軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話 判決

第十七話 判決

「まず、今回の事案について説明をしてもらえるか」

議長の言葉で、控えていた男性が席を立ち説明を始めた。

「そこに座られているエスフォート王国の伯爵であられるシルフォード卿が、ガザールの街で襲撃にあった事が事の発端となります」

その説明だけで、議員席に座っている議員達は騒つく。他国の貴族が自分の国で襲撃を受けたとすれば、その情報は各国へと広まってしまう。自分たちの国の風評に関わる事からして、重大な事案だということがすぐに理解できていた。

「続けます。シルフォード卿はガザールで登録されているCランク冒険者五人に襲撃されましたが、これを撃退。全員の捕縛を行いました」

今度は議員席から歓声があがった。席に座っているカインはどこから見てもまだ成人していない少年である。それを一人前とされるCランク冒険者五人の襲撃を撃退したのだ。興味の視線はカインに集まった。

「そして捕縛された冒険者達を尋問したところ、そちらに座るガザールの議員、マルフ・バンデーガ氏の嫡男、ラルフ・バンデーガの依頼と発覚しました。本人はすでにギルドで依頼した事を認めています」

議員の嫡男が他国の貴族当主に襲撃を掛ける。

これはどんな事を意味するか、議員席に座っている者なら誰でも理解できる。『戦争を仕掛ける』のと同じ意味だ。

議員達は思わず喉を鳴らした。

「異議あり! 議長、発言をよろしいでしょうか」

マルフ側に座っていた一人が手を挙げ立ち上がった。

「よろしい、発言を許可する」

議長の許可を出た事で、男は口を開く。

「ラルフ・バンデーガはあくまで、『少しだけ脅してくれ』と依頼したに過ぎません。襲撃や暴力を振るうなどの野蛮な依頼をしておりません。あくまで冒険者たちの意思であり、ラルフ・バンデーガと襲撃は関係ございません事を説明させていただきます」

「シルフォード卿、申し訳ないが襲撃時の事を説明してもらえるか」

カインはフォルトと視線を一度合わせ頷くと席を立つ。

「はい、議長。では、説明させていただきます。路地で襲われた時、いきなり剣を抜かれました。確かに『殺しはしない』と発言はしていましたが、『腕の一本はもらう』と言われました。幸い、僕も冒険者ですから撃退できましたが、もし他の人でしたら……簡単な怪我では済まなかったと思います」

カインは発言を終えると席に座った。

その時、議員席から一人の議員が手を挙げた。議長が許可をすると、立ち上がり口を開く。

「その前に疑問なのですが、そこにおられるシルフォード卿はCランクの冒険者五人を撃退したとなっています。いくら同じ冒険者登録をしているとはいえ、まだ未成年の学生が五人を撃退できたのでしょうか? もしかして他にも人がいたとか」

きっと議員席に座っている誰もが同じ気持ちであったであろう。カインは年相応の少年にしか見えない。しかも貴族当主であることでさえ疑わしい。貴族の子息であるなら理解はできるが。

「その事については、私から申し上げます」

フォルトは手を挙げ立ち上がった。

「冒険者ギルドガザール支部サブギルドマスターのフォルトです。シルフォード卿は、エスフォート王国の冒険者ギルドにて――Sランクの冒険者として登録されております。これにつきましてはギルドでも把握できておりますので間違いありません」

フォルトの言葉に議員席から今までにないほどの声が上がる。

Sランクの冒険者。

これが意味するモノは誰に聞いても嫌という程理解ができた。

各国で最強に近いという現れであり、一人、若しくはパーティーでドラゴンを退治出来る実力があることの証明でもある。

そしてイルスティン共和国で最強と言われる、ガームズと同等の実力を持っているという事であった。

襲撃を掛けた相手が悪過ぎた。全てはこれに尽きる。

質問した議員も納得して席についた。

「それでは説明を続けさせていただきます。襲撃の後、依頼者がすぐに発覚した事で、ギルドにて話し合いが持たれました。その時にマルフ・バンデーガ議員は、シルフォード卿を貴族当主だと知らず、議員特権の発動を口にしました。まぁ、シルフォード卿が当主であられますので、無効となりましたが。説明は以上となります」

説明に議員席からはため息しかでない。

議員特権とは特別なものである。相手を見ずに発動して無効化されるなど恥でしかなかった。

「わかった……。それで判決についてだが。過去事例に照らし合わせることとする。まずは、五人の冒険者については犯罪奴隷とする。そして依頼者のラルフ・バンデーガ。主はまだ未成年であることから、犯罪奴隷は免除とする。しかし、成人後五年間奴隷として奉仕を務めることにする。そしてその責任は保護者が負う事とし、マルフ・バンデーガは議員職務の剥奪。今回の賠償金として、シルフォード卿に白金貨二十枚、エスフォート王国の貴族であることから、迷惑料としてエスフォート王国へ白金貨二十枚、そしてイルスティン共和国に白金貨十枚納めることとする」

罰金合計白金貨五十枚、日本円換算で五億円。

ちょっとした気持ちで依頼した事に対しての代償。そして肝心の親は議員の権利さえ剥奪される。

ラルフは顔を真っ青にしたまま下を向いていた。

マルフは苦虫を噛み潰した様な表情をしながらも、怒りの視線をカインに向けた。

「この件は、これで終わりとする。退廷するように」

カイン達は席を立ち、入ってきた扉へと向かった。

その後ろ姿を睨みつけながらマルフは「今に見てろよ」とだけ小声で呟き、ズカズカと退廷していった。

◇◇◇

観客席にいたエスフォート王国の教師や生徒たちは、真剣な顔をして判決までの時間を過ごしていた。

どの様な議会かを見学する予定だったが、出廷してきたのは一緒にイルスティン共和国へ訪れたカインであったからだ。

教師も今回の件は詳しいことはカインから説明されていない。別行動をした理由も「貴族当主の仕事」としてあった。

「カイン様が襲撃を受けていたなんて……」

テレスティアが手を握りしめ身体を震わせていると、シルクがそっと肩に手を置く。

「テレス、心配ないよ。カインくんだよ? 私たちを救ってくれた時を思い出して。どんな時でもきっと大丈夫だから」

「……うん、ありがとうシルク。少し気が楽になったわ……それにしても……」

二人は視線を合わせ深く頷いた。

「「たっぷり反省が必要ですわね(だね)」」

またしてもカインの知らないところで、反省会が決まったのであった。