軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンハザード*4

「……アスマ様って、2つのダンジョンの主になれるの?」

「わからん」

「……腕輪を付けた途端に死ぬ、とか、ないよね?」

「えっやだ怖いこと言わないでよぉ……」

ミシシアさんと2人で『やだぁー……』とやっている俺だが、実際、ダンジョンの主の腕輪を2つ以上装備するリスクはめっちゃある。分からないことだし、試すわけにもいかねえし。どうしようねこれ。

「となると……やはり、スライムをダンジョンの主にする方が、いいか……?」

「えええ……いや、それもなんかなあ……結局、スライム任せになっちゃうってのは、リスクでもあるし……」

どうしようね、という気持ちでいっぱいの俺だが、まあ、やっぱりここは、2択のような気がする。

ダンジョンというものに慣れている俺がダンジョンの主を兼任するか。はたまた、適当なスライムをダンジョンの主にして、ここももっちりダンジョンにしちまうか。そのどちらかだ。

まず、第三騎士団の誰かとかラペレシアナ様とか、そういう人達……まあ、人間をダンジョンの主にする、っていうのは、十分に考えていいものだと思う。

人間がダンジョンの主になる分には意思の疎通ができるし、意思の疎通ができればダンジョンの構造とか、ダンジョンで生み出すものとか、防衛の手段とか、色々やり放題。俺自身がアドバイザーになることも可能!ならばまあ、難攻不落のダンジョンも造れそうな気がする!

それに何より……この、吹っ飛んじまったタワーに残った、数々の情報。そういったものを読み取って、自分達のものにすることができる、と思う。

特に、この瓦礫を全部撤去していくのはかなり骨だからね。ここらへん、一気に全部片づけて、生き残りが居ないことを確認するだとか、誰がここに居たのか情報を得るだとか、そういうことをやりたいなら、最低限、意思の疎通ができる誰かがダンジョンの主になる必要がある。

……が。

生憎、ここはまだ隣国だ。隣国なのである!

……その隣国のダンジョンを、俺達……『王女殿下率いる王立第三騎士団』が占拠したとなると……こう、国際問題に発展しそうな気がする。

そう!ここでラペレシアナ様や第三騎士団の誰かがダンジョンの主になっちまうと、後でめんどくさいことになりかねないのだ!

じゃあ、王城の人じゃない人ならどうよ、っていうと……まあ、リーザスさんは第三騎士団に居た人だから、あんまりよろしくない、と思う。

で、ミシシアさんは……パニス村ダンジョンに世界樹があって、彼女が世界樹の守り人なわけだから、他所の土地のダンジョンの主になっちゃうのはよろしくない。

……となると、まあ、俺、か……?っていう、結論に至るんだけど……その場合はその場合で、2つ以上のダンジョンの主になっても大丈夫なものなんだろうか、っていう疑問に行き当っちまうんだよな……。

……駄目だった場合、即死の可能性もある。こわい。とてもこわい!

一方、適当なスライムをダンジョンの主にする方法。

こちらは……えーと、まあ、スライム頼りになっちゃうので、ダンジョンがめっちゃ心配。

が、スライムはスライムで、意思の疎通ができないという点はメリットでもあって……つまり、隣国との国際問題に発展する可能性が、低い。

『なんかよく分かりませんが、そこら辺のスライムが勝手にダンジョンの主になって勝手にダンジョンを動かして勝手にスライムを増やしています!』だったら、まあ、角が立たない、というか、言い訳が立つ、というか……。

……あと、まあ、スライムをダンジョンの主にすると、かわいい。うん。そこはメリット。

さて。こういう2つの選択肢を目の前にして、俺達は悩んでいる。大いに、悩んでいる。

「どうしたらいいんだろうか……」

「ううーん……私、アスマ様じゃない方がいいと思うよ」

が、悩んでいる俺に、ミシシアさんはそう、そっと話しかけてきた。

「だって、アスマ様……お家に帰るんでしょ?」

……うん。まあ、そうなんだよなあ。

俺は、元の世界に帰る。それを目的に、今、この世界で活動しているわけだ。

元の世界に帰るっていう部分は覆さないし、となると、俺はできるだけ、この世界に影響を及ぼさない方がいい、ってことになる。

……俺がここのダンジョンの主になったとして、元の世界に帰った時にここがどうなるのか、わかんないしな。うん……。

「そう、だな。アスマ様ではない者が腕輪を身に着けてしまうのが良いように思うぞ」

更に、ラペレシアナ様もそう仰った。

「……私の見立てだと、今後、国内のダンジョンが狙われる。大聖堂の連中は、間違いなく、国内の教会に連絡を取っていたものと思われる。となれば、第二王子派閥の連中も含めて、そやつらがこぞってダンジョンを狙うことになるであろうな」

「あああー……」

……ラペレシアナ様の危惧も、めっちゃ分かる。というか、多分これが起こるんだろうな、という予感はしていて、だからこそ俺達は帰国を急ぐため、このダンジョンまでの道も急いできたんだけども……。

「今、この瞬間も、どこかのダンジョンが落ちているかもしれぬ。そして、それらを奪還し……人間がダンジョンを治めるようになったならば、その先に待ち受けているものは、ダンジョン同士の戦であろうな」

ラペレシアナ様の険しい表情に、俺はもう一度、自分の中にあった問いに立ち返ることになる。

「今後、人間はダンジョンの主になるべきではない。私は、そう考える」

……技術は、人間を不幸にするのか。

人間は、技術とどう付き合っていくべきか。

結局のところ、この話はそこに帰結しちまいそうだ。

「……まあ、そういうことならここでの話はひとまず、『じゃあ、スライムで!』ってことになりますかね」

「まあ、そうしておくのが無難であろうな」

結論は急がなくていい。ひとまず、『今すぐ下さなきゃいけない決断』だけ、下せばいい。

……ということで、俺達は、車に戻って、そこに積み込んでおいたスライムに声を掛ける。

「ダンジョンの主になりたいスライム、この指とーまれ!」

……スライム達は、俺の呼びかけも気にせず、もっちりもっちり、としていたが……俺が辛抱強く待っていたところ、一匹のスライムが、うにょん、と伸び上がって、俺の指を捕まえた。

「よし!ならお前がダンジョンの主だ!よろしく!」

スライムが本当にダンジョンの主になりたくて俺の指を捕まえたのか、はたまた特に何も考えず、『なんか指立てたまま動かないやつが居るぞ』ってことで指に触ってみただけなのかは分からん。分からんが、俺はそれでもこのスライムをダンジョンの主にする!

「これで君はダンジョンの主!そぉい!」

ダンジョンの主の腕輪を、スライムの頭に、もにょっ!と埋める。するとスライムは、もにょん、と体を震わせて……。

「……温泉!やっぱりお前ら、温泉が好きなの!?本当に好きなんだね!?」

……車の外、ダンジョンの横には……温泉が、できあがったのであった!

お前らさあ!本当に、本当に……温泉が好きなんだね!

それから、俺は根気強くスライムに指示を出し、なんとかタワーダンジョンの復旧工事を行った。

……いや、こう、一応、隣国なわけで……なら、発見される前に、この瓦礫を撤去しておきたい、というか……そういう思いが、あったんだけどさ……。

「ワァオー……」

元の形に戻しておいてほしい、とスライムにお願いしまくったら、なんか、タワーがあった位置にでっかい木が生えた。うん。木。木が生えちゃったぜ。

木ってこんな急成長するの……?やっぱり、俺がダンジョンの主やってる時とスライムがダンジョンの主やってる時とで、できることが違うっぽいんだよなあ……。

「……アスマ様ぁ。全然、元の形に戻ってないよ……?」

「うん。それはもうね、スライムのセンスに任せることになるから……俺にはもう、どうしようもねえのよ……」

……そして、スライムがどんどんダンジョンを改変していくのを、俺達は見ていた。ラペレシアナ様はもう、呵々として笑ってらっしゃるんだけど、俺は胃が痛い思いでいっぱいです。

「あっ、スライム君。人間っぽいものとか、紙とか、布とか、そういうのがあったら全部ここに集めてほしいんだけど」

更に、スライムが分解吸収再構築で全部をまっさらにしちゃう前にお願いしてみたところ……新たに生えた木の根元から、もっちりもっちりもっちりもっちり、と新たに生まれたスライム達がぞろぞろ出てきて、それぞれに木の脇に寄せられている瓦礫の中へと潜っていった。

俺達が見守る中、スライム達は、もっちりもっちり、とそれぞれに出てきて、そのぷるるんボディの中に焼け焦げた布の切れ端とか、紙きれとか、人間の一部だったっぽいものとかを持ってきた!

「……あのさあ、アスマ様。もしかして、スライムがダンジョンの主をやるダンジョンだと、あんまり器用にものを消したり出したりできないのかなあ」

「……かもなあ」

エルフの森ダンジョンでもそうだったけどさ。スライムがもっちりもっちり、行列になって石とか運んでたもんね。ダンジョンパワーで一発で石を組み上げたり退かしたり、ってことはできないっぽかったから……今回も同じなのかも。

「スライムが主のダンジョンってさあ」

「うん」

「なんか……かわいいね」

「うん……」

まあ……是非は置いておくとして、今は暫し、この働き蟻ならぬ働きスライムの行列を眺めていよう。なんか……なんか、ちょっと癒されるから……。

そうして、情報の欠片が手に入った。

衣類だったのであろう焼け焦げた布切れとか。何かのメモ書きっぽい紙切れとか。後は、人間の一部とか……まあ、正直なところ、スライムをダンジョンの主にする以上、手に入れるのを諦めた方がいいよな、っていうかんじだったものがちょっと手に入っちゃったので、俺達は驚いています。

「コレを見る限り、やはり教会への連絡は行われている様子だな……」

リーザスさんが紙切れの文字を解読してくれて、ため息を吐いた。俺もため息を吐いた。やべえなあやべえなあ……。どう考えても国内情勢がお先真っ暗だぜ。

「急ぎ、帰国しなければならんな。これから先はダンジョンとの戦い、か。やれやれ……」

ラペレシアナ様は誰よりも頭の痛そうな顔をしておられる。そりゃそうだね……。

「じゃ、もう出ましょうか。このダンジョンで手に入る情報はもうここまでっぽいですし」

そして、俺は俺で、新たにダンジョンの主となったスライムに『こういう風に防衛しときなさい』とか『こういう奴にはこう動くといいよ』とか、ダンジョン防衛のアドバイスをし終えたところだったので、さっさと帰国する方に一票。

が。

「えっ、あの、このダンジョン、このままにしておくの……?」

ミシシアさんが、そう言って『いいのかなあ』という顔をしている。

……うん。

まあ、スライムがいっぱいの、よく分からないダンジョンができちゃった、から、ねえ……。

「……スライムが増える分には、世界が平和になるだけだからいいんじゃないかな。これから先、スライム農法が世界の標準になっていくんだろうし、そうなったら、この国でもスライムの需要は増えるだろうし……」

「そうだねえ……」

……うん。まあ、この国の人には申し訳ないが、このダンジョンは俺のアドバイスによって難攻不落のダンジョンになった、と思われるので……ダンジョン攻略しようとはせず、ただ、スライムの恩恵に与る目的でのみ、ご利用いただければと思うぜ!よろしくな!

「では急ぐぞ!教会は既に動いているものと思え!」

ということで、このダンジョンはこのままにして、俺達、帰ります!サヨナラ!