軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界樹*4

そうして、俺とミシシアさんはちょっと話すことになった。

「ええと、そうだよね。世界樹のことを話さなきゃならないよね」

ミシシアさんはそう言うと、少し言葉を選ぶように『うーん』と唸った。……そして。

「世界樹っていうのは、世界を繋ぐ樹、とも言われていて……その土地の魔力を増やしてくれるの。勿論、世界樹自体も魔力が特別に多くて、枝は最高の杖や弓の材料になるし、葉は最高の薬になるんだ」

成程ね。まあ、万能の樹、ということか。魔力を増やしてくれる樹、ってことなら、ダンジョンにとってもありがたい存在だな。

「世界樹は私に力を貸してくれて、その代わり、私は生涯をかけて世界樹を守るの。世界樹の番人だから」

あー、成程ね。ミシシアさんと世界樹は共存関係、みたいなかんじだろうか。花と蜜蜂の関係、みたいな。

「それでね……その、アスマ様には事後承諾になっちゃうんだけど……私、ずっとここに居ていいかなあ」

「ずっと?……ええと、うん、まあ、いいけど……」

ミシシアさんのお願いに、俺は若干、身構える。いや、だって、『ずっと』だぞ?ハーフとはいえエルフの、『ずっと』だぞ?……御年101歳の、『ずっと』って……そりゃ、マジのマジで、『ずっと』なんじゃないの?と。

「世界樹はその土地を離れられないから、私もこの土地に居ないと」

「あー、世界樹の番人なんだもんなあ。うん、勿論いいよ。ずっと居なよ」

「本当に?よかったー。断られちゃったらどうしよう、って思ってた!……アスマ様ならそんなこと言わないだろうな、とも、思ってたけど!」

うん、まあ、ミシシアさんがそうしたいっていうことなら、『ずっと』居てくれてもいいぞ。

……一方の俺は、元の世界に帰りたいわけだから、ずっとは居られないんだが。うん……。

「でも、ミシシアさんはいいの?ここで暮らすことになって……」

一方で、ミシシアさんのことについて少し気になる。だって、『ずっと』ここに居る、って決断を彼女は下したわけだ。もしかしたら、彼女の長い一生を、ずっとここで過ごすことになる、という……本当に重い決断を。

「うん。勿論!」

だが、ミシシアさんは笑顔でそう言う。

「私、ここの村の人達が好きだし、このダンジョンも……ええと、ダンジョンだけど、すごく気に入ってるし!スライム達もかわいいし……何より、務めを果たせて、エルフの仲間として、誇らしい」

ミシシアさんは、『エルフの仲間として』のくだりで少し表情を曇らせていたが、すぐにまた、笑顔になる。

「本当に嬉しかったんだ。だって、こんな私にも許可をくれる神様に出会えたんだから!」

ミシシアさんの嬉しそうな顔が、俺に向けられる。……俺としては、何と返していいものやら分からない。ちょっと恥ずかしい気分だ……。

「私は多分、来るべくしてここに来て、なるべくしてここの世界樹の番人になったんだと思う。そういう、運命だったんだと思うんだ。……そう、思っても、いい、かな」

けれど……うん、そうだな。

ミシシアさんが前向きなんだから……俺が深刻に考えるのも、なんか違うよな。

俺が言うべきことは、ただ……肯定!

「……うん。思っていい!」

うん。運命、なんて、俺は信じちゃいないけれどさ。……でも、『運命だ』って、思ったって、いいよな。そう思うよ。

「え、えーと、じゃあミシシアさん、ダンジョンに住む?部屋、作るよ」

ということで早速、ミシシアさんのお引越しの話を始める。世界樹の傍に居るんだったら、この最深部に彼女の部屋を作った方がいいだろうし、ここから地上までの道を整備し直して、ミシシアさんにも通れる道を作らなきゃいけないし……。

「えっ、流石にそれは悪いよ、アスマ様ぁ。大丈夫!パニス村から通うし……」

あ、そうか。そうだよな。俺ばっかり先走った気がする。

そうだそうだ。ミシシアさんはパニス村から通えばよくて……。

……ん?

「そもそもパニス村って、畑に塩撒かれた上に、例のゴロツキ共が暴れた後なんじゃなかったっけ……?」

「……あっ」

そもそも今のパニス村って、人、暮らせるのか……?

ということで、エデレさんを連れてきた。そして早速、パニス村の今後について相談だ。

「そうなんだよねえ……建物も壊されちゃってたから……」

「建物は建て直すにしても、塩は、どうしようもないのよねえ……。今後も、アスマ様に畑スライムをお借りすることになるわ……」

ミシシアさんとエデレさんは、2人で深々とため息を吐いている。でしょうね。

「あいつら、ほんとに……土地を、家を、何だと思って……」

「塩を大量に用意できるようなお金があるなら、私なんかに言い寄っていないでちゃんとした家のお嬢さんを狙えばよかったのに……」

「あー、腹立ってきた!早くギルドの人、来ないかなぁ!」

「パニス村が受けた損害の補償は……得られないでしょうけどねえ。でも、彼らを引き渡せば少しはお金になるだろうから、それに期待しましょう。はあ……」

……まあ、今後のことを考えると気が重いよな。

家を建て直すのだって大変だろうし。村の畑はもう向こう数年は使えない訳だし。頑張れば畑の塩をどうにかできるってもんじゃないし。

何だろ、塩に強い作物を植えまくるとかすればいいんだろうか。沿岸地域の植物とか?いや、でもそれを持ってくるのも手間だろうしな……。

まあ……あのゴロツキ連中も、これを狙ってたんだろうしな。こうやって、パニス村に誰も住めないようにして、行き場を無くしたエデレさんを連れて行こう、っていう……。あーくそ考えると腹ァ立ってきたぜ。やっぱりあいつら殴っていい?

……その時だった。

もちっ……と、俺の足に、もっちりした何かが触れる。確かめてみるまでもないな。スライムである。

「……あっ、何も植わってないスライムだ」

が、そのスライム、何も頭に生えていない!ということは新入りだな!ようこそ!お前も畑になるんだよ!

「あ、そっちにも居る」

更に、向こうの方から数匹まとめて、もっちりもっちり、とスライム達がやってくる。増えちゃったよ。まあ、もう俺一人じゃないからね。人手はある分、スライムが増えるのはありがたいけど……。

……うん。

「あの、ミシシアさん、エデレさん」

折角だ。俺は、ミシシアさんとエデレさんに提案することにする。

「ミシシアさんもエデレさん達も……皆、ここに住まない?」

「家は建てるよ。井戸とかも作れると思う。で、畑はこの通り、増えたし」

スライムを一匹、もっちりと抱え上げて『ほら』と見せる。小学生ボディにはスライムはちょっとデカ過ぎるんだけどな。両腕いっぱいに抱えて、俺自身も半分ぐらいスライムに埋もれるみたいになりながらも、まあ、スライムのアピールはできた、と思う。

「パニス村を捨てろって訳じゃなくて、その、今後の防犯のことも考えて、いかがですか、っていう……」

……まあ、期待半分お願い半分ぐらいで提案してみた。駄目なら駄目で別にいいよ、っていう……今まで通り、畑に通ってもらうスタイルでも全く問題無いし。パニス村の復興は、俺も手伝えるし。

でも、ならいっそこっちに全員お引越し、ってのも、悪くない、と思うんだけど……。

ということでいかがでしょう、とミシシアさんとエデレさんを見つめていると。

「え……だったら、私、本当にこのダンジョンに住んじゃうよ?いいの?」

「うん!いい!」

早速、ミシシアさんが移住を決めてくれた!いらっしゃいませーッ!

「私達も、いいの?なら、希望者を募って、本当にここへ移住しちゃうわよ?」

更に、エデレさんもそう言って花が綻ぶように笑ってくれるから、俺、満面の笑みになっちまうね。

「やったー!エデレさん達も来てくれるんだったら、私もより一層頑張らなきゃ!」

やったね!これでここに村ができるって訳だ!

……ここを守るダンジョンとしては、ますます責任重大だが……同じ轍は踏まない。俺はここを、皆が楽しく暮らせてスライムがぽよぽよ元気に動き回る、住み良い場所にしてやるぞ!

「世界樹の恩恵があるから、このあたりの土地の作物は育ちが良くなると思うよ!魔力も増えるから、水とか、薬草とか、影響すると思う!」

「土地かぁ。成程……それはスライムにも適用される?」

「スラ……イム、は、ごめん、わかんない……。いや、だってスライムに何か植える人、初めて見たもん……」

……まあ、まだまだ分からないことも多いし、色々手さぐりになるんだろうけど。

でも、こうしてダンジョン村が正式に建立される運びとなった今日は、俺にとっては記念日である。

……ミシシアさんも、どうか気負わず、できるだけ楽しくやってくれたら、嬉しいね。

「よーし!じゃあ、私はこのダンジョンに世界樹ごとお世話になるつもりだし!というか、村ごとダンジョンのお世話になるわけだし!このダンジョンを守るお手伝い、私にもさせてよ!」

さて。

そうして早速、ミシシアさんは元気いっぱいにそう提案してくれた。いやあ、ありがたいね。

「ところでアスマ様ぁ。このダンジョンって、どういう防衛機能があるの?何か、考えが一応、あったんだよね……?」

……うん。本当に、ミシシアさんが来てくれるとありがたい。あの世界樹の枝を矢にして放つやつ、滅茶苦茶強かったわけだし。いやー、ありがたいなー。

「……俺、迷路に誘い込んで、途中でなんとか撒いて、それで餓死させるつもりだった」

「わ、わあ……」

……何せ、俺、ダンジョンとしての備えがちょいと甘かったっぽいからね。うん……。

「その……ダンジョンの防衛、ってことなら、私も戦えるから、戦力に数えてくれていいよ?ほら、折角、世界樹のおかげで強くなれたし!魔法の方はからきしみたいだけど……弓については、見事なものだったでしょ?」

「うん」

というか、あの矢、魔法的なやつじゃないのか?駄目だ、俺にファンタジーは難しすぎる。

「でも……他にも何か、用意しといた方がいいと思うよ、アスマ様ぁ」

そうだよな。うん。

……侵入者が居る時には、分解吸収や再構築ができない。どうも俺は、そういうルールに縛られているらしいので……そこのところも考えて、予め罠を仕掛けておくとか、そういう工夫が必要になるんだろうが……。

「うん。俺もそう思う……。その、ミシシアさんじゃ不足だ、っていう意味じゃなくて。交代の人が居た方がいいだろうな、とか、そういうのも含めて……」

「分かってる。優しいね、アスマ様は。うふふ……」

あああ!またぎゅっとやられてしまった!この人は本当に俺のこと子供だと思って!全く!

……さて。

ぎゅっ、はさておき……一体、どうしたもんかね。

これからのダンジョン防衛は俺だけじゃなくて、ミシシアさんと世界樹、そしてパニス村の皆のためにも、絶対に完璧じゃなきゃいけないわけだ。

うーん……何か、いい案はねえかな……。