軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話・リカルド・フレルデント

「サリーナ、今、戻ったよ」

ドアが軽くノックされ、ステファンが顔を覗かせた。

「お帰りなさい、ステファン」

「あぁ、ただいま、サリーナ」

サリーナは立ち上がり、ドアの向こうで両手を広げているステファンの元へと向かう。

アリアも彼を迎えるために立ち上がろうとして、ステファンの後ろから、ちらりとリカルドが顔を覗かせたのに気付き、慌てて姿勢を正した。

「やぁ、アリア。気分はどうかな? 大丈夫かい?」

そう言ったリカルドに、アリアは緊張しながら頷いた。

それからテーブルに置いていた筆談用のノートとペンを取ると、声が出ない事以外は大丈夫だという事と、昨日彼の目の前で気絶してしまった事を詫びる。

「いや、構わないよ。というか、こちらの方こそ驚かせて申し訳なかった。ステファンからもサリーナからも、アリアはドラゴンなんか見た事ないのだから、驚いて気絶してしまうかもしれないと言われてはいたのだけど、馬車で何日も揺られての移動が、君の体にさわるのではと思うと、迎えに行かずにはいられなかったんだ」

リカルドはそう言うと、優しく明るい緑の目を細めて笑った。

「ところで、君の体調と都合が悪くないのなら、連れて行きたい場所があるのだけれど、構わないかな?」

リカルドの申し出にアリアは驚いたが、ちらりと見た姉が優しく笑って頷いたので、緊張してぎこちなくではあったが笑顔を浮かべ、頷いた。

「では、行こうか」

差し出された手に思わず手を伸ばしたアリアだったが、リカルドは嬉しそうな顔をして彼女の手を握ると、そのまま屋敷を出てしまった。

外に出た彼が指笛を吹くと、二頭の馬が並んで駆けてくる。

一頭は白毛でリカルドの元へと向かい、もう一頭は青毛でステファンの元へと向かう。

「アリア。僕のブレントを紹介するよ」

白馬の手綱を握り、リカルドは言った。

「ブレント、こちらはアリア・ファインズ公爵令嬢。サリーナの妹君だ。さぁ、挨拶しよう」

ブレントと呼ばれた白馬はアリアを見つめると、ゆっくりと顔を寄せてきた。

「大丈夫だから、そっと触れてあげて」

アリアは頷くと、リカルドの言葉のままに、ブレントに手を伸ばした。

そっと鼻や頬に触れると、ブレントも嬉しいのか、自分からも顔を寄せてきて、アリアは嬉しくなって笑み浮かべる。

「笑ってくれたっ……」

嬉しそうなリカルドの声が聞こえ、彼の方へと目をやると、声の通り彼はとても嬉しそうに笑っていた。

「アリアは、馬は好きかい?」

はい、と声は出せないが、アリアは頷いた。

「他の動物も?」

こくり、とまた頷く。

だが、アリアの住んでいたウクブレスト王国は近代化が進んだ国で、自然が少なくなっている国だった。

近くに森があっても、生き物を見かける事は、ほとんどない。

「このフレルデントは、自然が多く残った国なんだ。動物も、いろんな動物が居る……とても珍しいものもね。だけど人を襲ったりするような生き物は居ない、安全で平和な国だ。ここを田舎と呼ぶ者も居るが、僕はこの国を誇りに思っている……。君さえ良ければ、ここでいろんな自然と生き物に触れてほしい。君に、素敵な所を、たくさん見せてあげたい……」

この国の王太子であるリカルドが、どうして自分にそんな事を言ってくれるのだろう?

アリアは不思議に思ったが、嬉しい申し出に笑みを浮かべて頷いた。

「では、今日の目的地に行った後、いろいろと案内をしよう。さぁ、行こうか」

嬉しそうなリカルドは、軽々とアリアを抱き上げると、ブレントに乗せた。

そして自分も跨ると、アリアの華奢な体を自然に抱き寄せる。

家族以外の男性と密着した事などなかったアリアは赤面し、どうすれば良いかわからずサリーナへと目をやった。

「リカルド王子、妹は家族以外の男性に慣れていないのです! あまり困らせないでやってください!」

「そうだぞ、王子。俺の可愛い義妹に不埒な事をしてはいけないなぁ」

「ふ、不埒な事などしていないが……」

リカルドはちらりと腕に抱いたアリアへと目を落とした。

アリアが真っ赤な顔で彼を見上げると、目が合った瞬間リカルドも赤面する。

「そう、だな……今日の本来の目的地に行くだけなら、馬車で向かう事ができる。ステファンに用意してもらえばいい。だけどその後に、鳥や小動物がよく来る、静かで美しい森の湖に君を案内したいと思っていたのだが……どうする? そこには馬車では行けないのだが……」

そう言ったリカルドが、アリアには少し寂しそうに見えた。

それに、鳥や小動物が良く来るという静かで美しい森の湖を、彼が誇りに思うというこの国の自然を、見てみたいと思った。

『このまま、ご迷惑ではなければ……』

唇の動きでそう伝えると、リカルドはまた嬉しそうに笑い、満足そうに頷いた。

「大丈夫だよ、アリア。僕もブレントも、絶対に君を落としたりしないから。だから、ブレントに乗っている間は、君に触れる事を許してほしい」

アリアは耳まで真っ赤になってしまったが、誠実なリカルドに笑ってこくりと頷いた。