軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第56話 緑色の革命と隠された最強の要塞

アジールでの乱痴気騒ぎから一夜明け、俺は日本の自宅で惰眠を貪っていた。

レベル46への到達、そして「アジール」という新天地の開拓。

これらは世界にとって衝撃的なニュースだったが、当の本人である俺にとっては、ようやくスタートラインに立ったという感覚に過ぎない。

ベッドに寝転がりながら、俺は愛用のタブレットを操作し、探索者専用のネットオークションサイトを巡回していた。

「さてと……俺が情報を流してから、市場はどう動いたかな」

画面をスクロールする指が止まる。

俺の目は、ある一つの出品物に釘付けになった。

『【深淵の 握撃(アビサル・グラスプ) 】

種別:手甲(ユニーク級)

現在価格:20,000,000円

出品者:匿名(レベル45ダンジョン攻略者)』

「へえ……。出たか」

2000万円。

一般人からすれば目が飛び出るような高額だが、レベル40台のユニーク装備としては「そこそこ」の値段だ。

出品者も、購入を検討している入札者たちも、このアイテムを「ちょっと性能の良いユニーク手甲」程度にしか認識していないのだろう。

その証拠に、コメント欄にはこんな書き込みがある。

『電撃耐性60%は魅力的だが、他の補正が地味だな』

『攻撃速度アップと挑発か。タンク用にしては防御力が低いのでは?』

『2000万なら、他のユニーク防具を買ったほうがいい』

俺は思わず鼻で笑ってしまった。

甘い。甘すぎる。砂糖をまぶしたハチミツよりも甘い認識だ。

こいつは、そんな半端なアイテムじゃない。

「そろそろ『セットアイテム』が出る頃だとは思っていたが……まさか一発目が『 深淵(アビサル) 』シリーズとはな。

レベル45から落ちる装備だが、引きが良すぎるだろ」

セットアイテム。

それは単体ではそこそこの性能しか発揮しないが、特定の組み合わせで装備することで神話級の力を発揮する装備群のことだ。

かつて俺がやり込んだゲーム時代において、セット装備は「初心者救済」か「 最終装備(エンドコンテンツ) 」の二極に分かれていた。

そしてこの【深淵の守護者】シリーズは、間違いなく後者だ。

タンク職における「準最強」、あるいはビルドによっては「 最終解(ゴール) 」になり得る、極めて強力な防御セットである。

「……ああ、でもこれ、俺が説明しなきゃ誰も気付かないヤツだな」

俺は天井を仰いだ。

この世界のシステムは不親切だ。

アイテム名はユニークと同じ「茶色」で表示されるし、セットボーナスの説明文は揃えるまで表示されない隠しステータスになっている。

このままでは、この手甲は「地味なユニーク」として二束三文で取引され、最悪の場合、誰かの倉庫の肥やしになってしまう。

それは人類の損失だ。

特に、これから激化する深層攻略において、優秀なタンクの存在は不可欠なのだから。

「集めるのはキツイが、終盤まで使える性能だしな……。

仕方ない。久しぶりに『予言書』を更新してやるか」

俺は起き上がり、キーボードを叩き始めた。

世界中の探索者が聖書のように崇めるこのブログに、新たな爆弾を投下する。

【重要】茶色の名前には二種類ある。あるいは「セット装備」という概念について

やあ、アルカディアの八代だ。

レベル45の壁を超えた探索者も増えてきた頃だろう。

今日は、そのレベル帯からドロップし始める「ある特殊な装備」について話そうと思う。

単刀直入に言おう。

現在オークションに流れている【深淵の 握撃(アビサル・グラスプ) 】。

あれを見て、「ふーん、電撃耐性が高いだけの手甲か」と思った奴。

お前は今、1億円の宝くじを「ただの紙切れ」だと思って捨てようとしているのと同じだ。

あれは、「セットアイテム」だ。

レベル45以降のダンジョンでは、稀に特定の「シリーズ名」を冠したユニークアイテムがドロップする。

これらは単体でもそれなりに使えるが、真価は「複数部位を同時に装備した時」に発揮される。

ゲーム用語で言う「セットボーナス」ってやつだ。

普通の鑑定スキルじゃ見えないかもしれないが、俺の目にはハッキリと見えている。

今回は特別に、今話題の【深淵の握撃】を含む【深淵の 守護者(アビサル・ガーディアン) 】シリーズの全貌を公開しよう。

世界中のタンク職、特に自衛隊や米軍の前衛諸君。

心して読め。これがお前たちがこれから目指すべき「最強の要塞」の姿だ。

【深淵の守護者】セットボーナス

このシリーズは、兜、鎧、手甲、靴、ベルト、盾の6部位で構成されている。

頭に「深淵の」とつくユニークアイテムのことだ。

これを揃えた数に応じて、以下の効果が「追加で」発動する。

俺の鑑定スキルが見た真実は、これだ!!!

■ 2セット装備時:

毎秒ライフ再生 +2%

筋力 +50

まずは小手調べだ。だが、この時点で既に強い。

「毎秒2%」を侮るな。

HPが1万あれば、何もしなくても毎秒200回復し続ける。

毒や出血のダメージを相殺し、長期戦での生存率が段違いになる。

■ 4セット装備時:

凍結無効

スタン無効

ここからが本番だ。

ダンジョンで一番怖い死因は何だ?

大ダメージ? 違う、「動けなくなること」だ。

凍結して固まったところをタコ殴りにされる。

スタンして回復薬が飲めずに死ぬ。

この4セット効果は、その事故死を100%防ぐ。

これがあるだけで、タンクとしての信頼度は跳ね上がる。

■ 6セット 装備時(フルセット) :

火炎・冷気・電撃の最大耐性 +5%

※通常75%の上限が80%になり、受ける属性ダメージが実質20%になる。

常時「護り(Fortify)」状態となる

※被ダメージを20%軽減。

アホみたいに強いじゃねーか!!!

そうだ、これはタンク向け装備の究極系だ。全てが強い!!!

最大耐性80%に、さらに20%のダメージ軽減。

これを計算式に当てはめると、通常のタンクが即死するようなドラゴンのブレスを浴びても、涼しい顔で立っていられることになる。

文字通りの「要塞」だ。

【深淵の守護者】各部位の性能

そして全身のユニークアイテムの詳細は、こいつらだ!!!

単体でも十分に強いが、どこで耐性を稼ぐか計算しながら集めてくれ。

1.兜:【深淵の面頬(Abyssal Visor)】

アーマー:800

最大ライフ:+100

火炎耐性:+60%

効果:近くの敵の物理ダメージ軽減率を-9%する(味方の物理火力が通るようになるデバフオーラだ)。

2.鎧:【深淵の板金(Abyssal Plate)】

アーマー:2500(バカ高い)

最大ライフ:+200

冷気耐性:+60%

効果:物理ダメージの10%を物理ダメージ軽減率として適用。

クリティカルダメージを受けない(事故死ゼロの鉄壁ボディだ)。

3.手甲:【深淵の握撃(Abyssal Grasp)】

アーマー:600

最大ライフ:+80

電撃耐性:+60%

効果:攻撃速度+15%。

攻撃時100%の確率で敵を「挑発」する(タンクの仕事が楽になるぞ)。

4.靴:【深淵の歩み(Abyssal Tread)】

アーマー:600

最大ライフ:+80

カオス耐性:+40%

効果:移動速度+30%。

出血無効(これも地味だが死因の一つを潰せる)。

5.ベルト:【深淵の鎖帯(Abyssal Coil)】

最大ライフ:+120

全属性耐性:+40%

効果:フラスコの効果時間+20%。

ポーション使用時、状態異常を解除する(緊急時のリカバリー用だ)。

6.盾:【深淵の防壁(Abyssal Wall)】

アーマー:1500

ブロック率:30%

全属性耐性:+40%

効果:ブロック時、ライフを5%回復。

ブロック時、周囲に衝撃波を放つ(囲まれた時に便利だ)。

どうだ?

この装備を全部揃えるのが誰になるか、これは今後の注目ポイントだぞ?

どのアイテムもユニークアイテムとして、それなりの性能だ。

しかし、全身集めた時、こいつは真価を発揮する。

こいつを全身装備したら、まさに要塞だろう!

みんな、この装備はかなり高価になるだろう!

見つけたら、集めるか売るか迷うな。

ではまた!