軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03 都会派冒険者の受難

03 都会派冒険者の受難

さて、今日は冒険者ギルドの依頼の一つ、商店の売り場雑用を引き受けて店にやって来た。

本当は薬草採取に行きたいけれど、雨が続いていたのだ。

雨の中、薬草採取は嫌だ。だが、売り場の仕事なら天候は関係ない。

裏口から入り、依頼を見て来たと伝えると、奥から女性が現れた。

「あぁ、あんたが? ふん、随分な田舎者ね。表には出せないわ。倉庫の整理をしてもらいましょうか。

こっちよ。あたしはメイジー。わたしの言う通りにしてね。さっさとここの荷物を並べて。小麦と豆と米、種類別にね」

早口でまくしたてられた。

わたしが「はい、わかりました」と返事をすると、彼女は鼻で笑った。

「わかりましたって、本当にわかったの? 田舎の常識とは違うのよ」

そう言い捨てて、メイジーは背を向けた。

これは、収納スキルの容量を増やすのに最適な仕事じゃない?

わたしは前向きに切り替えた。

まず、この酷い埃をなんとかしたい。だが穀物を水に浸けるわけにはいかない。表面をさっと撫でれば埃は取れるはずだ。

わたしは水魔法で極小の水玉を無数に作り出した。それを積まれた箱や袋の表面に滑らせていく。

速度や動かし方を試行錯誤するうちに、汚れを絡め取る最適なコツをつかんだ。

次に、豆の仕分けだ。収納へ限界まで入れ、取り出しては種類別に並べる。これを三度繰り返すと、山積みだった豆はきれいに整理された。

小麦と大麦も同様に処理する。産地が記載されているものは、それごとに列を作った。

途中で買ってきたサンドイッチで昼食を済ませ、作業を続ける。

出し入れを繰り返すうち、収納の容量が面白いほど広がっていくのがわかった。

最後の大麦は一度に、全部収納できたのだ。

最後にもう一度埃を払い、わたしはメイジーを呼びに行った。

「終わりました。確認をお願いします」

すると、彼女は怪訝そうに顔を歪めた。

「終わった? 嘘おっしゃい。そんな短時間で終わるはずないわ。虚偽の報告をする子に署名はできないわね。

さっさと帰って。目障りよ」

「ですが、署名をいただかないと報酬を受け取れません」

「仕事もしてないのにお金をもらう気? 厚かましいわね。とっとと出て行って!」

メイジーは取り付く島もなく、奥へ引っ込んでしまった。

やってられないわね。

わたしは店を出てギルドへ戻り、受付のカシクさんに事情を話した。

むしゃくしゃした気分を落ち着かせようと、屋台でクレープを買う。リンゴにカスタードを多めにしてもらい、テントの下で頬張っていると、聞き覚えのある声がした。

「キャサリン。帰ってきていいぞ」

パーシーだった。隣には見知らぬ男がいる。

「帰りません」

わたしはクレープを一口噛み切り、即答した。

「おい、意地を張るな。許してやると言っているんだ」

同行者の男が口を挟む。

「あなたはどちら様でしょう」

「僕はデイビス・フレイム。パーシーの友人だ」

「そうですか。ですが戻りません。せっかくゆっくりできているので」

「何を言う! お前が無責任な真似をするから!」

パーシーが声を荒らげた、その時だった。

「ケイト、どうした? 絡まれているのか?」

マイクさんだった。

「はい。絡まれています。非常に迷惑しています」

わたしが答えると、マイクさんは二人を鋭く見据えた。

「貴族の御子息とお見受けするが、立場を利用して下の者に理不尽を強いるのは禁じられている。

平民には拒否権がある。そういった教育を受けていないお家柄かな?」

穏やかな口調だが、有無を言わせない圧があった。

「いや、そういうわけでは。キャサリン、また来る。困ったことがあれば頼れよ」

パーシーは吐き捨てるように言い、デイビスを連れて去っていった。

マイクさんがこちらを見る。言葉には出さないが、説明しろという無言の圧を感じる。

「せっかくだ、食事でもしながら話そうか」

案内されたのは、落ち着いた佇まいの高級店だった。

メニューから好きなものを選べるのが嬉しい。栗のスープに、ホタテのフライ。ローストビーフは厚めに切ってもらえるかしら。

デザートのレモンパイのためにお腹の配分を考えつつ注文したが、結局すべて美味しく完食してしまった。

話が本題に入ったのは、食後の茶の時だった。

「わたしは侯爵家の長女、前妻の娘です。王太子の婚約者でした。正式な披露は済んでいませんでしたが……

ご存知でしょうか?」

「あぁ、聞いている。どこかで見た顔だと思っていたが……すまない、続けてくれ」

マイクさんは静かにうなずいた。

「夜会が始まってすぐ、婚約破棄されました。義妹を新たな婚約者にすると。国王夫妻も、家中の者も、貴族たちも揃っている場でのことです」

わたしは淡々と事実を述べる。

「その場で勘当され、除籍されました。すべて証人もいる確定事項です。だから王都で冒険者登録をしました。野宿は嫌ですし、ギルドは国の干渉を嫌うと聞いたので。あの人たちがあまりにしつこいようなら、国を出るつもりです」

マイクさんは腕を組み、深く息を吐いた。

「なるほどな。事情はわかった。未練はないのか? 貴族の身分にも、元婚約者にも」

「微塵もありません」

「そうか。なら安心しろ。ギルドはギルド員を守る。ただし、無茶な場所には行くなよ」

「わかりました。お願いします」

◆◇◆◇◆

ケイトが食事を始めた頃、冒険者ギルドでは受け付けのクーパーがギルドマスターのデスクを叩いていた。

「これは許せません。依頼票には売り場の雑用とあります。店内業務として受理させたものです。それを独断で倉庫整理に回し、あまつさえ確認もせずに署名を拒否する。これは明らかな報酬の踏み倒し、及び契約違反です」

「そうだな。相手の商店には今から、わたしが行くが、クーパー、お前も来るか?」

「当然です」

「ケイトにはどう伝えてある?」

「明日調査するから待つように、と」

「ならいい。こいつには少し教育が必要なようだな」

ギルドマスターは冷ややかな笑みを浮かべ、席を立った。