作品タイトル不明
3味方の存在
驚くことにお祖父様の動きは早かった。3日後には我が家を訪れたのだ。
朝食が終わり今日という1日が動きだそうかという時刻だった。外で馬車の音がした。お母様の実家のオルレイン伯爵家の家紋の入った馬車だった。
玄関から父とお祖父様の声だろう話し声が聞こえてくる。残念ながら応接室に移ったのかそこで声が途切れてしまった。
お祖父様に頭が上がらない父だが、今回の件でどう出るのかまだ分からない。ここは待つしかなかった。
私はお祖父様に「侮られるのは嫌だし、これは我が家に泥を塗る出来事です」と書いて手紙を送った。
それに加えメアリー様の噂話が社交界でどう転ぶのかあとは運命に委ねるしかなかった。
今回のことで結婚は諦めた。幸い10歳の弟がいる。無理に政略結婚を考えなくていいのは今までどおりだ。
むしろ自立するにはいいチャンスかもしれない。どうしても結婚をと強要されるなら修道院に行こう。
ある程度はお金を寄付出来るだろうから待遇は悪くないはずだ。
暫く話は続いたようだ。2時間程してお祖父様が部屋を訪ねてくれた。
ソファーに座ってもらいサラに新しくお茶を頼んだ。
「久しぶりだ、エレン。泣きやんだのだね。手紙を貰って嬉しかった。安心しなさい。悪いようにはしないからね」
「お祖父様……。私…」
実はあれから一晩中泣いた。泣いて泣いて楽しかった思い出を流し涙が枯れた。
まぁその前に反撃に出たのだけど。
だって時間がないし私を裏切ったあの男を許せなかった。
「何も言わなくていい。お前を不幸にはしない。任せておきなさい」
「ありがとうございます。お祖父様が味方になってくださって本当に嬉しいです」
「お祖父様はいつでもお前の味方だ。たまには遊びにおいで。家にいづらくなったら来ると良い。旅行にでも行こう」
お祖父様が悪戯っ子のように笑った。
お祖父様の隠居先は王都から馬車で1時間程の場所にある。
今は伯父様が伯爵家を継いでいてタウンハウスを拠点に領地を治めている。
お祖父様の存在感は未だに大きいと聞いている。社交界では煙たがられているという噂があるが、現当主である伯父様から前当主のお祖父様への信頼は絶大だ。
2人はとても仲のいい親子なのである。
「倅が来ると言ったが相談をされたのは私だからな。あれがどうこう言うようなら弁護士を手配するつもりだ。証拠はあるのかい?」
「はい、あれから直ぐメイドを潜入させました。関係は1年前からだそうです。証人となってくれる者の署名ももらっています。困らないよう次の職場の手配もしております」
若様に可愛がられるメイドなど目障りだと思う使用人は多かった。
「この短い時間で集めたのか。素晴らしい手腕だ。落ち着いたら仕事を手伝わないか?」
「えっ仕事ですか?お祖父様がされているのですか」
「老後の暇つぶしだ。とりあえず今はこれを乗り越えよう」
「はい。そのお仕事の話を楽しみにしていますね。お祖父様どれくらいいてくださるのですか?きっとこれから向こうの親子が来ると思うのですが」
「今日は泊まることにしている。その後にどうしても外せない用事があってな」
お祖父様が優しく頭を撫でてくれた。嬉しかった。子供の頃以来のお祖父様の温かい手のひらだった。
次の日の昼過ぎにブラウン親子がやって来た。愛人と手を切るとでもいうつもりだろう。正妻は必要だものね。縋られても困る。絶対負けないわ。裁判を起こしてもいい。さあいらっしゃい、受けて立つわ。