軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

92.過酷な治療(クララ)

次の日から昼過ぎになると王子が部屋にやってきた。

できるだけ魔力を使わないように治療すると、

あまり効果があらわれないからか苛立っているのがわかる。

だけど、私の治癒術の威力なんて、この男がわかるわけがない。

必死でやっている顔をすれば、それ以上は言われなかった。

そんな風に治療を始めて五日した時、

王子の唇あたりの肉が盛り上がってきたように見えた。

まさか無くなったところも治るの?

何も言わなかったけれど、使用人が気づいてしまった。

「殿下!欠損個所が治りかけています!」

「本当か!」

「間違いありません!」

報告を受けて、王子は機嫌よく帰っていった。

どうしよう。

こんな無茶な治療を続けていたら、私が死んじゃうかもしれない。

でも、治さないと殺されるかもしれないし。

……ううん、治ったら用が無くなるから、間違いなく殺される。

できるだけ治療を長引かせようと思っていたら、

次の日は王子が部屋に来るのではなく、どこかに連れていかれる。

そこには王子ともう一人いた。

初日に会った王子のように包帯をぐるぐる巻いている。

包帯の隙間から見えるのは長い金髪。

ベッドに寝かされているから服は見えないけど、女性かな。

「今日は俺と、もう一人治療してもらう」

「え?二人?」

「慣れてきたし、できるだろう。できるだけのことはしろ」

「……」

無理だと言おうかな……。

でも、やる前から言ったら怒られそう。

最初に王子の治療をして、その後女性の治療をする。

女性は王子よりもひどい状態だった。

腐りかけた範囲が広くて、一度では皮膚が再生しない。

「これ以上は無理……」

「そうか。……アンジェラ、痛みはどうだ?」

「お兄……さ……ま。もっとちりょ……うして」

「わかった」

え?もっとしてって言った?

「もう一度治療しろ」

「無理だって言ったわ!」

「いいからやれ」

「嫌よ!」

断ったら、後ろから誰かに殴られた。

あまりの痛さに何も言えずにうずくまる。

「やるまで殴らせる」

「っ!!」

嘘でしょう?と思ったら、使用人が近づいてくる。

「わかったわ!やるから!殴らないで!!」

仕方なく、女性にもう一度治癒術をかける。

さっきよりも半分もないくらいだけど、化膿がおさまったように見える。

「……もう殴られても無理」

「仕方ないな。あとは明日か。もういい」

王子は私の顔は見ないで、女性のベッドの横に向かう。

なんなの?あれは妃なの?

追い出されるように部屋から出され、自分の部屋に戻る。

もう無理だって言っていたのに、殴られた。

どうしよう。明日からもこんなことになったら。

できるだけ治療する力を弱めて、回数かけられるようにしよう。

そう思ったのが気づかれたのかはわからないけれど、

次の日からは何度も治癒術をかけさせられた。

殴られて治癒術をかけ、もう無理だと言ったら、また殴られる。

泣きながら治癒術をかけ、限界だと言っても、許してもらえない。

本当に限界で、立つこともできなくなるまで治癒術を求められる。

部屋に戻る時には歩けず、使用人が私を抱えて部屋に戻す。

食事する元気もなくなり、治療した後は気絶するように眠る。

どうしよう。

あの二人が治る前に殺される気がする。

誰か、助けてくれる人はいないの?

使用人たちは私のことなんてどうでもいいのか、見てもくれない。

逃げ出したいけれど、その力がない。

悔しくて泣いていたら、知らないうちに人が入ってきたらしい。

「愛人でも隠しているのかって思ったけど、本当にいたわ」

突然の知らない声に顔をあげたら、真っ赤な髪の綺麗な女性がいた。

足が不自由なのか、使用人が車いすに乗せている。

「あなた、誰?」

「……私、ここに連れて来られて……お願い、助けて!!」

「助けてって言われても……あら?あなた、銀色の髪なの?」

ここに連れて来られて、まともに食事もとれなくなってから、

髪がぱさついて銀色に見えなくなっていた。

それでも黒髪が白髪交じりになったのとは違う。

「どうして銀色なの?それは帝国の王族の色だわ」

「帝国の王族を知っているの!?」

この女性は帝国の王族を知っている。

もしかして私のことを言えば、助けてくれるかもしれない。

そう思って必死で訴える。

「私は帝国の第一皇子ユーリイスの娘クララよ!

皇太子のマティアスとは従兄弟なの!

こんな目に合わせたらどんな罪になるかわからないわよ!

お願い!ここから出して!!」

「は?マティアス様の従兄弟?」

「ええ、そうよ!わかってくれた?

今すぐここから出しなさい!!」

どうやら帝国に詳しい貴族のようだ。

これならここから出してもらえるはずだと思ったら、

その女性に扇子を投げつけられた。

「黙りなさい!

そういえば、亡くなった第一皇子の話は聞いたことがあるわ。

戦うのが嫌いだった弱虫な皇子。

ふうん、娘がいたんだぁ……知らなかったわ」

「何をするの!?無礼だわ!私は!!」

「私は第三皇子の息子マッケートの母方の従妹よ。帝国の公爵家の長女。

認められてもいない皇子の娘とは身分が違うわ。黙りなさい」

「っ!!」

帝国の貴族令嬢!!

それでもお父様が王族だと認められたなら、私のほうが上なのはずなのに!!

にらみつけていたら、ため息をつかれた。

「愛人かと思ったけど、違うのね。

こんなやつれてみすぼらしい女を愛人にするほど落ちぶれてはいないでしょ」

「はぁ!?」

「帝国の王族を名乗る不届き者なんて殺しておいたほうがいいわよね。

もしかして、マティアス様に褒めてもらえるかしら」

「っ!?」

急に殺気を感じて、この女が私を本当に殺してもいいと思っているのがわかる。

「ま、待って!あなた、怪我をしているんじゃないの!?

私なら治せるわ!!」