軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19話 説明する

微妙な雰囲気を全部気付かなかったことにして、ジェットコースターに乗ったり、魔法の世界を満喫したり、とにかくテーマパークを楽しんだ。2人が何か聞きたそうにしてても無視だ。

途中、お土産を見てる時に2人が離れたタイミングで、瑛士にはこれ以上は誰にももう何も言いふらさないようお願いした。

瑛士は約束したことは守るタイプなので、これで他の人には何も言わないだろう。

問題はほとんどバレてしまっている2人だな。

あと3日でどうするか考えなきゃいけない。

大阪旅行から帰ってきてから次の日。

ネットでとある動画が上がったことが話題になった。

『私の名前は 小嵜麻夢(こさきまゆ) 。この日本で生まれ、21年間日本で育ちました。今回こうして動画を撮っているのは皆さんにある事を伝えたいからです』

動画に出てきた女の顔はこの前俺のダンジョンに来た女と同じだ。間違いなく同一人物だろう。

まさか本当に表に出てくるとは。

動画は5分ほどある。

SNSで話題になってたからある程度は内容はわかっているが、とりあえず見てみることにした。

『昨年の元日。世界は未曾有の事態に見舞われました。ダンジョンの出現です。私にはその出現が1ヶ月前から分かっていました。

ダンジョンマスターという存在をご存知でしょうか?都市伝説としてネットやたまにテレビでもダンジョンを運営してる人と取り上げられている存在です。

大多数の人間はあくまでも都市伝説であり、ダンジョンマスターは実在しないと思っているのではないでしょうか。

でも、ダンジョンマスターは実在します。私がそうです。私以外にも、ダンジョン1つにつき、必ずダンジョンマスターがいます』

相変わらず前置きが長いな。

もうちょっと端的に説明できないのだろうか。

『ダンジョンが世界各地に出現するおおよそ1ヶ月前、私たちには声が聞こえました。ダンジョンマスターに選ばれました。1ヶ月後、人類の侵攻が始まります、と。

その際、ダンジョンマスターになるかどうかは選べましたが、私は気づいたらダンジョンマスターになることを了承していました』

流石に二日酔いで記憶がほぼないとは言えないか。

『ここからが本題です。私はダンジョンマスターになんかなりたくなかった。人類と戦いたくありません。侵攻し、侵攻される関係なんてまっぴらごめんです。

私は1人、私の他にダンジョンマスターになりたくなかった人を知っています。もしかしたら他にもいるのかもしれません。だからといって、ダンジョンの攻略をやめてほしい訳ではありません。私もすでに2つのダンジョンを完全攻略しています。

今回はただ、ダンジョンマスターの存在と、ダンジョンマスターの中でもなりたくてなったわけじゃない人がいる事を皆さんに知って欲しくて動画にしました』

動画は最後にここまで見てくれてありがとうと言う言葉で終わっていた。

コメント欄はネタと捉えてダンジョンについて質問している人もいれば、誹謗中傷をしている人もいた。ダンジョンマスターになった背景がほとんど語られてなかったせいか、同情的なコメントは見かけない。

SNS上の反応だと、3割くらいの人が素直にダンジョンマスターの存在を信じて、残りの人たちは炎上狙いの嘘だと思っている感じだ。

まぁ、動画の内容が存在を知って欲しい、だけで終わったらそうなるか。

ダンジョンマスターらしい要求もしなかったし、ダンジョンマスターだという証拠もなかった。

これじゃあニュースにすら取り上げられない。

もうちょっと話題性がないとな。

あいつらに説明する時の補足くらいには使えるか……?

もう、誤魔化すのだいぶ厳しいからな。本当にどうしようね。

それから2日後。

友人たちが来る日になった。

一応何を話すか頭の中でまとめてきた。

予想外の行動をしてくる生き物、瑛士は事前に余計なことをしないよう言いくるめている。

インターホンが鳴る。

俺ん家の最寄り駅で集まって一緒に来たようで、ドアを開けてみたら3人が居た。

とりあえずまとめて家に上がらせる。

今日は都合よく両親が2人とも居ない日だ。聞かれたくない話をゆっくりするのにちょうどいい。

3人を部屋に通して、その辺に座らせる。

いつものくだらない雑談がない事から、2人……遊太も光介もそこそこ緊張しているようだった。

瑛士?あいつはどうせ何も考えてない。たぶん2人とも喋ってないから俺も!ってところだろう。

全員喋らないなら俺から話し出すしかない。

「何から話すか迷ったんだけどさ、一昨日トレンドになってた動画見た?女性が私はダンジョンマスターですって言ってたやつ」

「あー、あれね。一応見てきた」

「俺も」

「俺も見たよ!」

見ていたなら話は早い。

「動画内で私の他にダンジョンマスターになりたくなかった人を知っています、って言ってただろ?あれが俺の事なんだよ」

「てことはやっぱり……」

「あぁ。俺もダンジョンマスターだ」

言質は取られてはいないから、否定し続けることも出来たが、そうするとやましい事があると思われかねない。

だったらいっそ全てを説明してこちら側についてもらうよう説得した方がマシだと判断した。

「じゃあ、蒼斗はダンジョンマスターになりたくなかったって事なのか?」

「いや。別にそう言う訳じゃない。小嵜さんにはそう言わないと帰ってもらえなさそうだったから合わせた。敵対したくなかったし」

「えっ!蒼斗のとこに来てたんだ!」

「どうやって蒼斗居場所を知ったんだ?そいつ」

「あー、俺のところに来たって言うよりは俺のダンジョンに来て攻略しようとしていた小嵜さんに会いに行ったんだ。

小嵜さんも動画で言ってたけど、ダンジョンにはそれぞれダンジョンマスターがいるんだよ。俺のダンジョンにも来る可能性あったから、ダンジョンマスターが来たらわかるようにしてたんだ」

ちなみにダンジョンの場所は北海道の富良野、宮城の仙台、東京の町田、東京の小笠原諸島、埼玉の所沢、千葉の松戸、大阪の梅田、奈良の奈良市、広島の府中市、長崎の佐世保、福岡県の北九州市にある。

それに政府が潰した渋谷と群馬、あの女の海の中のダンジョン、そして動画であの女は2つ攻略したと言っていた。それを合わせると元々ダンジョンは合計16個あったってことだな。

「つまり、11人のダンジョンマスターがいる訳か」

「正確には小嵜さん入れて12人だけどな」

「あぁそうだったな。2人はどこのダンジョンマスターなんだ?」

「俺は梅田ダンジョン!蒼斗は?」

「町田ダンジョンを運営している」

「どっちも有名なダンジョンじゃねぇか」

「えへへ」

瑛士がなぜだか誇らしそうにしている。

作るのも運営するのも全部AI任せなのにな。

「てかさぁ、なんでお前らなの?」

「さぁな。声には“抽選により、ダンジョンマスターに選ばれました”って言われたけど」

「それ!俺も言われた!」

だろうな。

ついでにあの女も聞いてるからダンジョンマスターに選ばれた人は全員聞いているんだろう。

「で、抽選で選ばれてダンジョンマスターになったはいいものの、完全攻略状態……渋谷のみたいにダンジョンのコアを壊されると死ぬと知って、俺は死にたくないからダンジョンを作った」

「そうなの!?」

「なんで瑛士は知らないんだよ」

「アホだからだろ」

「マジでそう。生死かかってるダンジョンの運営全てサポートキャラに任せてるからな」

「サポートキャラ?」

「シロンちゃんって言うんだ!かわいい声してるよ」

「本来はダンジョン運営をサポートするだけのAIだよ。複数から1種類選べる。」

「そんなのあるんだな」

「じゃなきゃ瑛士みたいなやつがダンジョンマスターになったら終わるだろ」

「「確かに」」

2人の声が被った。

思うことは一緒か。

「いや待て、あの動画の内容が正しいなら、ダンジョンマスターになるかどうかは選べたんだろう?」

「もちろん断ることも出来たよ。その代わり声を聞いた記憶は消されるけどな」

「記憶消されたくなくてダンジョンマスターになったのか?」

「いや……なんだろう。なんとなく……?」

「なにそれ。ちなみに瑛士は?」

「面白そうだったから!」

「……瑛士の方がまだマシな理由だな」

理由を聞かれてもパッと思いつかなかった。俺は気づいたら<はい>を選んでいたからな。

けど、瑛士の方がマシって言われるとなんかこう、ちょっとだけ癪に触る。

「とにかく、俺は攻略されたら死ぬって知ったから、死なないために真面目にダンジョンを作った。だからと言って人を殺したいわけじゃないから、初心者向けのかなり緩いダンジョンだけど。瑛士は馬鹿だからダンジョンを作った。こいつに関しては何も考えちゃいない」

「少しは考えてるよ」

「たとえば?」

「えっと……」

「ああ……なんとなくわかった」

「瑛士、お前ってやつは……」

2人は瑛士を可哀想なものを見た時と同じ目で見ている。

ここまで話して、2人はダンジョンマスターにマイナスの感情を持っていなさそうだった。身内に殺された人でもいなければそんなものだろうか。

2人の緊張がだいぶほぐれ、場の雰囲気が緩んだところで次の議題に行こう。

「2人に相談なんだけどさ。どういうドロップアイテムがあったら探索者が喜ぶと思う?」