軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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『PKを知らない・・・だとお?』

ずっと黙っていたミオが唸った。

理由は分からないが怒っているような気がする。

いや、PKと聞いて思いつくものはあるけど、このゲームと関係ないでしょ?

『本当に知らないの!PKだよPK!』

『サッカーでキーパーとキッカーが1対1で』

『それはペナルティキックのPK』

『ほら、超能力者が手で触らずに物を動かしたり』

『それはサイコキネシスのPK』

『ゲームとかで後付けの追加シナリオとか機能強化してるプログラムを売ってるよね?』

『それは某社が出してたりするパワーアップキットのPK』

『死語だと思うけどパンツが』

『言わせないよ!』

興奮するミオをレイナが羽交い絞めにして抑止した。

いや本当、意味分かりません。

『フィーナよ。この男は本当に大丈夫か?』

『キースはこの手のゲームは本当に初心者みたいよ?そうだ、説明はジルドレにお願いしたいけど』

『断る。付き合いはお前さんの方が長いだろうに』

『ほんの一日なんだけど』

フィーナは深く溜息をつくと説明を始めた。

『PKはプレイヤー・キラーの略。プレイヤーがプレイヤーを殺してしまう行為そのものも意味するわ』

『そんな事ができるんですか?』

『この手のゲームでは仕様として出来なくしているのもあるけど、アナザーリンク・サーガでは可能』

へえ、そうなのか。

ゲームとはいえ結構な自由度があるんだな。

犯罪行為もアリとは社会の縮図と言えなくもない。

『プレイヤー・キラー行為は程度がどうであれ、俗に悪堕ちと言われてる現象が起き易いの』

『盗賊、ならず者、詐欺師、暗殺者といった犯罪者の職業に強制ジョブチェンジする事になる!総称して悪堕ち!』

『そういった職業でないと得られないスキルもあったりして望んで悪堕ちを狙う人もいるのよね』

『悪堕ちしたプレイヤーの偽装スキルや変装スキルは厄介!βでも酷い目に遭遇したし!』

『オレは少人数のPK行為は是認する立場だけどな。ゲームにだって適度な緊張感が必要だと思うしねえ』

カヤが会話に割り込んできた。

『だからこそ対応は先手を打つべきだね。キースを守るための予防線をもう一枚張る事を提案したい』

『カヤ、具体的には?』

『ジルドレ、フィーナ、オレの3人で掲示板のアイテム情報スレに状況を書き込もう。そして主なスレに拡散する』

『内容は?』

『ぶっちゃけ再度警告だな。あと鍛冶職人には個人で持ってる伝手を使ってメッセでも回状を出そうか』

『フィーナはそれでいいのか?』

『ジルドレこそいいの?貴方の所のプレイヤーズギルドは全員が鍛冶持ちで影響が大きいと思うけど』

『甘受しよう。なんにせよ現物が1つしかないのでは致し方ない』

なんか大変な状況みたいなんですけど。

オレも当事者みたいに扱われているが正直実感がない。

困ったなあ。

骨か。

話を切り出すタイミングがなかったけど、今話をしておこう。

『ああ、現物と言えば。雪猿の骨なら何本かありますけど』

再びその場の空気が凍りついた。

間違いなく、凍りついた。

何故だろう、オレに突き刺さる視線が痛いです。

「とりあえずお茶でも飲んで落ち着いてから話を続けましょうか」

「あー今までの話し合いの意味が半分位吹き飛んだかなー」

ウィスパーを一旦解除すると皆でお茶となった。

ミオの脱力感が酷く見える。

オレに聞こえるように愚痴を言うのはお願いだからやめて欲しい。

「あーなんか疲れた・・・」

「ミオ、あんたはツッコミ入れてただけ!」

フィーナさんの目の前にはオレが取り出したアイテムが並んでいる。

雪猿の骨が3本、雪猿の皮が1つ、雪猿の骨を使った石斧だ。

フィーナさんが沈黙したまま考え込む様子をジルドレとカヤが見守っている。

ミオ達とは対照的に奇妙な緊張感がある

「これは提案。ジルドレの所に2本、カヤの所に1本、石斧は分解して私の所で」

「形はどうするかね?キースと直接交渉するにしてもフィーナを仲介にした方が無難なんだが」

「リスク回避だけで大仰だけどその点も考えたわ。それはダメ」

「そんなにカルマが怖いか?」

「当然。経験値と引き換えでもゴメンだわ。でも値付けは私のほうでやるのがいいでしょうね」

「承知だ。カヤはどうだ?」

「そっちの方が気楽でいいねえ。つかキースに売る意思がないと意味ないよ?」

一斉に視線が飛んできた。

いや、怖いですよ皆さん。

「売ります。値段についても異存はないです」

「ああ、それに掲示板の件は早めにやっておこう。激レアがレアになっただけに過ぎんのだし」

「使用権レンタルの話はなしだな。だがこっちで分担する2本のうち1本は使用権をレンタルできるようにしようと思う」

「ジルドレ、それでいいの?」

「構わん。こっちから提案していた事だ」

「本音を言ってもいいのよ?鍛冶スキル持ちのプレイヤーをもっと囲い込みたいんでしょ?」

「フィーナ。うちのギルドは鍛冶職の独占を目指してる訳ではない。より効率的な支援に必要だからだ」

「立派な信念で結構だわ」

なんかフィーナとジルドレの間では色々と含むような言い回しが多いな。

昔なにか遺恨でもあったんですかね。

仲良くして欲しいものです。

「うちの方でも使用権レンタルはしたいわね」

「うむ。少しでも不平不満は解消すべきだ」

仲が悪いように見えても双方に一定の合意は成立する。

なかなかにビジネスライクで好ましくはあるな。

「キース、ここからは商売の話になるけどいい?私が付ける値段は骨は1つで1,200ディネ、石斧は1,300ディネよ」

「おい、低すぎないか?」

「それでもレア度暫定基準で計算した数字にギリギリの上乗せをしてるわ」

「なあ、オレ達が不当に利益を得るような構図を作ろうとしてないだろうな」

ジルドレとカヤの表情は切迫している。

何か問題でも?

「言っておくけどキース一人にカルマを背負わせるつもりなら別の値段を付けるけど?見損なわないで」

その言葉には二人とも押し黙った。

カルマって業のことか。

そんなステータスは見た事がない。

「同意する?」

「分かった」

「うん」

ようやく長い話し合いが終わったようだ。

そしてオレの手持ち金に100ディネ銀貨が37枚追加になった。

冒険者ギルドで貰った報酬を入れてある小袋に放り込んでおく。

ジルドレとカヤは用件が済むとさっさと姿を消していった。

「やあキース、ちょっと手間取ったけど防具が出来たわ。サイズ微調整するから一旦装備して貰っていい?」

サキが屋台に着くなりそうは言ったものの、こっちの様子が変なのに気がついたようだ。

恐る恐る聞いてくる。

「ねえみんな、遅れてきた事を怒ってるの?だったらゴメンね」

「あーサキ姉、そういうんじゃないんよー」

「サキ。キースへの納品を先に済ませて、話はその後で」

サキが取り出した防具は実用性重視のものでミオが装備しているような可愛らしいデザインとは無縁のものだった。

防具は肩周りに多少の余裕があったようで詰めて貰うことに。

とは言え皮紐で調整できたのですぐに済んだけど。

上半身だけで見たら左側と右側で非対称になるデザインになる。

素材は基本、野兎の皮を加工したものだ。

胸当ては心臓を胸と背中側からカバーする事を重視したもので上半身を全てカバーはしていない。

まあ6割方って所か。

そして心臓位置の部分には補強として邪蟻の甲がカバーとなって付けてあった。

特徴は左肩カバーに雪猿の皮が使われていて、鷹であるヘリックスが止まるのに十分な厚みがある。

同様に雪猿の皮は左腕のカバーにも使われていて、そっちにもヘリックスは止まることが出来た。

ヘリックスが今までの定位置だったロッドの先端に行かなくなってしまっている。

今まで不自由させてゴメン。

両肘と両膝のパッドも野兎の皮製で、注文通り邪蟻の甲がカバーに使われていた。

そして両手のオープンフィンガーグローブ。

これも野兎の皮製でかなり柔らかく加工してあるようだ。

拳を握るとナックルパートに4つに分割された邪蟻の甲が皮に張り付いている。

手の甲も同様の工夫がしてあった。

文句の出ようがない仕上がりだ。

【鑑定】してみたらこんな感じである。

【防具アイテム:胸当て】野兎の胸当て+ 品質C レア度2

Def+5 重量4 耐久値100

野兎の皮製の胸当て。皮は柔らかいまま加工して動きやすさを優先させている。

[カスタム]

左肩に雪猿の皮を用いている。

心臓部分のカバーに邪蟻の甲を用いており、僅かながら防御点と耐久性の向上を得た。

邪蟻の甲は嵌めるだけで交換が可能。

【防具アイテム:腕カバー】雪猿の腕カバー 品質C+ レア度3

Def+2 重量1 耐久値80

雪猿の皮製の腕カバー。

皮は非常に柔らかく加工して突起物が程良く食い込むようにしている。

【防具アイテム:肘当て】野兎の肘当て+ 品質C レア度2

AP+2 Def+2 重量1 耐久値80

野兎の皮製の肘当て。皮は柔らかいまま加工して動きやすさを優先させている。

[カスタム]

打突部分に邪蟻の甲を用いており、肘打ち攻撃に補正がつく。

【防具アイテム:膝当て】野兎の膝当て+ 品質C レア度2

AP+2 Def+2 重量1 耐久値80

野兎の皮製の膝当て。皮は柔らかいまま加工して動きやすさを優先させている。

[カスタム]

打突部分に邪蟻の甲を用いており、膝蹴り攻撃に補正がつく。

【防具アイテム:グローブ】野兎のグローブ+ 品質C レア度3

AP+2 Def+1 重量1 耐久値90

野兎の皮製のオープンフィンガーグローブ。皮は柔らかいまま加工して動きやすさを優先させている。

手先を用いる行動に対するペナルティもなく使いやすい。

[カスタム]

打突部分に邪蟻の甲を用いており、ナックルパート、手甲部による攻撃に補正がつく。

「キースはサモナーで魔法も使う訳だから金属部品はなし。当然M・APにペナは付いてないわ」

「十分過ぎますよ」

「いやいや。ああ、もっと皮があったら上半身をカバーできるように仕立て直しできるし、腰周りも作れるからね」

「そうですか、皮は数枚しかないんですが邪蟻の甲はもうあるんで、いずれ注文するかもしれません」

「え?」

フィーナさんが机の上を指差す先には雪猿の皮が1枚、それに重ね合わせてある邪蟻の甲に邪蟻の針の束がある。

「サキ。また持ち込みがあったのよ」

「なるほど、これはまた腕が鳴るわね」

「さっきまでもっと洒落にならない物もあったけどね!」

フィーナはその手に石斧を持っていた。

柄が雪猿の骨の代物だ。

「骨、更に3本あったわ」

「それはまたしても爆弾になるのかしら?揉めなかったの?」

「当面は凌げたって思いたいわね」

「じゃあ交渉はもうフィーナの方で終わらせたのね?出遅れてゴメン」

「いやー精神的に参ったわー」

「?」

「サキ、後で話すから」

すみません。

なんか余計なことでご迷惑をかけております。

でも知らないものは知らないんですよ。

分かってくださいよ。

「キース、こっちの品は私達に売る?それとも何か作る?」

「そうですね、頭を防御できる装備は作れそうですか?」

サキさんに目を向ける。

また何やらブツブツと呟き始めた。

前も見たがこれは彼女の計算する時のクセのようなものなのか。

「もう1枚、いや2枚。野兎の皮はある?ちょっと工夫しないと雪猿の皮だけだと難物なのよ」

「あります」

「あとさすがに頭のサイズは測らないと。頭鉢は当然フルカバーにするけど」

「耳カバーは最小に出来ますか?」

「うん。それは大丈夫かな?」

改めて《アイテム・ボックス》を漁る。

レムトの町へと来る途中で狩ったホーンラビットから剥ぎ取った野兎の皮は3枚あった。

ついでに邪蟻の甲と針も売れるものは出すことにした。

「これらの皮は全部渡せます」

「フィーナ、計算お願い」

「やっておくわ」

「おっと、防具の加工費だけど600ディネ程でいいかな?雪猿の皮だしちょっと上乗せになるけど」

「大丈夫です」

それでも収支は十分にプラスだ。

冒険者ギルドの依頼分もあるし。

「じゃあ頭のサイズ測っちゃおうか。そこの椅子に座ってね」

「あ!サキ姉、私達って西のレギアスって村に行くんでしょ!受け渡しはどうするの!」

ミオがフィーナを見るが思い出したかのように舌打ちした。

「フィーナがレムトに残ればいいんだけど東に仕入れに行くんだっけ」

「今日の午後にはね。もう4人ほどギルドの身内を待つことになるけど明後日までレムトには戻らないから」

「配達は無理か」

「いや、納期はそうシビアじゃなくていいです。今の調子でも一部の魔物以外は不便がないんで」

「いやいや、新たな獲物を求めて狩りをするならいい防具は早めに準備しなきゃ」

でもフィーナ以外は西の方向に行くのか。

方向が一緒なら落ち合うのも楽だろう。

「では出来上がったらメッセージで連絡して下さい。私も西の森周辺でうろうろしてますから」

「いいの?」

「ええ。ついでと言ってはなんですがレイナさんはロッドを作れますか?」

「え?そりゃ木工職人なんだし当然!ロッドは単に棒状に加工するだけだから至極簡単!」

「じゃあ依頼したいんですが、材料となる木材はさすがに手元にないんですけど」

「じゃあ素材はこっちにお任せね!先に加工費だけ貰って材料費は後で請求でいい?」

「大丈夫です」

「よし!じゃあ200ディネで!」

おお、意外にリーズナブル?

「サイズはどうする?あと素材に注文はあるかな?」

「長さは50インチ、太さは1インチで」

「ちょっと単位がおかしい!」

おっと。

これは失礼。

換算ついでに少し注文サイズも調整しとこう。

「長さは120cm以上125cm以下。太さは25mm前後の円形で。材質は硬いほうがいいんですが、汗で滑り難いのがいいですね」

定番のサイズに比べると気持ち短めでやや太めってサイズになる。

よく素材とされる白樫は硬くて丈夫だが滑るんですよ。

このゲーム世界にはより良い素材があるものと思いたい。

これで装備関係で一定の強化になるかな?

いや、靴が残っているな。

もう少し皮を調達しないとダメだろう。

木靴はさすがに避けたい。

「おっけ!あとキース、ロッドで殴るような戦い方を考えているでしょ!」

「はあ。普段も殴る方向で使ってます」

「どの武器も使い続けると補修が必要になるものだけど、木製武器は補修が難しいの!その点は注意して!」

そういうものなんでしょうか?

安い武器ならそれでもいいか。

「分かりました」

「おう!ちょっと工房で素材探してくる!」

レイナはバタバタと出て行こうとするが、後ろから襟元をミオに引っ張られた。

首、締まってます。

「レイナちゃん、つくね食ってねーし!味見てよー!」

そんな様子を見るフィーナさんもサキも少し雰囲気が和らいでいるようだ。

目出度い。

ああそうだ。フィーナさんに質問しとこう。

「そういえば先日売った中にレア度4のアイテムもありましたけど、それは騒ぎにはならないんですか?」

「ああ、縞野兎の角ね。あれはもうそこそこの数がプレイヤーに狩られてるから。用途も既に知られてるし」

「何に使われるんですか?」

「ロープの先に着けたり、ピッケルみたいに使ったり、棹状武器の先端にしたり色々ね」

「魔物の素材も色々と使い様があるんですね」

「ええ」

「雪猿の骨にしたってフィールドクリアした先にいけば普通に手に入るんでしょうね」

「間違いなくそう。それにしても骨に関しては運営が意識して誘導してるのかどうかも気になるわね」

「?」

「矢が不足、ポーションが不足、序盤に見合わないアイテムの提供、色々と穿った見方をするとどうしてもね」

「何か問題になりそうなんですか?」

「わざと問題点を作って平時に乱を望むような介入だとするとね。今後も似たような事を仕掛けてくるかも」

「はあ」

「ゲームの中だからこそ人間の欲が剥き出しになるような行動が起き易いの。困ったことだわ」

ゲームの中だからこそ、プレイヤー・キラーなんてものも横行するって事なんだろうか。

気をつけたいものです。

少なくとも、他人に迷惑をかけるような言動は謹んでいかないと。

確かにオレはこの手のゲームは初心者だ。

本当は色々と相談すべきなんだろうな。