軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四話 熱心な教徒はご勘弁

屋敷の前に馬車を停めるとカインと司教は馬車から下りた。

先導していたラグナフ伯爵が中央に立ち、従者達が一同に並んでいる。

「司教様をお迎えできて、このラグナフ感激でございます。一泊ではございますが、ごゆっくりお過ごしください。中へご案内しますのでどうぞ」

「ラグナフ伯爵、本日お世話になります。シルフォード辺境伯からお聞きしましたが、熱心な信徒であられるとか。後でゆっくりと歓談できればと」

「も、もちろんですっ! シルフォード卿もよく来た。ゆっくりしていってくれ」

「ご無沙汰しています、ラグナフ卿。本日はお世話になります」

笑顔で挨拶した三人はラグナフ伯爵を先頭に屋敷へと入る。従者に案内をされ一度部屋で着替えてから応接室へ向かうことになった。

カインも案内された部屋で歓談をするために着替えて準備をする。

「正直、あの長い話をまた聞かないといけないのか……。今日は司教もいるし途中でお任せするかな……」

カインは部屋に呼びに来た従者とともに応接室へと向かった。

◇◇◇

「ふぅ……。やっと抜けられた……」

会談と夕食時にはラグナフ伯爵のトークが止まらない状態だったが、いざ司教は説法を始めると感激したように聞き入っていた。

付き合っていられないとカインは旅の疲れを理由に早々に部屋へと引き上げてきた。しかしこのまま休むわけにもいかないカインは転移魔法でドリントルに戻った。

執務室へと戻ったカインはダルメシアとともにアレクと打ち合わせに入る。

基本的な政策に関して殆どはアレクに任せているカインは重要な案件だけ書類に目を通していた。

「それにしてもカインは大変だよね。これからマリンフォード教国にいかないといけないのに、ドリントルまで戻ってきて仕事なんて……。転移魔法を使えるのもどうかなーって思うよ」

「アレク兄様がいてくれたお陰でドリントルは任せられますからね。あとは新しく増えた領地がどうなるかかな」

カインは辺境伯となり、領地が増えたことで新しい街の開発にも乗り出している。ルーラに護衛をつけて各街を視察してもらいレポートにまとめてもらっていた。

今後の方針とドリントルまでの街道の整備など、やることは多岐に渡っている。

アレクも好景気のドリントルで集まった潤滑な資金を用意しているので、現状、資金に困っていることはない。それでも手持ちの資金は減っていってるのだが、底をつくことはないと考えている。

「まぁ街内の住民でできることならこちらでやっておくから、今はマリンフォード教国の件に向き合わないとね」

「……そうですね……」

本当ならヒナタから連絡がきたことで空を飛んででも行きたいと思っていた。しかし簡単に聖女であるヒナタと会えるわけでもないし、エスフォート王国の貴族としていく場合には、事前に司教を通した申請も必要になる。

特に今は教皇暗殺という大事件が起こって、神殿内も混乱している中、余程の事がないとヒナタと会える保証すらない。

あくまで司教の護衛としてマリンフォード教国へと赴き、聖女に謁見するときに同席する予定となっている。司教からは兄である枢機卿を通して個別にヒナタと会える手筈をとってもらうことになっていた。

ドリントル領の問題点などを話し合ったカインは後のことをアレクに頼み、執務室を後にする。

屋敷内の廊下を歩き、一つの客室のドアをノックした。

「……なんじゃ? お、カインかっ」

扉が開かれ、そこから白髪赤眼のリザベートが顔を出した。

まだ王都内の屋敷が準備できていないリザベートは王都のカインの屋敷に宿泊予定だったが、ドリントルの方が居心地良いと転移魔法で移動していた。

実際に同じ魔族のダルメシアがいることで何かあれば頼むことが出来るのが大きいのだろう。

「こっちに来たから顔を出そうと思って……」

「まぁ良い。部屋に入るのじゃ」

もう夜半という時間で、女性の部屋に入るのにカインはためらったが、『すでに婚約者だから問題ない』という言葉に根負けしリザベートの部屋へと入った。

テーブルにはカップが一つあり、カップからは湯気が上がっていることから、一人で紅茶を飲んでいたとカインは推測した。

対面に座ったカインの前にリザベートはカップを置き紅茶を注いでいく。

「もう一杯分あったのじゃ。ゆっくり飲むといいのじゃ」

リザベートも席に座り優雅にカップを手に取り紅茶を飲み始める。

「それで今日はどうしたのじゃ? マリンフォード教国へ向かっているはず? もう帰ってきたの?」

「いや、今日街には着いたけど、アレク兄様と打ち合わせがあったから魔法で戻ってきたんだ。もう終わって戻る前にリザの顔を見ようとね」

カインの言葉にリザベートは視線を逸らし頬を染める。

「そんな急に熱い言葉をかけられたらわらわも照れるのじゃ」

まったくそのつもりもなかったカインは頬を掻きながら苦笑する。

「まぁまだ王都の屋敷は準備できないと思うし、その間はゆっくりするといいよ。それにしても本当に王都の屋敷じゃなくてよかったの? すぐに転移魔法で行けるとは思うけど……」

「ドリントルのほうがわらわは過ごしやすいからのぉ。何かあればダルメシアに頼めばいいし、料理もこっちのほうが美味いのじゃ」

「それなら構わないけど……」

その後も二人は雑談を交わし、カインは屋敷を後にしシルベスタの街の客室に戻ったのだった。