軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

76.事態の解消へ

ケニー様が馬車と旅の準備をしに行く。

エルドレド国内を回ったら、二週間から三週間はかかる。

お兄様は事情を手紙に書き記し、帝国へと送る。

戻るのが遅くなると、帝国に残っているマッケート様に伝えるためだ。

マリアも同じようにディアナへと手紙を書いていた。

「まずはどこから行くか検討しなければいけないな」

「地図を持ってこさせましょう」

どの領地から行ったらいいか、文官が地図を持ってくるのを待っていると、

アンジェラ様の部屋に見に行った近衛騎士が真っ青な顔で戻ってきた。

「確認してまいりました!」

「王女の様子はどうだった?」

「眠っていましたが、左頬と左耳が腐って溶けかけていました……」

「眠っていた?その状態でか?」

「世話をしている侍女に聞いたところ、

ナタニエル様の指示で眠らせているそうです。

食事や飲み物に薬を混ぜたと……」

「なるほどな。

まぁ、王女は眠らせておいたほうがいいか。

そのまま眠らせておくように侍女に指示しておけ」

「はっ!」

近衛騎士が去ると、マティアス様はため息をついた。

「王女も地毒か。起きたら騒がしいだろうな」

「それは……そうですよね」

あれだけ自分の美しさを誇っていたアンジェラ様が、

顔が腐って溶けかけていると知ったら……。

いえ、そもそも今の容姿をわかっていないのだった。

鏡を見せたらどうなることか……。

想像して思わず身震いする。

そこに文官が地図をもって戻ってきた。

広げてみて、マティアス様は文官に問いかける。

「王宮や王都に食料を届けている地域はわかるな?」

「はい」

「そこに印をつけてくれ」

「わかりました」

王宮や王都に届ける作物を作っているところは、

王領や大きな領地の中でも広く畑を作れるところに限られる。

その中でも土がいい場所が選ばれ、毎年同じ地域から出荷される。

「マティアス様、他の場所は行かなくていいのですか?」

「すべての地で魔力を消さなくても大丈夫だ。

一か所で消せば、周りの土地の魔力量も下がる」

「だから大きな畑を中心に回るのですね」

文官が印をつけた地図を受け取り、旅の準備が終わるのを待つ。

それほど待つことなく準備が終わり、一台目の馬車にはマティアス様と私、

二台目の馬車にお兄様とケニー様、クルスとカルラを乗せて出発する。

領民に説明するために、文官と騎士たちが少し先に出発している。

私たちの馬車が着くころには説明が終わっているはずだ。

馬車に乗って二人きりになるとすぐに、

マティアス様は私の隣に座り、両手を包むように握った。

「マティアス様?」

「……体調は問題ないか?どこかおかしいと思うところはないか?」

「え?……特にないと思います」

「念のため、治癒をかけておく」

マティアス様の手から光が見える。

光の輪が私の身体を包むように上下している。

「……もしかして、私も地毒の可能性があるのですか?」

マティアス様の真剣な表情にまさかと思う。

「……地毒は王族や高位貴族がかかるものだ。

それは魔力量が多いものほど汚染されるから。

ダニエルは帝国に留学していたし、国に戻ってからはオードラン公爵領にいた。

だが、リンネアは違う。屋敷での食事はいいとしても、

王宮で食事を取ることもあっただろう」

「そうですね……皇太子妃教育を受けていた間は、

昼食時も作法を学ぶ時間でしたので」

「この病気は一年二年で発症するものではない。

長年にわたり蓄積された結果、発症するものだ。

……今、治癒をかけた。

これで大丈夫だとは思うが、少しでもおかしいと思ったら言ってくれ」

光の輪が消えて、治癒が終わったのがわかる。

「マティアス様は地毒も治せるのですか?」

「発症する前なら治せる。

もしかしたら、症状が出始めの時なら治せるかもしれない。

だが、王太子のように身体が欠損するようになったら無理だ。

国全土の地毒を解消して、薬でゆっくり治すしかない」

「薬を使っても欠損は治せませんよね?」

「今のところ、どの国を探したとしても、

欠損を治すような薬はないだろうな」

「ですよね」

ということは、ナタニエル様もアンジェラ様も、

薬で治せたとしても顔はそのままということだ。

「王女はともかく、王太子は自業自得だ。

リンネアが心配することではない」

「それはわかっているのですが、王宮が大変になるなと。

文官や騎士、侍女たちのことが心配で……」

「それについては、戻ったら三公爵と相談しよう」

「ごめんなさい、マティアス様がどうにかするようなことでもないのに」

「いいんだ。リンネアの叔父上が関係することだからな。

できることはしてから帝国に戻ろう」

「ありがとうございます」

馬車が最初の領地についたのは一時間後のことだった。

文官と騎士たちが先について領民に説明し終わっているはずだったが、

なんだかもめているようだ。

マティアス様と私はまだ馬車に乗っているように言われ、

お兄様とケニー様がもめているところに仲裁に入る。

「いったい何をもめているんだ」

「あ、申し訳ありません。領民たちが納得しなくて……」