからねー!」

「うん!ありがとー!お土産持ってくるからねー!」

「わーい!楽しみにしてるねー!」

「気を付けて行ってくるんだぞー!」

……ということで、俺はミシシアさんとリーザスさんにまた見送られつつ、世界樹の木材でできた階段をスタコラと上っていく。

まあね、どうせね、すぐまたこっちに戻ってくる羽目になるんだろうけども……。

……ま、この行ったり来たりが楽しいのは確かなので、一生これでいいな。うん。よしよし。

……そうして、一週間後。

「ようこそ!ここはパニス村だよ!」

「飯は食わないと意味がないぜ!」

「おいおいおい、あんたらパニス村は初めてかァ?俺が道案内してやってもいいんだぜェ?ケヒャヒャヒャヒャ!」

「ナイフ舐めるかァ!?ほぉら、見てみろよ!今日のナイフにはよォ、とっておきが塗ってあるんだぜェ!?」

……見事!パニス村の愉快な仲間達に囲まれて、『わ、わぁ……』と震えている教授陣の姿がそこにあったのである!

更に。

「アスマ様ーっ!おかえりーっ!あっ!その人達がきょーじゅさんだね!?ようこそー!アスマ様がいつもお世話になってまーす!」

「ミシシアさん!ミシシアさんちょっと待ってくれ!恐らく教授という方々はこっちでいうところの王侯貴族にあたるぞ!?」

とっても元気なミシシアさんが走ってきて、そこへ『ミシシアさんが不敬罪で打ち首にされる!』と勘違いして走ってくるリーザスさんが続く。

……なので。

「ただいまー!あ、リーザスさん!大丈夫だから!この人達、偉い人達だけど、いい人達だからー!打ち首とかにはならないからー!」

俺は教授達ほっぽり出して、るんるんのミシシアさんが踊り出したのに合わせて踊り出す。

すると、教授陣も『あ、ここではこうするのが礼儀ですか……?』『郷に入れば郷に従え……!』と、謎のダンスを始めてくれたので、怪しい集団が生まれることになった。

……まあ、この分なら楽しく研究できそうだね!わあい!もうどうにでもなーれ!

ところで、例のナイフ舐め冒険者が今日のナイフに塗っていたのは生姜のシロップだった。喉に効くぜ!レロレロレロレロレロ!

……そうして、異世界研究およびファンタジー学が、歴史にその名を刻み始めたのである。

案の定、『異世界!?行ってみたい!』と初陣についてきたくらいの好奇心旺盛な皆さんは、悉くファンタジーパワーに目を輝かせてくれたし、お目目キラキラの彼らは数日帰りたがらなかった。

というか、『温泉と美味しいごはん……ぷにぷにの可愛い寝床……もう帰りたくない……』とか言い出しちゃった。まあね……この村、かなり癒し空間だからね……。日々の研究疲れはここで癒していただいて……。

……まあ、こんな具合で、色々なことを調べ始めて、それが徐々に広がって、どんどん色々なことが分かっていって……いずれ、未来を創るのだ。どんな未来が出来上がるかは分からないが、まあ、悪いようにはならないだろう。ならないようにする。それが俺の使命である。

科学の徒であり……なんか神として崇め奉られているこの俺の、使命……なのである。

……うん。そうなんだよね。なんか……まだ俺、崇められてるし、祈られちゃってるんだよね……。

「あ!アスマ様ー!また縮んじゃったって聞いたけどー!あっ!ほんとに縮んでる!」

「皆が祈るから!祈るからァ!うわあああん!」

ね!このように!俺は祈りを一身に浴びてるってワケ!

皆、そろそろ崇めるのはやめていただけませんかね!?村の一部勢力が『ちび神様がちび神様で居てくれますようにッ!』って祈るせいで、俺、度々小学生ボディにされちゃうんだけど!

「そしてエデレさん。寝かしつけようとするのはやめてくれませんかねェ!?」

「あら、止めないわ。だってアスマ様、昨夜もその前も、ほとんど徹夜で何か計測してたでしょう?駄目よ、ちゃんと寝なきゃ。あ、リーザスさん。ちょっとそこのブランケット、とってくれるかしら」

「やめてリーザスさん!俺、包まれたらいよいよ寝ちゃうから!寝ちゃうからァ!」

「……すまん、アスマ様。寝た方がいい。大丈夫だ。他の教授陣は今、温泉で寝ていたところを救出されてスライムに寝かしつけられているところだから……この際、大事故になる前に、全員、寝てくれ……」

俺のみならず!科学の徒が!悉く!ファンタジーの癒しパワーに負けてる!

ちくしょぉおおお!これだから!これだから研究が進まねえのよぉおおお!

……ファンタジー学がちゃんと整うのは、まだまだ先のことになるかもしれない!でもいつかは……いつかはちゃんと、研究が実を結ぶことを祈って!

ああん!もう!おやすみッ!スヤァ!