軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レギアスの村に着いた。

ミオの所の屋台とフィーナさんの所の露店は普段通りに繁盛しているようだ。

いや、露店の方は普段以上だろう。

ミオとレン=レンが屋台、フィーナさんとレイナが露店で手分けして客を捌いていた。

挨拶は目礼だけで済ませておく。

屋台で夕飯を買い込んで屋台裏手のテーブルについて片付けていく。

メニューは以前も食べたことがある焼きそばとスープだ。

昼飯がかなりヘビーだったのであっという間に満腹になった。

「いらっしゃい、キース」

「ども。フィーナさんの所は随分と繁盛してるみたいですね」

「嬉しい悲鳴って所かしらね。大会に向けていい装備を並べたらそれなりに繁盛するわね」

ほう。

確かに露店で品定めをしている客は半分以上がプレイヤーだった。

しかも弓使いが多い。

レイナ製作の弓と矢が狙いか。

「今日も売り物があるのかしら?」

「これです」

机に獲物を並べていく。

邪蟻の針に甲、銀鶏の翼、縞狸の皮、血潮牛蒡、銀鶏の卵、それに黒曜石。

野生馬の皮が5枚、野生馬の肉は3つ。

そして暴れ馬の肉、大本命の暴れ馬のコードバンだ。

「何これ、キレイなものねえ」

フィーナさんもコードバンに驚きの目を向けている。

オレでも知っている高級皮革素材だしな。

色は濃い茶色、その表面はまるで鏡のようだ。

靴やブーツ、鞄、財布、ベルトにもいいだろう。

「皮は何か装備でも作るの?」

「そうしたい所ですがもう依頼してるんですよね」

「コードバンの方は何かにしたいんでしょ?」

「勿論です」

「じゃあ売るのは保留ね。他の皮はどうする?」

「売ります。保留はコードバンだけで」

フィーナさんは少し考え込む。

どうやら計算しているらしい。

コードバンを見る目も気になるが、野生馬の皮にも興味津々のようだ。

「サキは今日工房に行ってるわ。うちのギルドにもヘルプで2名来てるけど時間に空きはないわねえ」

「フィーナさん?」

「現物を見せないとなんとも言えないわ。貴方の依頼分のなめしも多分進んでいると思うの」

「では別口で装備を一新ですか」

それは困ったな。

いいアイデアが思いつかない。

「すぐに思いつきません」

「私もだわ。一応メッセで送っておくけどいい?」

「勿論です」

「本当はこっちから工房に持ち込みたいけど。このコードバンでは悪目立ちし過ぎるわね」

「ですよね」

「じゃあこれだけは預かっておくわね。ミオ!」

客が少なくなったタイミングでフィーナさんがミオを呼んでいた。

「改めておっす!」

「やあ。もうこんばんは、だね」

「うむ。おお!またお肉!それにまたゴボウかー」

やはり食材に食いついたか。

そして暴れ馬の肉に目を見張る。

「暴れ馬って。どこにいたの?」

「街道沿いで遭遇したよ」

「強かった?」

「はぐれ馬とはまるで比較にならないほど強かったね」

「うーむ」

「草原のウサギみたいに強い個体がいるって事かもね」

「このお肉は安定して欲しいなー」

無茶言うな。

あれと連戦とか考えたくない。

現時点ではせいぜい一日一頭でお願いしたい。

いや、そもそもホーン『ド』ラビットと同様、狙って遭遇できるような相手とは思えないが。

「じゃあ精算するわ」

「お願いします」

ミオがなにやらブツブツと呟いているが気にしないでおこう。

悩む事などどこにあるというのか。

馬刺し一択でいい。

アイテムを纏めて売った金額はかなり多くなった。

聞いてみたら野生馬の皮が一番いい値段になるようだ。

うん。

今後もはぐれ馬は的にしてあげよう。

時間が過ぎるのが早いな。

もう午後6時半になっていた。

早々に辞去してレギアスの村を出発する。

そろそろ日が暮れる。

召喚モンスターも交代の時間だ。

師匠の家に戻ってから召喚モンスターを入れ替えた。

黒曜はそのまま引き続き活躍して貰う。

残月、ヘリックスを帰還させて、ヴォルフと護鬼を召喚する。

MPバーはそれなりに減ったが、まだ3割近く残っている。

師匠の家周辺であればさほどリスクを負わずに狩りができるだろう。

ノクトビジョンで視界を確保する。

やる事はこれまでと変わらない。

樹上のギンケイの巣を襲う。

イビルアントで仲間を呼ばせて狩り続ける。

その繰り返しだ。

ギンケイの卵を強奪して樹上から跳び下りたらそのインフォが来た。

《これまでの行動経験で【跳躍】がレベルアップしました!》

跳躍、ね。

かなり前に取得した補助スキルだ。

忘れてました。

ええと、確かこの技能はどういう経緯で取得したんだっけか。

そうだ。

師匠と戦わされた魔物のレア食材でスキルを取得したんだった。

今までまるで気にしてなかったです。

まあいい。

狩りを続けるか。

イビルアントを相手にして久しぶりにロッドを手にして戦って見た。

やはり戦い難い。

素手で頭を捻るのは簡単だが、今日はある狙いがある。

護鬼に戦闘経験を積ませること。

オレ自身はロッドを手にした戦闘にも馴染んでおくことだ。

大会に持ち込む武器を何にするか。

間合いが異なる武器を用意しておくのは悪くない選択だ。

長射程は呪文に頼るとして、近接戦闘においても間合いは重要だ。

今、想定しているのはメインにロッドとなる。

できれば打撃戦、さらには密着して投げ技や関節技にもっていきたい。

トンファーはどうなるか分からないし、隠し爪は打撃戦以降の文字通り隠し玉としたいのだ。

戦う相手がどんな戦闘スタイルになるのか分からない。

それこそが一番の難点であろう。

孫子に曰く。

敵を知り己を知れば百戦危うからず。

有名な一文だが、その続きもまた重要なのだ。

敵を知らず己を知れば一勝一負す。

敵手となる相手の事を知らなくとも、自分の事を知っていれば勝負は五分である、という意味だ。

敵となる相手を知る事が例えできないのだとしても、自分の事を知る事はできる。

そして続く一文がこれだ。

敵を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず危うし。

敵となる相手を知る事どころか、自分の事を知らないようでは必ず負ける、という意味になる。

まあ当たり前なんだが。

裏の意味を辿るとどうだろう。

敵を知る事。

自分を知る事。

果たしてどちらがより難しいだろうか。

なかなか意味深な格言だろう。

素直に読み込めば、自分の事くらいは自覚しておけ、との警告にも取れる。

だがそれだけだろうか。

いかに自分の事を知ろうともしない輩が多いのか。

そこを皮肉として笑っているようにも思える。

いずれにしても最初の一文だけで覚えておくのでは、この格言の意義は半減以下なのだと思う。

おっと、脱線したか。

大会出場は本意ではなかったが、やるからには意義のあるものにしたい。

相手の事を知る事ができないにしても、自分に何ができるのか、推し量っておくのは基本だ。

いや、それしか出来ないのだけれども。

それには自分の弱い部分を直視する事も含まれる。

嫌な気分に苛まれる覚悟が必要になるのだ。

誰も嫌な気持ちになるような事を望む筈もない。

だからこそ、人が嫌がるような、耳に痛くなるような意見を述べるのは勇気が要る。

それは自分自身に問いかける時だって同じことだ。

オレの弱点は承知している。

とはいえ今更だ。

手持ちのカードでやり繰りするしかあるまい。

いかん、脱線したままだ。

狩りに集中しよう。

考え事をしながらもイビルアント狩りを継続していた。

いかん、真面目にやるんだ、オレ。

《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》

《【回避】武技のスウェイバックを取得しました!》

《【回避】武技のサイドステップを取得しました!》

どうやら回避がレベルアップしたようだ。

いや、本当は受けレベルが上がって欲しかったんだが、先に回避が上がってしまった。

いかんな。

意図的にロッドで受けていた筈なのだが、無意識のうちに回避行動をとってしまっているのか。

粘るしかあるまい。

再びイビルアントと対峙する。

ある程度、仲間を呼んで増えてきた所で数を減らしてゆく。

こっちはまだレベルが低い護鬼がいるのだが、問題なく常時3匹程度の数を相手にしていた。

概ね10分を目安に狩り続ける。

時計のストップウォッチで10分が経過、アラーム表示が出た時点で狩り尽くした。

どうだ?

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『護鬼』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

うん。

嬉しいのだけれど、どうしてもこれじゃない感が。

ステータス値で既に上昇しているのは筋力値だった。

任意ステータスアップは器用値を指定する。

召喚モンスター 護鬼 鬼Lv1→Lv2(↑1)

器用値 17(↑1)

敏捷値 13

知力値 9

筋力値 17(↑1)

生命力 17

精神力 11

スキル

弓 手斧 小盾 受け 回避 隠蔽

これでいいか。

まだまだ先は長い。

数字を揃えていくのにも時間がかかりそうだ。

午後9時を過ぎた。

イビルアントではあまり効果がないのか?

いや、ちゃんと回避は成長しているのだからいける筈だ。

午後10時を過ぎた。

イビルアントを狩り続けるのにも飽きてきそうになった時、インフォが来た。

狙い通りか?

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヴォルフ』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

うむ。

そうきたか。

無論、不満などあってはならないのだが、釈然としないのも確かだ。

ステータス値で既に上昇しているのは生命力だ。

任意ステータスアップは精神力を指定する。

ヴォルフ ウルフLv5→Lv6(↑1)

器用値 11

敏捷値 25

知力値 12

筋力値 12

生命力 18(↑1)

精神力 11(↑1)

スキル

噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知 追跡

かなり理想に近い形に近づいているだろう。

さすがに一番の古株なだけあって数字の見栄えもいい。

この日、肝心の受けスキルはレベルアップしなかった。

もう少し粘る事もできたのだろうが、ログアウト前に大会要綱に目を通しておきたかった。

師匠の家に戻ろう。

2階の部屋で大会要綱を斜め読みで眺めながら思う。

小さい頃、教わった技を使ってはいけない。

そう戒められた時の事を思い出す。

ここではその禁忌はない。

確かにキャラクターを殺してみても死に戻るだけだ。

果たして痛め技でギブアップを奪えない場合、躊躇なく殺し技をオレは使うのだろうか。

いや、既にプレイヤー・キラーを反撃で殺している。

今更、何を恐れるか。

そもそも人を殺せるような技を習得しておきながら使わずに朽ちていくつもりだったのか。

分かる筈もない。

要綱を読んでいても頭に何も入りそうにない。

ダメだな。

呪文リストを見直して再編集しておこう。

その作業を終えるとようやくログアウトとなった。