作品タイトル不明
98話 構造
「このCタイプは先ほどのAタイプとBタイプを組み合わせたものでしてね。ドローンの羽がついたことでより早く動けるように改良されました。ただ、画質はAタイプと変わりません」
……ならAタイプとあまり変わらないのでは?
「ただ、このCタイプにはAタイプにないAIが搭載されています。探索者の動きをAIに学習させ、将来的にはBタイプにCタイプで学習させたAIを搭載させる予定です」
「なるほど」
つまり、Bタイプもいずれはダンジョン産カメラと同じく使用者に自動的に着いていく仕様にしたいということか。
AIで動きを学習させるために、まずはCタイプの販売を行う感じだろうか?
「Cタイプはダンジョンでの実証実験を行ってないので、ちゃんと使えるかわからないんですけどね」
なんでそれを持ってきたんだよ。
「……ここで試しますか?」
「ええ、そのつもりで持ってきました。町田様、起動をお願いしてもいいですか?」
「わかりました。ここじゃ狭いので隣の部屋に行きましょう」
前に文字の実験をした時に増やした部屋だ。奈那さんに謎解きを解かれて無意味になった扉は現在外してある。
その後は何も設置しなかったため、この机と椅子がある部屋よりはだいぶ広い。
と言うことで、隣の部屋に行ってCタイプのカメラを起動してみる。スイッチを押すとドローンの羽が周りだし、ゆっくりと本体が浮いた。
試しに数歩歩いてみる。
問題なくカメラはついてきた。
「動作は問題ないようですね。あとは激しく動いた時について来れるかですが、これは俺じゃなくて前線で活躍している探索者にお任せした方が良いかと」
「ええ、そうする予定です。ご協力いただきありがとうございます」
「これ、俺がやる意味ありました?」
「願掛けみたいなものです。Cタイプは中身こそAタイプとBタイプの掛け合わせですが、作成手順を従来のやり方とは異なる方法をとっていましてね。ちゃんと起動するかはわからなかったんです。なら、ダンジョンマスターである町田様に任せた方が成功しそうじゃありません?」
あんまりダンジョンマスターだからって関係ないと思うけどな。
相手は機械なんだし。
まぁ、これくらいで満足してくれる協力なら別にいいか。
「東畳さんがそう言うならそうかもしれませんね」
「実際に無事起動にできたのでお任せして良かったです。それで、町田様の意見をお聞きしたいのですが、発売するとしたらAタイプとBタイプ、どちらが良いと思いますか?」
「……どっちかを発売するんですか?」
Cタイプをわざわざ作るくらいだ。
どちらの商品も出来をあまり満足していないと思ってたんだけど違ったんだろうか。
「ここだけの話、同業他社も浮遊するカメラの開発に躍起になっているんです。先に発売される前にとりあえずうちから何か出しておきたいのが上の意向でして……ダンジョンアイテム開発でずっと1番を取り続けていたものですから、何事も1番じゃないと気が済まないんでしょうね。
自分は生物学部門所属なのでまだマシなのですが、開発部は見てて可哀想になるくらい朝から晩まで休みなくずっと実験に勤しんでいます。もう少しペースを落としても問題ないと思うんですけど。
……すみません、こんなこと町田様に話す内容じゃなかったですね」
「……大変なんですね」
東畳さんの話に、苦笑いすることしかできなかった。
現在、世の中に出ているダンジョンで使えるアイテムの8割は特研が作っているモノだ。
そりゃイチからモノづくりするなら簡単にはいかないだろうけど、まさか休みなく毎日働いているのか?
特研ってものすごいブラック企業なんだな。
とりあえず商品化するならBタイプが良いのではないかと聞かれた質問にも答えておく。Aタイプの方が手軽だが、画質はやはり良いに越したことはない。リモコンが必要でも、ダンジョン写真家がきっとうまく利用するだろう。
あとダンジョン産アイテムを改良するのは充分凄いことだけど、Aタイプはあまり特研らしくないからという理由もある。
その後はモンスターの生態について話をして、今日の話し合いは終わりとなった。
ちなみに生態についてはあまり話についていけなかった。モンスターの進化論とか話されても俺にはわからない。
今日のお礼に3タイプ全てのカメラを貰い、最後になんとなく気になってた事を聞いてみる。
「あの、企業秘密なら別に話さなくていいんですけど、どうやって機械をダンジョンで使えるようにしてるんですか?」
「そうですね……うち以外にもダンジョンで使えるアイテムを販売しているところが徐々に増え始めましたし、そのうちどこかが公表するから良いでしょう。ただ、企業秘密ではあるので、誰にも言わないでくださいね」
まさか話してくれるのか。
聞いてみるもんだな。
「わかりました」
「現在わかっている条件は二つです。一つが魔核を使ったバッテリーにすること。そしてもう一つが機械の電子回路に砕いた魔核を仕込むことです」
「砕いた魔核を?」
「えぇ。魔核を砕くと色が消え使えなくなるとされていましたが、実は魔核を魔核で砕くと色をそのままに粉々にすることができるんですよ。つまり魔核を小さく細かくできるわけです。それを電子回路の節々に配置すると機械でもダンジョンで使えるようになります。
ただ、適当に配置しても良いわけではなくて、回路のどこに魔核を配置するのかは手探りで探す必要があります。バッテリーを入れ、電源をオンにした時に、回路に置いてある小さな魔核が僅かに光を帯びれば成功なのですが、配置する場所が違うと光りません。1箇所でも光らないところがあると、ダンジョンでは動かないのです。
また、全て光を帯びたとしても、一定以上の魔核を配置する必要があります。魔核の量が足りていない場合もダンジョンでは動きません。製品ごとにどれくらいの必要なのかバラバラでまだ詳しい条件がわかっていないのですが、おそらく魔核には魔力が含まれていて、電力以上の魔力が流れた場合ダンジョンで使えるようになるのではと予想されています」
質問を挟む間もなく一気に言われた。
言いたい事を止まらずに言ってしまうの、東畳さんの悪い癖だと思う。
砕いた魔核をダンジョンで使いたい機械の電子回路……要するに基板のどこかに一定数以上配置すればいいってことか?
バッテリーを魔核にしないといけないのなら魔核から電気エネルギーに変換する必要があるんだろうけど、その方法は流石に教えてくれなかったな。
ただ、回路に魔核……なんとなく魔法陣と似てる気がした。
魔核のエネルギーが逃げないように砕いたものを魔法陣と同じ模様に配置すれば再現できたりしないだろうか?