軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

沼の底へ*8

ということで、スライム大好きお姉さんへの取材は終了とした。お疲れ様でした。

「色々分かったが、色々と謎だ」

「そりゃあねえ……エルフだって、世界樹の全てを知ってるわけじゃないもの」

「あ、そういうもんなんだね……いや、まあ、そうか……」

ミシシアさんの言葉も、まあ、分かるよ。米農家さんが稲の全てを知ってるわけじゃないだろうし、ピーマン農家さんがピーマンの全てを知ってるわけじゃないだろうし……。

ね。俺だって、小学生の頃に朝顔育てたことあるけど、朝顔の全てを知った気にはなれねえ。あいつら結構よく分からんもん。俺の鉢の支柱じゃなくて、隣の青山と反対隣の新井の鉢の支柱にばっか絡んでたんだもん……。

……ということで、まあ、世界樹の情報は、『とにかくなんか、世界というか、色々繋ぐファンタジーパワーがある』というところで終了。

ついでに、『ダンジョンの主の腕輪はオリハルコンなる金属からできているらしく、そのオリハルコンもまた、なんか色々曖昧にしたりくっつけたりするファンタジーパワーがあるっぽい』ということも分かったが、なんかもう、実用できる気がしねえ。

そりゃそうだよ。なんだよこのファンタジーパワー。俺にファンタジーは難しすぎるよ!曖昧だし!再現性なさそうなこといっぱい起こるし!もう俺どうしていいのか分かんねえよ!うわあああああああ!

ここらで悩みとはサヨナラバイバイ。俺らは早速、帰路につく。

いつもの戦車で飛ばしまくり、ガタガタ揺れつつパニス村へ。

「いつもいつでも上手くいくなんて保証はどこにもないんだけどさー、でもさー、やっぱりもうちょっとなんか情報ほしかったなーと思う俺が居る」

「そうだねえ……私としても、もうちょっと色々知ってるエルフが居たらいいなー、って思ってたけど……難しいねえ」

思うのは、やっぱり情報が足りねえよ!ということである。

色々とね、なんか、『真相に近付いています!』みたいな感覚はあるんだけど、感覚だけっていうかね、実際のところ、ほとんど何も確たるところが分かってねえからなこれ。

「まあ、世界樹だからな。人間にとっては、本当に実在するかどうかすら怪しいような、そんな代物だ。実物があって、それについて知る者と話せただけでもかなり珍しいことだと思う」

「そっかー、そういうもんかー……」

まあ……うん。今回は、これだけでも情報が得られてよかったね、ってところだろう。

「腕輪の材料も分かったことだし……いや、でも樹脂から金属ができるのおかしくない……?」

「製錬過程に錬金術が関わるんじゃないか?」

「あー、オウラ様がやってるやつ?うん、もうね、俺、そうなっちゃうとわかんない……」

……謎も増えたが。だが、まあ、思っていたよりも『世界樹』と『ダンジョン』の関係は深そうだぞ、ということが分かったからな。

「世界樹の効力って……いろんなものを曖昧にして、混ぜる、ってことだよなあ」

「そうだねえ。もしかして、ダンジョンの力って、世界樹の力に似てる?」

「うーん、ダンジョンパワー自体はそんなでもないかもしれない。けど、ダンジョンの主、というものについては、その性質がある、気がする……」

……オウラ様と俺との違いは、ずっと気になっていた。

同じ『ダンジョンの主』であるのに、できることが大きく異なる。俺は科学をベースにして、元素レベルでの分解吸収再構築が可能であるのに対して、オウラ様はそれができない代わりに『錬金術』とやらで、金元素が無いところから金を生み出すことができていた。それでいて核融合してるわけでもないっぽい。こわい。

これ、なんとなく『ダンジョンの主の知識をベースにしてダンジョンパワーの発揮のされ方が違うのかなー』って思ってたんだが……さっきの、スライム大好きお姉さんの話を聞いていて、思った。

『ダンジョンの主の知識および認識と、ダンジョンパワーって、かなり曖昧で混ざり合ったものだよなあ』と。

……というか、だな。

「ダンジョンの主とダンジョンって、曖昧で混ざり合ったもの……?」

「ええ……?」

いや、ダンジョンパワーの発揮のされ方とか、ダンジョンの主ごとの違いとか考えると……なんか、そういうかんじが、しないでもない、んだよな……。

ほら、ウパルパダンジョンはウパルパの『酒!』という思念が混ざりに混ざった結果、呑兵衛ダンジョンと化してしまったわけだし。カラスダンジョンはラベンダーのお風呂になってるわけだし。

いや、うーん、設計者の思想は設計者の思想で、別に混ざり合ってるものではない……か?あー、駄目だ、俺、考えがドツボに嵌ってる気がする!一旦世界樹から離れて考えた方がいいか!?

「成程な……。ダンジョンの主であるアスマ様が、ダンジョン自体と混ざり合った部分がある、ということなら納得がいくか」

が、俺が考えからフライアウェイしようとした途端、リーザスさんがそんなん言い出した。

「いや、パニス村のダンジョンでは、何故、魔物がスライムしか生まれないのだろうか、とずっと疑問に思っていたんだが……」

「……うん」

おや、と思いつつ考えに着陸し直して聞く。……すると。

「エルフの里のスライムダンジョンは、こう、恐らく、ダンジョンの主になったスライムが意図してスライムを生み出している訳だな?」

「だと思う」

「だが、パニス村のダンジョンについてはそうではないのだろう?なら、それは、ダンジョン自体の性質がそう、ということじゃないのか?」

……そういえばそういう問題もあった!

俺、すっかり忘れてたけど……俺のダンジョン、なんかおかしいんだった!

それってもしかして……『俺がおかしいから』ってことォ!?

「うん!意図しなくてもスライムが勝手に湧く!そして、スライムしか湧かない!なんかうちのダンジョンだけおかしい!なんでェ!?」

「私達が聞きたいところだよ、アスマ様ぁ……」

ミシシアさんは優しいので『それはアスマ様がおかしいからだよ!』とは言わないでくれるが、多分、思ってることは同じだ!俺が変だからダンジョンも変!そういうことである!多分!多分な!

「ってことは、ダンジョンって、俺……?俺はダンジョン……?主じゃなくて……?ダンジョンさんっていう、俺とはまた別の意思が無いと色々と説明が付かないんだけど……ああああんもおおおお!ヤダー!考えるのもうヤダー!」

が!謎が解けたような解けてないような、そんなところで俺の精神力はもう尽きた!尽きました!品切れです!俺の精神力、もう品切れ!なので本日は閉店します!ガラガラぴしゃん!

「村に帰ったらエデレさんにぎゅってしてもらおうね、アスマ様ぁ」

「うん……」

……自ら、自分が小学生ボディであるところを受け入れちゃっていいんだろうか、と思わないでもないんだが、今はただ、安らぎたい。温泉入ってエデレさんに埋もれて飯食ってスライムに埋もれて、寝ながらまたスライムとミューミャに埋もれよう。そうしよう……。

……だが、一つだけ、パニス村に帰る前に寄っておきたいところがある。

あと、実験してみたいことも、ある。

「ちょっと思いついちゃったことがあるから王都寄ってもいい?」

ということでやってきました王都。そして金鉱ダンジョン。

「オウラ様ー!オウラ様ー!」

ダンジョンの奥の方で呼びかけたら、もそ、と壁が動いてオウラ様の部屋へ続く階段が生じた。なのでいつもの如くそこへお邪魔します。

「お邪魔します!オウラ様ー!」

「ああ、いらっしゃいませ。どうされました?」

そしてオウラ様がにこにこ出迎えてくれたところで、早速、聞く。

「突然ですみません。ちょっと聞きたいことがあって……その、ここのダンジョンの魔物って、オウラ様が自分で作ってらっしゃいます?」

「へ?」

……なんか、ここが滅茶苦茶重要な気がして、俺はどうしても、これをオウラ様に聞きたかった。

「いえ、普段は、意識して生み出すことはあまり無いですね……」

「ああああやっぱり!じゃあ、意識しなくてもオウラ様のダンジョンではなんかいいかんじに魔物が出たり出なかったりするんですね!?」

「ええと、まあ、はい。魔物はできるだけ出したくないのですが、弱い魔物がいくらか、出ることはありますね。まあ、生まれ次第、こちらで処理することもありますが」

オウラ様は『そりゃそうだ』みたいな顔をしているが……つまり!パニス村ダンジョンでスライムばっかり出てくるのは、俺のせいかもしれない!その説が濃厚になってきた!うわああああ!

「突然、どうしたんですか?」

「いや、ちょっと色々と悩んでいまして……ダンジョンの主とダンジョンって、同じものなのかな、と……いや、なんか違うな、えーと、ダンジョンって、ダンジョンの主の影響をどれぐらい受けてるんだろう、っていうか……」

オウラ様が心配してくれるので、折角だから話してみる。するとオウラ様は、ふむ、と一つ頷いて……それから、首を傾げた。

「私は意識したことはありませんね。勿論、ダンジョンが私の意に反して動くことはありますが、それは『まあ、ダンジョンとはそういうものである』と思っているので……」

「あ、ダンジョンがオウラ様の意思に反して動くこと、あるんですか……?」

「まあ、魔物の発生は度々起こりますからね。他にも、特定の罠を仕掛けようとすると反対されるような感覚はありますよ」

「そうなの!?」

なんか初耳のことがバンバン出てきちまったんだけど、そうなの!?ダンジョンが反抗期!?そういうの、あるのぉ!?俺、そういうの感じたことは今のところ一回も無いぞ!?いや、まあ、スライムが勝手にもちもち生産されてる部分は除く。

「そういうわけで、私はお役には立てそうにありませんね……」

「いや、滅茶苦茶役に立ちました!ありがとうございます!」

オウラ様の話、なんかちょっと参考になったというか、こう……考えがまた沼に沈んだというか。うん。まあとにかく……これは前進、だと思うんだよな。うん。

「あの、オウラ様。最後にもう一つだけ」

「はい、なんでしょうか」

前進ついでに、もう一歩。

俺の記憶には無いことを、オウラ様に聞いてみる。

「オウラ様、ここに居た『前の』ダンジョンの主って、死んだ後、どうなりました?その死体とか」

……半分ぐらい、『多分、そういうことなんじゃないか』と気づきつつ、俺はオウラ様の答えを待つ。

「ええと……すみません。あの時のことは、当時混乱していたこともあって、あまりはっきりとは覚えていなくて……」

オウラ様は申し訳なさそうにそう言いつつ、『うーん』と唸って頑張って思い出してくれて……。

「そう、ですね……。少なくとも、熊の死体を処理した覚えは、ありませんね。私、熊肉は好物ですのであったら食べたと思いますが……。まあ、記憶にないということは、自分で処理していない、ということでしょうから。恐らくは、ダンジョンに吸収されたのではないかと思います」

……そういう答えが返ってきたのである。

やっぱりダンジョンは、主とは関係なしに動いてるっぽい。分解吸収みたいなことだって、できるっぽい。

つまり、ダンジョンにはやっぱり、意思があるんだ。

……誰の?