軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1話 田中、待ち合わせる

よく晴れた日曜日。

俺はスカイツリー 跡地(・・) を訪れていた。

かつては東京を代表したその白い電波塔は、今はもうこの東京には存在しない。

スカイツリーはダンジョンが生まれたと同時に、地面に吸い込まれるように消えてしまったのだ。

ちなみに消えたのはスカイツリーだけではない、世界中の大きな建造物がいくつも消失し、大きな騒ぎとなっている。

なのでスカイツリーはその役目を先輩である東京タワーに譲ることになった。新しい電波塔を建てるべきという話も上がってるけど、大きな建造物はまた消える可能性が高いということで東京都は二の足を踏んでいる。

また消えてしまったら多額の税金が吹き飛ぶ。無理もない。

「しっかし、どこに消えたのかねえ……」

記憶の中にある白いタワーを思い出しながら立っていると、俺の方にたたた、と駆けてくる人影が目に入る。

「すみません。お待たせしました。先生」

そういって頭をぺこりと下げたのは、俺の教え子である凛だった。

彼女はいつもの隊服姿じゃなくて、かわいらしい私服に身を包んでいた。プライベートで会ったことはないのでとても新鮮だ。正直少しドキッとしてしまった。

「俺が早く着きすぎただけだから気にしないでくれ。それより……そう、服。似合ってるじゃないか」

「本当ですか? お見せできるような服はあまり持っていませんので不安だったのですが……よかったです」

嬉しそうにはにかむ凛。

そんな彼女だけど、視線が横に動いて俺の少し後ろにいる人を見つけ視線が少し鋭くなる。

「紹介するよ。俺の同業者の星乃唯さんだ」

「よ、よろしくお願いします……」

申し訳なさそうな顔をしながら、おずおずと星乃が前に出る。

ちなみに凛が来ることは星乃にあらかじめメッセージで伝えておいた。マメな星乃にしては珍しく、返信に時間がかかってたな。

「……彼女のことはよく存じています。先生の配信に出ていましたからね」

「そうか。それは話が早い。二人は同じ歳の覚醒者だから仲良くなれると思って会わせたんだ。ほら、俺みたいなのと二人きりよりいいだろ?」

そう言うと星乃と凛は全く同じタイミングで「……はあ」とため息をつく。

あれ。もしかしてなにかやらかしたか?

「そうですか……先生がそう来るとは予想外でした。これは前途多難ですね」

「はは。私もびっくりしましたよ。えっと絢川さん……も、 そう(・・) なんですよね? お互い大変ですね」

「やはり星乃さんも そう(・・) でしたか。つまり私たちは 恋敵(ライバル) ということですね」

「ふふ、そうですね」

星乃は楽しげに笑う。

「確かに私たちは 恋敵(そう) ですけど、仲良くしてもらえると嬉しいです」

「……分かりました。私たちは 恋敵(ライバル) であり同士。仲を深めるのもよいでしょう。よろしくお願いします、星乃さん」

「はい♪」

二人はなにやら楽しげに話したあと、握手する。

それやらあれやらなんの話だかさっぱりわからない。今の女の子の間で流行っているのか?

「先生。今日はどのような 予定(スケジュール) なのですか?」

「ああ。今日は武器屋に行く予定なんだ。俺の剣の手入れと、星乃の剣の強化をしたくてな」

この前倒した『マウントドラゴン』の素材はまだバッグの中に入れっぱなしだ。

今日はこれを使って武器を強化する予定なんだ。

「まあでもそれだけするってのもつまらないから、なんか美味しいものでも食べていこう。もちろん金は俺が出すぞ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

星乃が目を輝かせながら食いつく。

喜んでもらえるなら薄い財布を更に薄くする甲斐があるってもんだ。

配信で稼いだ金はまだ入金されてないから、今日使う金は社畜時代のなけなし貯金から捻出することになる。足立からいくらかかっぱらっとけばよかったな。

「あの、この近くに最近有名なカフェがあって、そこのパフェが食べたいんですけど、いいですか……?」

「ああ、もちろんだ。そういう場所を教えてもらえるのは助かるよ。凛もひとまずそこでいいか? 甘いものが苦手とかあったら教えてくれ」

「えっと、甘いものは私も好き……です」

「じゃあ決まりだな。そこに行くとするか」

行き先が決まった俺たちは、他愛ない話をしながら歩き出すのだった。