作品タイトル不明
配信記念SS①:のんびり予定を立てて
「デメトリオさん――――あ」
「久しぶりにそう呼ばれた」
久しぶりになんの予定もない休みの日。
デメトリオの私室で、のんびり二人きりで過ごしていた。
本棚の前で何を読もうかと悩んでいて、ふとデメトリオに確認したいことがあったなと話しかけようとしたら、以前の呼び方をしてしまった。
ソファに緩やかに座ったデメトリオが嬉しそうにフフッと笑い、こちらを向いた。その顔があまりにも艶っぽくてドキッとしていたら、なぜ話しかけたのかがすっぽりと頭から抜け落ちてしまった。
「なんだっけ?」
「ん? 本についてか?」
「違う……と思います。うーん……ついさっきのことなのに」
なんで忘れたかなぁと唸っていると、デメトリオがまた聞きたいタイミングで思い出すさと笑った。そう言われると、確かにそういうものかもな、と思える。
「それよりも、本は決まった?」
「はい」
「おいで」
デメトリオに手招きされ、本を片手にソファに向かう。後ろ抱きにされつつソファに寝そべるような格好になったので、まるでデメトリオをクッションにしているみたいだった。
「読みづらいわよ」
「んー?」
「重くないの?」
「んー……」
これは眠くなっている反応だ。デメトリオは眠たくなると、こうやって甘えたようなスキンシップになることが多い。
可愛いんだけど、ちょっと窮屈なときも……。
「ベッドに行かないの?」
「ん……ここで、い…………」
デメトリオを寝潰してるのに、本当にそれでいいのだろうかと聞きたいけれど、本人はすでに夢の中のよう。
仕方ないかと本を読み出したところで、聞きたかったことを思い出した。
「今朝、ずいぶんと早く起きてたようだけど、何をしていたの?」
本を閉じてデメトリオの腕の中で身をよじり、横向きになって、デメトリオの顔を見つつ独り言ちた。
日が差す前の夜中と朝の間の時刻、デメトリオがベッドから抜け出したのは気が付いたけれど、直ぐに寝てしまって声をかけそびれていた。
朝起きると、侍女からデメトリオは既にダイニングルームにいると言われたから、たぶんベッドには戻ってきていない。
本当に、何してたんだろう?
本を読んでいたらいつの間にか寝ていたらしい。反対にデメトリオが起きていたようで、私が読んでいた本をデメトリオが読んでいた。
「旅行記を読むのは珍しいな」
「そうですか?」
「ん。たまにはどこかに遠出しないか?」
「え?」
急にどうしたのかと聞くと、デメトリオが私を抱き上げたまま起き上がった。
「いやな、今朝ちょっと予定が変更になってな」
――――今朝?
聞いてみると、来月予定していた隣国での会談が中止になったそう。
なにか事件かと思ったけど、そういえば王妃陛下が最近体調が優れないと噂になっていた気がする。
「もしかして、ご懐妊ですか?」
「あぁ。緊急の手紙が届いた」
「おめでたいことでよかったです」
「それで――――」
来月に一週間ほど空きが出来たとのことで、そこで小旅行でもしようという話になった。
デメトリオも楽しみのようだし、いい息抜きになるかも。