軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話 田中、家を探す

星乃から誘いを受けた翌日。

俺は電車に乗って西東京のとある駅に来ていた。

「ここが星乃が住んでいるところか」

駅前に人通りはあまりない。

商店街はあったけど、あまり賑わっている様子はなく、閑散としている。

大型のスーパーもなさそうだし、住むのは少しだけ不便しそうだ。

だけどこの静かな感じは嫌いじゃない。ギルドを辞めたことだし俺もこういうところでのんびり暮らしてもいいかもしれない。

「りり?」

そんなことを考えていると、リリがポケットからひょこりと顔を出す。

電車の中では大人しくポケットの中に入っていろと言ったから、今までは命令通り顔を出さなかった。電車から降りたことに気づいて、顔を出したみたいだ。

「偉いぞリリ。だけどまだ人がいるからもう少しだけ我慢してくれ。家についたら出て大丈夫だから」

そう言って頭をなでると「りりっ」と短い手で敬礼してポケットの中に戻っていく。

ショゴスを飼うとなった時は不安だったけど想像以上に手がかからなくて助かる。

「さて、もらった住所だとこっちの方のはずだけど……」

スマホでマップを見ながら、俺は歩く。

時折田んぼや畑が姿を表し、道では子どもたちがはしゃぎながら下校している。なんだかノスタルジックな風景だ。とても東京都とは思えない。

ちなみに今の時刻は十六時。星乃が大学から帰った時間に合わせてやって来た。

なんでこんな時間にと思うかもしれないけど、星乃曰く夕飯をごちそうしたいかららしい。

打ち合わせにはそんなに時間がかからないと思うと言っていたし、星乃の家族に挨拶してコラボの予定を立てて夕飯食べたら終電がある内に帰ろう。

あまり長居するのも悪いしな。

「……っと、ここか」

俺が着いたのは、少し年季の入った一軒家だった。

表札には「星乃」と書かれている。あまり見ない名字だし、どうやら間違いはなさそうだ。

「そういえば人の家に入るなんていつぶりだ? 最近行ったのは家とダンジョンと……魔物対策省くらいか。やば、最後に人の家に行ったの思い出せない」

もしかしたら中学生まで遡るかもしれない。社畜というのは恐ろしいと改めて実感する。

「よ、よし」

俺は少し緊張しながらインターホンを押す。

ピンポーン、と高い音が鳴り、少ししてから『はい』と声が聞こえてくる。相手は星乃の親かもしれない、礼儀正しくしないとな。

「本日お邪魔することになっていました、田中誠です。よろしくお願いします」

『あ、はい! 今出るんでちょっと待っててください!』

どうやらインターホンの相手は星乃だったみたいだ。

慌てた様子で返事をしたと思うと、家の中からドタバタと音が聞こえてくる。

「そそっかしいな、大丈夫か?」

「てけ?」

リリもポケットから出てきて不安そうに声を出す。

待つこと数十秒。昔ながらの引き戸がガラッと開いて、中から人が姿を表す。

「すげー! 本当にシャチケンだ!!」

「こ、こんにちは……」

出てきたのは星乃……じゃなくて小さな男の子と女の子だった。

活発そうな男の子は俺の足に引っ付いて「すげーすげー」と騒ぎ、大人しそうな女の子は少し離れて俺のことをちらちらと見ている。

この二人が星乃の弟と妹ってことでいいのかな? 二人とも小学生くらいに見える。結構歳が離れてるんだな。

「シャチケン! あれやってよ! あの『シャチケンTV~エヴィデェ~』ってやつ!」

「そりゃ違う人だ」

元気百倍といった感じの男の子にそう突っ込んでいると、家の中からドタドタと足音が聞こえてくる。

「こ、こら! 田中さんに迷惑かけちゃいけません!」

そう言いながら出てきたのは、エプロン姿の星乃だった。

いつもの服装とは違い、ラフな感じで新鮮だ。

「俺は大丈夫だよ星乃。子どもは嫌いじゃないからな」

そう言って俺は足に引っ付いていた男の子を持ち上げて肩に乗せる。

すると男の子は「すげー! たけー!」と目を輝かせる。

「名前はなんていうんだ?」

「俺は亮太!」

「そうか、よろしくな亮太」

次に俺はまだもじもじしている女の子に話しかける。

「君は?」

「えっと、私は 灯(あかり) 、です……」

「そっか。よろしくな灯ちゃん」

そう言って手を出すと、灯ちゃんはおずおずと言った感じで俺の手を握ってくれる。

どうやら緊張しているだけで、嫌われているわけじゃなさそうだ。

「す、すごい。二人とももう懐いちゃった」

「無駄に知名度があるから心を開いてくれただけだよ。中に入ってもいいか?」

「あ、はい! もちろんです! どうぞゆっくりしていって下さい!」

「じゃあお邪魔します」

俺は亮太に頬を引っ張られながら星乃の家にお邪魔するのだった。