軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スライム親善大使*8

俺は考えた。そして、ミシシアさんとリーザスさんとラペレシアナ様とも相談した。

コレって結局のところは賭けになるよな、とか、隠蔽するんだったらマジでマスタースライム君を連れて帰った方がいいんだろうな、とか、色々考えた。

……が、エルフ側がファンタジーパワーに満ち溢れた存在であることを考えると、ずっと騙し続けることは難しい気がしてきた。

何せ、エルフ達は『大聖堂の紋章が入った首飾り』以外にもスライムが何か持ち帰ってきていることは分かっている。そして、それはそろそろいい加減出してやらなきゃいかんだろうし、となると、それを今すぐマスタースライム君に偽造してもらわなきゃいけないんだけど、ダンジョンパワーで偽造できるかはマスター君次第だ!

そこから疑われて色々と芋蔓式にバレる気がする!そして、隠蔽したものがバレた時、『隠蔽していた』というその一点をこちらの弱味にされてその後の交渉が不利になる事態は避けたい!

……あと、あのスライム大好きお姉さん。

彼女が、スライム好きのあまりダンジョンに突撃して諸々の謎を解いちまう気がした!

この点についてはもうね、満場一致!『あのお姉さんを懐柔できるだけしておいた方がいいだろうな』とか『絶対にあのお姉さん、ダンジョンの奥まで入っちゃうよ!』とか『一般的な感覚は期待せぬ方がよいのだろうな……』とか、もう、散々な評価でしたよスライム大好きお姉さん!ねえ!ちょっと!

……ということで、俺達はマスタースライム君をエルフの国との親善大使……および、こちらからの交渉の材料として利用することを決めたのだった。

即ち、彼にはこの地のダンジョンの主として、頑張ってもらう。

頑張って……エルフの里の生活向上に尽力してもらい、同時に、人間とエルフの橋渡し役をやってもらうのだ!

さて。

俺達がドラゴン肉でバーベキューしながら『酒も欲しいね』『でも流石に酒は無いね』『じゃあお茶でいいや』とやっている騎士達を眺めている間、ミシシアさんとリーザスさんが、腕輪を作ってくれている。

うん。そうだね。つまり、マスタースライム君のものになっちゃった腕輪のレプリカだね。

が、元の腕輪そっくりに作ることはしない。どうせエルフ達だって、スライムの中にあるブツをチラッと見ただけだから、細部まで整えようとはしない。ただ、それっぽければそれでよいはずである。

尚、材料は、ラペレシアナ様提供である。

なんと、彼女が『装飾品は何かの時に金銭代わりに使えるのでな』ということで着けてらっしゃった金の腕輪を提供して頂けたのである!感謝しかねえ!本当にすみませんラペレシアナ様!この腕輪の金の分は、金鉱ダンジョンさんから提供してもらってお返ししますんで!

……で、腕輪に刻む文字については、当然改変する。

具体的には、『こちらはダンジョンに選ばれた善の者です』と刻んだ。日本語で。

……日本語で。

なのでエルフ達は読めないと思う。が、この世界のダンジョン各地には俺の世界と繋がっているっぽい割れ目があるわけで、そこから日本語資料が降り注いでいないとも限らないので、一応ちゃんと意味が通る文字列にしてあるってわけである!

とりあえずこれをマスタースライム君に持たせておくとして、本物のダンジョンの主の腕輪については……。

「これでよしッ!」

「成程な……これなら確かに、腕輪は見えないなあ」

……マスタースライム君の頭のてっぺんに、そこらへんの花(ミシシアさんが選んでくれた。かわいいやつ。)を植えて、その根っこがのびのびと伸びていく前に、その根本に腕輪を隠した。

これによって、成長した根っこが腕輪を包み隠し、見事、マスタースライム君の体内にダンジョンの主の腕輪があることが分からなくなったのである!

「で、出来上がったばかりのレプリカを代わりに入れといて、と……あ、嬉しそう」

「もしかしてこっちも気に入っちゃったのかなあ」

「中々目の利くスライムであることだ」

……まあ、レプリカの方の腕輪は、明日、エルフに見せることになると思うんだけど。

その時にマスタースライム君が素直に離してくれることを祈ろう。よろしく頼むぜ、マスタースライム君……。

それからもう一つ大事なことがある。

俺はこの一晩で、マスタースライム君に色々と仕込むことにした。

「えーと、ひとまず、ダンジョンの構造はこんなかんじにするといい。いや、君の好きにしてくれて構わないんだが、最奥にはマジで誰も通れないようにね」

図を書いてマスタースライム君に見せると、マスタースライム君はもっちりもっちり、と揺れながら何かやっていた。……ダンジョンの構造、変えてるのかなぁ。だとしたら、少なくともウパルパよりはマスタースライム君の方が賢そう、ということになるか……。

「それから、温泉だな。今のままだと大自然の中、躊躇いなくすっぽんぽんになれるエルフしか利用できねえが……いや、まあ、それでいいのか……。うん、でも、室内のお風呂も作ってあげるといいと思うよ」

俺がそう話すと、マスタースライム君はもっちりもっちりと揺れながら何かやっている。……多分、今、風呂ができた。多分ね。

「あと、植物ね。折角森の中のダンジョンなんだから、地下へのダンジョン周辺に色々と食えるもの生やしてあげな。あ、果樹がいいぞ。果樹が。ほら、林檎とかパニス村でも植えてるでしょ、あれとか」

マスタースライム君が何かやっている様子なので、多分、食料も少し増えてるんじゃねえかな。多分ね。

「それから、スライムね!スライムも増やしてやれ!あ、最初から頭になんか植えといてもいい……まあそれは任せるわ」

そして多分、スライム大好きお姉さん大喜びなかんじにダンジョンがまた変わっている……といいなあ。俺、今、全然なんもダンジョンの様子見えないからさあ……明日の朝確認して、それでようやくなんだよなあ……。

……めっちゃ心配だが、今の内にマスタースライム君に出せる指示は全部出しておこう。彼にはエルフをメロメロにする役割を果たしてもらわにゃならないからな。がんばれよ、マスタースライム君!

それから、俺達は就寝。

えーとね、あれだけドラゴン肉で騒いでいた騎士達も、ラペレシアナ様の『片付け!10分後に就寝!』というすげえ号令によってぴたりと騒ぎを停め、そして10分で片付けが見事に終わり、で、ちゃんと全員就寝した。すげえ。

……尚、ミシシアさん曰く、『ここらへんの木は私に力を貸してくれないんだよね……』とのことで、いつもの木ハンモックはナシである。

が、車中泊もそれはそれで悪くない。座席を退かせるようにしてあるので、退かして、そこにマスタースライム君を敷いて、その上に、もにっ、と寝る……。

「ちょっと狭いけど寝心地いいね」

「3人で寝ることを想定されている大きさか……?」

「ごめん。多分、俺が余計なんだけど許して……」

……ミシシアさんとリーザスさんと俺の3人で1台の車に収まっていると、めっちゃ狭い。が、まあ、寝心地は抜群によろしいので、このまま寝ちゃう!

隣に人が居ても気にせず眠れるらしいミシシアさんと、騎士時代の訓練によるものか、やっぱりどこでも眠れるらしいリーザスさん、そして色々あって気疲れしてすぐ寝落ちした俺!この3人組ならば、狭い寝床でも全く問題ないのであった!

はい、ということで翌朝。おはよう。俺達はマスタースライム君に半分埋もれたり埋もれなかったりしながら起床。

朝ごはんはドラゴン肉とドラゴン骨をガッツリ煮込んで出汁を取ったところに野菜とか刻んで入れたスープであった。これがまたなんか滅茶苦茶に美味しかったので、俺はとても幸せになった。ありがとうドラゴン。お前らめっちゃ美味いね……。

そうして俺達はまたエルフの森へGO。例のダンジョンの方へと向かって……。

「……ふむ。これはこの主スライムがやったのだろうな」

「そのようです!」

……俺達はそこで、見ることになった。

「うわあああああ!スライムだらけ!スライムだらけじゃねえかよぉおおおお!」

「わー!頭にお花咲いてるよ!かわいいー!」

「か、かわいいか……!?これは……アスマ様の指示によるものか!?」

「いや知らないよぉ!俺、流石にこれは言ってない!なんも言ってないってば!」

……ダンジョンの周りには、スライムが昨日より大分増えていた。

のっぱらに、もっちりもっちり、とスライム。

温泉に、もっちりもっちり、とスライム。

そしてダンジョン入り口は、スライムがもっちりもっちりと出入りしていて……エルフが入ろうとすると、スライム達が、もっちりもっちり、と柔らかく遠慮がちに押し返す。

……なのでエルフ達は、『どう見てもこれはおかしい』と思っても、どうしようもないらしかった。

そして、何よりもおかしいのは……それらスライムの頭には、なんか……花が!花が咲いていて!スライムのもっちりもっちりとした動きに合わせてふらふら揺れている!ということである!

「ふむ。中々愛らしいではないか」

「ほらぁリーザスさん!ラペレもかわいいって言ってる!かわいいでしょ!」

「か、かわいい、のか……!?」

リーザスさんは混乱しているが、俺も混乱している。

もうね、何もわかんない!

……この異変は、当然ながらエルフ達にも困惑として受け止められていた。エルフ達は『なんか花が生えたスライムが沢山……』と、おろおろしている。

いや、一名だけおろおろしてなかった。例のスライム大好きお姉さんだけはすげえ勢いでスライムの観察してた。一匹一匹スライムを持ち上げては眺めたり揉んだりして、頭に生えてる花を確認して……と忙しそうだ。いや、なんか熱意がすごいだけで、この人ちゃんと学者なんだな、っていうかんじだね……。

「ところでこの花、何なんだろうなあ」

それにしても、俺はマスタースライム君には『スライムに花を咲かせるといいですよ』とは言っていない。のにもかかわらずコレは一体どういうことだろうか。

「えっ?あ、そ、そっか。皆知らないよね。えーとね、これ、全部薬草だよ!」

が、ミシシアさんはご存じの模様。ほうほう。薬草とな。

「こっちの花はオヤスミジャスミン。安眠効果のある薬草だよ!それはカスミノバラ!いい夢を見られる薬草!実は美味しいお茶になるんだよ!」

「ほー」

ミシシアさんは流石、エルフの里育ちなだけあって詳しい。

他にも、『これはチヂレスミレ!葉っぱがフリルみたいでかわいいでしょ!古傷にいいんだよ!』とか、『こっちはフクラアザミ!ぷくっとしててかわいいでしょ!これも心を落ち着かせる薬草!』とか、『これはスワリアオイ!熱に効く!』とか、色々と教えてくれた。

……で、その結果、スライム達に生えているものはそれぞれ、エルフの森に生える薬草類であることが判明。成程ねー、一旦燃えちまった自然の保護に、薬草を栽培するという実用目的、そしてかわいいお花によるかわいさアップ。一石三鳥な素晴らしい案であった。マスタースライム君の有能ぶりが怖いぜ。

「あー、皆さんちょっといいですか」

さて。こんな状況に、エルフ達は大いに困惑していた。

『失われたと思っていた植物が!』と喜ぶ声もあったが、それ以上に『なんでスライムに生えてんの……?』と『なんでスライムが増えてんの……?』による困惑が大きい。まあそうですよね。

で、そんな中に俺が声を掛けに行ったら、皆が注目してくれた。おお、まともに話を聞いてくれる姿勢ってのはいいもんだね!……それだけ困惑してるんだろうなあ。少しでもいいから情報が欲しいと見た。

「あ、ああ……この状況について、何か知っているか」

エルフリーダーが早速そう聞いてきたので、俺は神妙な顔で頷いておく。

「はい。多分ですね、ダンジョンに悪さをしていた大聖堂の連中が死んで、そして、ダンジョンは今、失われた部分を取り戻そうとしているんじゃないかと」

「は……?」

はい。ここから頑張って煙に巻いていきましょうね。それと同時に、人間とエルフ、両方の利益と安全を確保していきましょうね!

「パニス村って、一度、戦の影響で滅びてるんですよ」

ということで、まずはその話から始めていく。嘘は吐いていない。戦によって職にあぶれたゴロツキによって荒らされたってのは戦の影響だ。リーザスさんがなんか気まずそうな顔してるが、それはほっとく。すまん。

「で、その頃から丁度、今のパニス村のダンジョンがおかしくなったんですよね」

「ほう」

「頭に作物を植えられても特に気にしない温厚なスライムが出てきたり、温泉が湧いたりしたわけです。で、荒れ果てたパニス村から引っ越してきて新しいパニス村がダンジョンの傍にできたという訳で」

嘘は吐いていない。嘘ではない。なので大丈夫!これは真実!紛れもなく真実なのだ!

「で、今、このダンジョンも似たような状況じゃないですか。一度、土地が荒れ果てて……多分、これは大聖堂の連中がダンジョンで何かやらかしたんだと思うんですけど……その影響を、ダンジョンは元に戻そうとしてるところじゃないかと思うんですよね」

俺の意見を、エルフリーダーは興味深そうに聞いている。あ、こういうのに興味ある人ですか?……この人もスライム大好きお姉さんみたいに、何かの学者だったりするんだろうか。ダンジョン学者とかじゃないといいな……。

「そうか……ならば、この異変は善いもの、ということか?」

「俺はそう思います。だからスライムも大人しいんじゃないですかね。ほら、スライムが頭に生やしてるの、この森の草なんですよね?なら、森を取り戻そうとしてるんじゃないですか?」

俺にはマスタースライム君の考えは全く分からんが、とりあえずそういう方針で行くことにした。

さあ、エルフ達よ!これで『ダンジョンは無害!』と納得してくれ!

……で、だ。

「えーとですね……これだけスライムが増えちゃったら大変だと思うんで、もうこの際、友好の証としてうちのクソデカスライムを一匹、お貸ししますよ」

俺は、マスタースライム君を親善大使として売り込む!よろしくな、マスタースライム君!