軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第一話 自重って何でしょう

――カインは十四歳になった。

ドリントルの街は公費を投じ開発を一気に進めた事で、人口が増えていく。

建築ラッシュもいまだに続いており、建築作業員も住みやすさに感銘を受け、家族を連れて移住する者も多くいた。

しかし、増える街もあれば、減る街もあるのだ。

ドリントルは人口を増やすために税制を抑えていた。

基本的に贅沢をするつもりもないカインの私財は、冒険者としての稼ぎと、サラカーン商会からの振り込まれる金額ですでに莫大な資産を持っていた。

税制が一般よりも重い街からドリントルの噂を聞きつけ、移住する者が後を立たないのは仕方のないことである。

領主からしても街の人口が減れば税収も減る。

その領主からは自分の所属する上級貴族へと連絡が伝わっていく。

「これ以上人口が減ったら、街として国に税金を収められなくなります」

中央に座るコルジーノが唸り、考え込む。

「あの憎たらしいシルフォードか……。ドリントルで潰れてくれればよかったものを……」

コルジーノ侯爵派閥の貴族達が屋敷に集まり、人口が減った領主はコルジーノ侯爵に懇願する。

コルジーノ侯爵も自分の派閥を助けたいが、度重なる失態における罰金、そして屋敷の建て直しと私財はかなり目減りしていた。裏で動いていた人身売買における利益も、商会が潰されたことにより痛手となっていた。

「なんとか亡き者に……、いや、何でもない」

思っていた事が思わず言葉に出てしまったコルジーノ侯爵であったが、踏みとどまる。

そして思いついた。

「もしかしたら……、お主ら、少し待っておれ。儂の方で考えてみる」

「よろしくお願いいたします」

派閥の貴族達は退出していくと、コルジーノはテーブルに肘をつきニヤリと笑みを浮かべる。

「もう少しで“アレ”があったな。そこでなら目立たないだろう……。おい、いるか」

コルジーノ侯爵は一人だけの部屋で呟く。

「はい、こちらに」

「お主に頼むことがある。実は――――」

コルジーノが考えている事を伝えた。

「……御意」

黒い影はその言葉を残し消えた。

「……これで落ち着くであろう。待っていろよ、カイン・フォン・シルフォードめ」

一人だけ残った執務室でコルジーノ侯爵は呟いた。

◇◇◇

「え、護衛もですか……?」

カインは王城の応接室で、目の前に座っている国王に質問を投げた。

「うむ、王立学園のSクラスは、毎年イルスティン共和国に研修という名目の見学にいくのは聞いておるだろう。優秀な生徒には見識を広めるためにな国外に行かせる事にしている。しかし、基本的に王族や公爵の子息は行かないのじゃ。何があったら問題になるからな。しかし……テレスが行くと言うのじゃ。しかも今年はバイサスの皇女もおる。冒険者の護衛はつけるが、それでは心配でな。しかし、お主がいれば多少の荒事は切り抜けられるであろう」

カインは授業の中でその事について聞いていた。イルスティン共和国は色々な街の集合体が国になっており、各街の領主の協議制によって運営されている。

他国の生徒と触れ合う事により、見識を広める為だと教師より説明を受けていた。

「まぁ、行くのは変わりませんから……。道中危険なら、一回先に行って転移魔法で――」

「――お主、転移魔法は伝説と言われている魔法じゃ、そんなのをホイホイ使っていて露見してみろ。各国から我が国が責められるのは目に見えておるじゃろ」

「……たしかに」

王族がいる場合、護衛に騎士をつけるのかと思っていたら、騎士は基本的に他国への移動は禁止されている。

越境するのは戦争を仕掛けると同じだと、同席しているマグナ宰相が説明をしていく。

「あとな……儂らがいないからと言ってテレスに手を出してみろ? カイン、わかっておるよな?」

「カインくん、シルクもだよ? 正直、もう一年も経てば正式に結婚するから本当は構わないけど、一応ね?」

国王とエリック公爵から念を押される。

「そんな事ありませんよっ!!」

カインは即座に否定する。

一年が経ち、確かに二人とも美少女から、女性らしく変化していっていた。

カインは脳裏に二人の姿を思い浮かべ、即座に首を横に振り、脳内から消す。

「行かせるつもりは本当はなかったのじゃ。しかしな……『行かせてくれないと一生、口をききません』と言われたら仕方ないじゃろう……。しかもリルターナ皇女も行くと言い出してな……それは流石に止められん」

力なく説明をする国王にカインは苦笑する。

「わかりました。生徒として行きますが、護衛の件も引き受けます。その代わり――」

カインは希望を伝えると、国王は満足そうに頷いた。

「それくらいなら問題ないだろう。マグナよ、手配を頼む」

「承知いたしました」

「あとな、カイン。わかっていると思うが……、今回は他国に行くのじゃ。自重しろよ……?」

国王の言葉に思わず苦笑しながらもカインは頷いた。

「もう十四になります。さすがに常識はわきまえております」

「それなら良いが……お主が本気になったら……、いや、その話はやめておこう」

話が終わったカインは屋敷へと戻り、コランに事情を説明していく。

「左様ですか……、王女殿下と皇女殿下までご同行を……」

イルスティン共和国の首都までは、エスフォート王国から馬車で二週間ほどかかる。

王都からいくつもの街や村を経由し、一週間ほどの場所にある境界の関所を越え、共和国内から更に一週間の距離がある。

それなりの準備をする必要があった。

食材などは王国が用意した 魔法袋(マジックバッグ) に納められ、教師が管理し、護衛もそれなりの人数がつく。

国内最高峰と言われる王立学園のSクラスの生徒に何かあったら、王国としても大きな損失になるからである。

カインは必要だと思われる物を、コランと相談しサラカーン商会に発注するように頼んだ。

部屋で一人になったカインは、他にも旅に便利そうな物を 創造制作(クリエイティブメイク) で創り上げていく。

創れる大きさのは部屋の中で、そして部屋で収まらないのは裏庭で。

カインは脳裏に浮かんだ物を創り上げていった。

――この世界で誰にも想像もつかない物を……。

そう、国王から”自重”という言葉は、すでにカインの記憶からなくなっていた。

そして、あっと言う間に日々は過ぎ、イルスティン共和国へ向かう日が訪れた。