軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十九話 再会

平日はいつも通りに学園に通い、授業が終わったあとはドリントルの街でアレクとルーラを交え、今後の予定を詰めていた。

「ダルメシアが資材を用意してくれたお陰で作業は順調だよ。ルーラが描いてくれる図面は素晴らしいし。たまに理解出来ない事を話しているけど」

「アレク様の人の手配が良く出来ておりますので、わたくしは助力だけでございます」

後ろで控えているダルメシアが一礼をする。

「ダルメシア様が木材を用意してくれたお陰で思ったよりも予算が余っているわ。新しい区画の住宅はすでに建て終え、今は冒険者学校と寮を建てているの。冒険者たちも参加してくれるから思ったよりも作業が早く進んでいるわ」

ルーラが図面をテーブルに広げ、説明していく。

冒険者ギルドもアレクに全面協力をしているらしく、税金もきちんと納められ、街でも大きな問題は特に起こしていないとアレクが説明していく。

やはり酒を飲んだ時に多少問題は発生しているが、冒険者同士の喧嘩が主となっており、一般市民には影響していないそうだ。

「この調子なら問題ないようだね。週末も少し込み入った用事があってこの街に来ることは出来そうもないんだ」

「インフラの整備だったら今は問題ない。それにしても込み入った話って? また何か王都で問題でも起こしたのかい?」

カインの常識外の行動を知っているアレクは、また問題を起こしたのだろうと何気なく訪ねた。

「アレク兄様にも関係あるから話すけど、実は……母上の件でね、冒険者の平民という話だったけど、ゲレッタ子爵家の長女だったとわかってね……週末に母上とダンロフの街に行く予定なんだ」

やはりサラが貴族だったことを知り、アレクも驚いた。

「……サラ母上がか……普段の様子や会話から本当に元平民なのかと思っていたが、よもや本物の貴族だったとは」

「うん、だから少しの間、また不在になるけどよろしく頼むね。あ、これ、エリック公爵から投資という形で貰ったから渡しておくよ」

カインは小袋に入った白金貨五枚をテーブルに置いた。

エリックからは侘び料として貰ったものだが、これからもドリントルの街の発展にはまだまだ十分とは言えない。

材料費が浮いたとしても、スラムの解体を含め、住人たちの職業や生活水準を上げていくには領主からの寄付がないと足りていない。

「エリック公爵からか……ありがたく頂いておくよ。礼状はカインの名前で出しておくから」

アレクは受け取った小袋を大事そうに金庫に仕舞う。

「引き続き街の開発を頼みます」

カインの言葉で会議は締められた。

そして週末を迎え、ダンロフの街へ行くことになった。

先行してサントス子爵に話すつもりでいたのだが、サラに止められた。

「いなかったらそれでいいわ。ララには謝っておきたいし」

「では、僕に触れてください。触っていないと一緒に転移できないので」

「うむ、わかった」

「わかったわ」

ガルムとサラがカインの両手を握った。

「セバス、明日には戻る。それまでは任せたぞ」

「ガルム様、お任せください」

後ろで控えているセバスが一礼する。

「カインくん、抱きついてもいい?」

レイネが目を輝かせて聞いてくる。

「……手を触れるだけでもいいのですが……」

カインの言葉をまったく聞かずにレイネは後ろから抱きついた。

「クンクン、カインくんの匂いだー」

少しだけ膨らんだ胸の感触を感じながら、まったく聞いていないレイネにため息をつき、魔法を唱える。

『転移』

視界は一瞬で変わる。

さすがにサントス子爵の屋敷に直接転移するのは問題があると思い、街の門の近くに転移した。

初めての転移に三人とも辺りを見渡して驚いている。

「まさか転移を経験することがくるとはな……」

「懐かしい門だわ……」

「もうついちゃったの? もっとカインくんに抱きついていたかったのに……」

三者三様の言葉を聞きながら、レイネのことを振りほどいた。

「街の入場門近くに転移したので、申し訳ないですがここからは歩きでいきます」

門からは歩いて十分ほどの距離だったこともあり、すぐに街の入場門へたどり着いた。

どう見ても貴族の格好をしている四人組が街道から門に向かって歩いてくれば、衛兵は途中で何かあったのかと緊張が走る。

もしかしたら、と。

そんな中、一人の衛兵がカイン達一行に向けて小走りで近づいてくる。

「失礼します。貴族の方とお見受けしますが、家名を伺ってもよろしいでしょうか。それに歩きでとは……何か大事がございましたか?」

衛兵隊長と思われる中年の衛兵が、礼儀正しく一礼し声を掛けてきた。

「あ、すいません、カイ――」

「ガルム・フォン・シルフォード・グラシア辺境伯だ。サントス卿に会いに来た。細かいことは詮索不要だ」

カインが子爵の証を出そうとしたら、横からガルムが隊長に名乗り辺境伯の証を差し出した。

カインの子爵の証より豪華な仕上げとなっている。

貴族とは思っていた衛兵隊長も、歩いていきた貴族一行が、領主よりも階級が上となる上級貴族の辺境伯本人と聞き、衛兵全員に緊張が走る。

「は、はいっ! どうぞお通りください。すぐに馬車を用意させます。お前ら、馬車の用意だ! あと領主様のところに誰か走れっ!」

衛兵隊長の一声で、若い衛兵たちが慌てて走っていく。

「すぐに馬車を用意させますので、少しの間こちらでお待ちを」

衛兵隊長は四人を丁重に門の横にある建物の応接室へと案内した。

「狭いところで申し訳ありません。馬車の用意が出来次第お送りいたしますので」

畏まった衛兵隊長に、ガルムは懐から出した小袋を渡した。

「迷惑かけてすまんな。これで夜にでも衛兵たちに振舞ってくれ」

「これは心付け申し訳ございません。有り難くいただきます」

渡された小袋を大事そうに自分の懐に仕舞った。

十分程度で馬車の用意が終わり、四人は衛兵が御者をする馬車に乗り込んだ。

「世話になったな」

ガルムは衛兵隊長に声を掛けたあとに馬車は出発した。

馬車の中では、ガルムは腕を組んで無言を貫いている。

サラは十年以上振りに見る懐かしい街を楽しんでいる。

レイネはカインの腕に抱きついている。

「レイネ姉様……」

「こうして隣に座って馬車に乗るなんて最近なかったから、カインくんを補充しないとね」

学園で忙しくしていたおかげで、ブラコンが治ったのかと思っていたカインであったが、そんなことはなかった。

レイネに腕を組まれながらも、先週も見た馬車の窓から見える街並みを楽しんでいく。

馬車は街を通り抜け、二十分ほどで領主邸に到着した。

「お待たせいたしました。屋敷に到着いたしました」

先に降りた衛兵が扉を開ける。

馬車から降りると、すでに扉の前には領主一家が勢ぞろいで出迎えのために並んでいた。

先触れに走った衛兵からすでに話が来ているためだ。

四人が馬車から降りると、サントスがガルムの側にやってくる。

「ガルム辺境伯、ご無沙汰しておりますな」

「サントス卿、事前の連絡なしで来てしまい申し訳ない。手紙を読ませてもらった。話さないといけないこともあるので、急ではあったがこさせてもらった」

ガルムは軽く頭を下げ、サラに視線を送る。

サラの姿を見たサントスを含め、長く屋敷に勤めている従者たちは目に涙を溜めている。

ララはすでに大粒の涙を流していた。

状況を理解できないリーラだけは、不思議な顔をしていた。

「――サラ、息災じゃったか?」

「お父様、ご無沙汰しております。ご心配おかけして申し訳ありません」

サラは目に涙を溜め、深々と頭を下げた。

サントスも目を潤ませながらも頷く。そしてカインに視線を送った。

「カイン卿、済まないな。ここまで早く来てもらえるとは思わなかったぞ……衛兵が飛び込んできて説明された時は、さすがに驚いたわい」

「いえ、せっかくの再会ですから早いほうが良いと思いまして……」

カインの言葉に、サントスは頷いた。そしてガルムに向き直る。

「長旅でしたでしょう。屋敷でゆっくりしてくだされ。申し訳ないが、今、エリック公爵もお見えになっておるのだ」

サントスの言葉にカインは「あっ」と思ってしまった。

エリックには先週ここでの話をしたが、サラのことを説明していなかった。

ガルムから説明してもらうしかないな、と思いつつ案内され屋敷の中に入った。

「やぁ、ガルム卿、カインくん、こんなところで会うとはね」

ホールにはすでにエリック公爵が笑顔で待っていた。