軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第19話 田中、照れる

「えっと、その……久しぶり、だな」

「そうかしら? この前会ったばかりな気がするけど。二人きりで」

しどろもどろになりながら天月に話しかけると、そうばっさりと斬られてしまう。

天月とはこの前、夜の公園で会って以来だ。

その時俺は彼女から好意を伝えられ、そして唇を奪われた。今でもあの時のことを思い出すと恥ずかしくて顔から火が出そうになる。

さ、さすがに今はそれが表情に出ることはなくなったがな。

"シャチケン顔真っ赤で草"

"なにがあったんですかねえ(ゲス顔)"

"ナニがあったんでしょ"

"二人きりで会ってたってマ!? エロすぎるだろ!!"

"若い男女が二人きり……なにも起きないはずがなく……"

"こいつら***したんだ!!"

"今来た。なにが起きたの?"

"ダンジョンクリア

天月襲来

修羅場"

"なるほど把握。地獄過ぎて草w"

中身を見る余裕はないが、コメントは大盛りあがりのようだ。

くそう。どうせみんなして冷やかしているんだろうな。

「と、ところでなんで天月がここにいるんだ?」

「あなたがネームドモンスター、バモクラフトを倒したことで、ここのダンジョンのパワーバランスは大きく変わったわ。下層へ続く扉も壊れたし、ここのダンジョンのモンスターが活発化することは容易に想像がつく。外に危険が及んでしまう変化が起きる可能性もあるから、私はその調査に来たの」

魔物討伐局の仕事は、魔物を倒すだけにとどまらない。

ダンジョン内の調査、及びそのパワーバランスの維持も業務に含まれる。

正直大変な仕事だ。俺が言えたことじゃないけどかなり 激務(ブラック) だと思う。

「でもわざわざ 天月(おまえ) が来ることないんじゃないか? 調査だけなら部下に任せたらいいだろう」

「まあね。これくらいだったら部下に任せられるわ。でも今回は私が来たかったの……なんでだと思う?」

そう言って天月は俺のことをじっと見つめる。

ま、まさか俺に会いに来たってことか? いやでも天月は公私混同するような奴じゃないはず。いやいやでもこの思わせぶりな態度は……駄目だ、もうなんも分からん。

一人で混乱していると、天月は俺の隣に浮遊しているドローンをちらっと確認した後、俺のもとに近づいてくる。

「撮影しているんだから身だしなみくらいちゃんとしなさい。だらしないわよ」

天月はそう言うと緩んでいた俺のネクタイを締め直し、よれていた襟を直してくれる。

は、恥ずかしい。

"もう夫婦だろこれ"

"奏ちゃんもぐいぐい来るねえ"

"さすが討伐一課、獲物は逃さない"

"エッッッッ"

"見てるこっちが恥ずかしなってくるで"

"イチャイチャすんなw"

"リア充爆発しろ"

"多分田中は爆発くらいじゃ死なんぞ"

"草、たしかに"

"じゃ、じゃあ……って、なにしたら死ぬんやこいつ……"

"バモクラフト「ほんまそれ」"

"バモクラフトくんは成仏してもろて"

天月は最後に俺の服についた泥を払うと、俺から離れる。

「そういえば『魔導研究局』の局長があなたに会いたがっていたわ。そのポケットに入ってる生き物のことを色々と聞きたいそうよ」

「局長って……もしかして 牧(まき) さんのことか?」

「ええ、あの日以来会ってないでしょう? 顔を見せてきたら?」

「ああそうだな。行ってみるとするよ」

魔導研究局の局長、 黒須(くろす) 牧(まき) さんは、昔の知り合いだ。

最後に会ったのは皇居直下ダンジョンから生還した日のはず。そう考えるとかなり久しぶりだな。変わった人だけど、俺は嫌いなタイプじゃない。

そういえばこの前堂島さんと飯を食った時に、リリをちゃんと検査したほうがいいと言われていたな。牧さんは色々危ない人だからリリを見せるのはちょっと心配だけど、俺がついてれば大丈夫か。

リリがどんな存在なのかは俺も気になるところだし、ちゃんと検査してもらったほうがいいだろう。

「……さて、私はそろそろダンジョンに向かうわ。行くわよ」

そう言うと天月の部下らしき人物たちが数名、ダンジョンの中に入ってくる。

全員歩き方に無駄がない。かなり鍛えられているんだろう。

天月は彼らとともに下に向かおうとして、立ち止まる。

そして今までずっと黙っていた星乃に目を向ける。

「星乃さん……だったかしら?」

「え、あ、はい!」

突然話しかけられ、びっくりする星乃。

なにを話す気なんだろうと俺もびくびくする。

「あなたの戦い、配信で見せてもらったわ。その歳であそこまで動けるなんて、正直驚いたわ。しかも相手は肉親の仇……普通は動けなくなる。強い心を持っているのね、お父様に似て」